蒼き稲妻 赤き猛火
この惑星に新たに誕生した原始文明、カルーンの長、テュケは祭事の後、その名をニーヴァとし、
最強種族の王として、この世界に君臨した。
ニーヴァは浮遊する大地のそばに新たな神殿、水の城を建築し、そこに数人の側近と共にその身を置き、多くの種族に関係する様々な祭事を執り行っていた。
その祭事の中で最も重要なのが、浮遊する大地から放たれる光による、蒼き稲妻の祭事であった。
祭事には、蒼色に光り輝く、浮遊する鉱石が使用され、小さな鉱石同士を近づけると、蒼白い電光を放つ性質があり、大量に使用すれば岩も砕く破壊力を得る事ができた。
蒼き稲妻の祭事は、その鉱石を使い、浮遊する大地に反応させる事で、蒼白く光る稲妻が発生し、渦となりながら、光りが空と大地を貫く、普通の生物が出来得る業とは思えない祭事が執り行われ、暗闇の空と語り合うように、月のない深い闇の日に、祭事は執り行われていた。
しかし、その鉱石が採掘できる場所は限られ、浮遊する大地周辺のカルーンが支配する地域に限られていた。
その為に、大地に眠る浮遊鉱石を求めて、多くの種族を統治し、鉱石採掘に従事させていたのである。
その浮遊鉱石が多く存在する場所とは、大地の奥深くにある岩盤とマントルが交じり合う、灼熱の奥底に存在していた。
しかしそこは、かつてこの世界の支配者であった種族、|黒い鋼の外骨格を持つ種族が眠る場所でもあった。
その地中奥深くに眠る最強の種族は、火山性ガスをその身に取り込み、その身に近付く者があれば、体内から放たれるガスの燃焼を持って相手を焼き払い、その身を傷付けようとする者があれば、強固な外骨格で身を守り、鋭利に研ぎ澄まされた骨格の一部で相手を薙ぎ払う。
数匹の討伐隊であれば、その腕の一振りで絶命させる事の出来る程の破壊力を持ち、地上の生物では到底太刀打ちできる生物では無かった。
ニーヴァは、その最強の種族が眠る地中奥深くに多くの討伐隊を送り、その種族と鉱石を持ち帰る事を命じたが、そのほとんどは戻ってくる事はなかった。
討伐隊を率いていたニーヴァの息子ムメンは、その|黒い鋼の外骨格を持つ最強の種族を排除する為に、様々な対策を講じ、民衆を訓練し、道具を進化させ、武具を鍛え上げ、|黒い鋼の外骨格を持つ種族を排除する最強の戦闘集団を生み出した。
彼らは、鉱物を溶かし融合させ、単純な鋳型から鋳造、鍛造と武具を鍛え上げ、それらに浮遊鉱石を組み合わせる事で、様々な装備を造り出し、盾と刀に浮遊鉱石を使い、闘いの際に二つを合わせる事で発生する蒼き稲妻で、その身を守る装備、雷神の盾を造りだした。
そして、武具以外でも、中程度の浮遊鉱石を使い、闘いの際に重ね合わせる事で激しい雷を放つ武器、雷神の雷と呼ばれる中長距離砲も開発。
それら訓練された戦闘集団と軍備を整え終えると、|黒い鋼の外骨格を持つ種族を排除する事に成功した。
|黒い鋼の外骨格を持つ種族の周囲には、様々な鉱石が溢れ、プラチナやチタン、タングステンと共に、小さく僅かな浮遊鉱石が採掘され、ムメンはそれらをニーヴァへと献上した。
こうして浮遊鉱石を手に入れ、その副産物である地上には無い強靭な物質と、最強の戦闘集団をも我が物としたニーヴァはその覇権を拡大し、最強の文明の王として君臨していたが、ニーヴァが求める軍備と祭事に必要な鉱石の量は、確保できていなかった 。
ある時、ニーヴァの神殿に見知らぬ種族の民が、兵に囲まれながら入ってきた時の事である。
その民は東の辺境の地から来た旅人だと名乗り、未開の地を求めて西にその歩みを進めていた途中で、この地に立ち寄ったらしく、その見かけない見姿の為に兵達が捕らえ、ニーヴァの下へ連れて来たのである。
しかしニーヴァは、その旅人を見ると少し考え、その旅人が浮遊鉱石の手掛かりを知り得ているのではないかと、それを尋ねてみた。
旅人は、少し戸惑いながらニーヴァの問いに応えると、蒼く輝く鉱石が、旅人の故郷から、更に東にある海に囲まれた大陸にある事を伝え、その大陸は豊富な資源に恵まれ、気候は穏やかで空は常に青く開いている広大な大陸で、多くの種族が暮らす地である事を伝えた。
ニーヴァはそれを聞くとムメンを呼び、ムメンがニーヴァの下へ現れ、その前で跪くと、旅人にもう一度、浮遊鉱石について問い、旅人はムメンにも東の大陸について話をした。
ムメンはその話を聞き終えると頷き、ニーヴァに顔を向け、
それを見たニーヴァは何かを理解したかのように、ムメンにその大陸へ向け遠征隊として向かう事を命じた。
しかし、旅人がそれを聞くと、
「お止めになった方が良い、あの大陸は赤き猛火を操る、屈強な種族がその地を治めており、その種族が放つ赤き猛火は、そこにある全てを焼き払う恐ろしい種族です」
「我々はあれを ニンゲン と言います」
ニーヴァは、己のカルーン文明以外に強い戦闘能力を持つ種族がこの世界にいる事に驚き、更にその集団が青き稲妻、雷神の雷に匹敵するであろう武器を持ち合わせている事にも驚愕と共に、興味を引かれ、ニーヴァの傍で話を聞いていたムメンも、その最強の集団に興味を示し、百の先発隊を編成し、その大陸に向かう事をニーヴァに進言した。
ニーヴァはそれを聞くと、神殿の簡素な椅子から立ち上がり、改めてムメンに命じた。
「東の大陸を制圧し、その蒼き鉱石と、赤き猛火を 我が下へ 」
そして、その三日後、遠征の準備を終えたムメンは千の兵を率いて、浮遊鉱石とニンゲンを求めて東の大陸へと向かって行った。
その後、ニーヴァから解放された旅人は、都の外れにある砂で出来た高台からムメンの進軍を見つめ、ムメンの軍隊が東に消えてゆくのを確認すると、
振り返り西に向け歩き出した。
「 クククク 」




