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第5話:爆弾と紙片

僕は玄関で困惑したまま立ち尽くしていた。


「女の子とデートしてたでしょ!」紗樹はそう言い、「どうして分かったかって?それはもちろん、女の第六感よ!」と胸を張った。


「紗樹、それは誤解だよ。ただ、これは……」


「じゃあ、その手に持ってる紙袋は何?これ、女の子からお兄さんへのプレゼントじゃないの?」

紗樹は僕の手にある紙袋を指差し、不機嫌そうに言った。「物的証拠が揃ってるのに、まだ否定するつもり?」


紗樹の言うことは事実で、僕には否定する術がなかった。


「こ、これは……僕が自分で買ったものなんだよ……」

僕は弱々しく言った。


「お兄さん、私を騙せると思ってるの?」

紗樹は目を大きく見開いて僕を睨み、さらに僕に近づいてきて体を寄せてきた。何か他に怪しい証拠がないか探ろうとしているようだった。


「この匂い……ジャスミンの香水なんて、絶対にお兄さんには縁がない香りだよね!」

紗樹は興奮して足を踏み鳴らし、「お兄さん、女の子と怪しい接触でもしたの?!」と問い詰めた。


「違う!さっき会った子とは何の関係もない……」


そう言った瞬間、僕はすぐに後悔した。


「つまり、お兄さんはある女の子からプレゼントを受け取っただけじゃなくて、別の女の子とこっそりイチャイチャしてたってこと?」

紗樹は軽蔑の目で僕を見ながら言った。「私、二股かける奴が一番嫌いなの!最低だよ、淫らでどうしようもない!」


そう言い放つと、紗樹は勢いよく自分の部屋へ戻って行った。


「お願いだから話を聞いてよ……」

僕は仕方なく紗樹を追いかけ、今日学校で起きたことを丁寧に説明しようとした。


でも、紗樹が僕の話をちゃんと聞いていたかどうかは分からない。彼女はそのまま部屋に入り、パソコンの電源を入れると、棚の上に置いてあったゲームコントローラーを2つ取り出した。


画面がゆっくりと明るくなり、大型モニターはマルチプレイのゲームにぴったりだった。


紗樹はコントローラーの一つを僕に差し出してきた。「ほら、一緒にゲームしてくれたら許してあげる。どう?」


「いやいや、ありがたいお言葉だね……」

僕は少し呆れながらも、コントローラーを受け取り、ボタンを軽く押してみて指が操作に慣れているか確認した。


紗樹は「アニメキャラ大乱闘」というゲームを僕と遊ぶのが大好きで、しかも彼女はかなりの腕前だ。正直なところ、彼女は僕が知っているどんなジャンルのゲームでも上手い。シューティング、パズル、育成、サンドボックス……なんでもござれだ。


僕が他のゲームをやるとき、あまりにも下手くそで紗樹のゲーム体験を台無しにしてしまうことがよくある。


「お兄さん、キャラ決めた?」

紗樹は僕の顔を見てきた。彼女はすでに8ビット風の青い球体キャラを選んでおり、それは彼女がよく使うお気に入りのキャラだった。


「じゃあ、今回は僕も同じキャラにするよ。」

僕はキャラクター一覧から同じ8ビット風の青い球体キャラを選んだ。


ゲームが始まり、マップは空に浮かぶ白い雲の城だった。


「このキャラクターの名前は『Bacman』だよ。特技は、フィールド上の箱や爆弾を食べて、それを吐き出して攻撃することなんだ。」

紗樹はキャラクターを左右に動かしながら、その使い方を説明してくれた。「ほら、今『□』ボタンを押してみたよ。」


「スキルボタンだよね。でも、紗樹のBacman、反応してない気がする。」


「その通り!」

紗樹のBacmanが僕のBacmanの背後に跳び、一発パンチを食らわせてきた。


「えっ!紗樹、ずるいよ!」僕は悔しそうに叫んだ。


「ははっ!私が説明してる間も、ちゃんと私の動きに気をつけないとね。」

紗樹のBacmanがまた僕の方に近づこうとしたが、僕はそれを避けた。


「さっき『□』ボタンを押しても反応しなかったのは、私のBacmanの口の中にまだ何も入っていなかったからだよ。」


紗樹はBacmanを地図上の木箱の一つに移動させると、瞬く間にその木箱がBacmanに「食べられて」しまった。


「今、『△』ボタンを押したよ。これで遠距離攻撃ができるようになった。」


「え?ちょっと待って……」


僕のBacmanは一瞬で紗樹の遠距離攻撃に撃破された。


「今までそんなスキル使ったことなかったのに、どうして急に……」


「今までは近接攻撃だけ使ってたの。」

紗樹は自信満々の表情で僕を見て、「これが私の本気だよ!!」と言い放った。


第2ラウンド、僕は紗樹が教えてくれたスキルを使い、遠距離攻撃を試してみたが、僕のBacmanは明らかに命中率が低かった。


「また負けた……」僕はため息をつきながら言った。「次はさっき言ってた爆弾スキルを試してみようかな。」


「へえ、いいじゃん。」


第3ラウンド、僕は地図上に隠された爆弾を探し回ったが、地図には木箱ばかりが生成されていた。


「ははっ!無駄だよ!」紗樹は挑発的に笑った。


「おっ!見つけた!」


地図の隅に赤く光る爆弾が現れた。僕は急いでその場所に向かい、Bacmanでその爆弾を「食べた」。


「これでスキルが使えるはずだ。」


僕はタイミングを見計らい、紗樹のBacmanの上方から爆弾を投げつけようとした。


「見つけたよ、紗樹!」僕は得意げに笑った。


「くっ!」


チャンスを逃すまいと、僕は画面に集中した。


突然、煙がもくもくと立ち込めた。


「これ……何だ?」


「お兄さんが爆弾を使えるなら、私だってスモークグレネードを使えるよ。」


一瞬の隙を突かれた僕の画面は、煙の中から激しい爆発が映し出され、すぐに「Game Over」の文字が表示された。


「えっ!紗樹、ずるいよ!」


「お兄さん、下手なんだからもっと練習しなよ。」


*****


紗樹とのゲーム対戦が終わった後、僕は自分の部屋に戻って休むことにした。


この部屋はもともと空き部屋だったので、壁に取り付けられた棚以外は何もなかった。今使っているベッドや机も、元の家から運び込んだものだ。


壁にある棚は僕が収集した小説を置くのにぴったりだ。芥川先生の著作を含め、70〜80冊くらいはあるだろうか。もちろん、その中には僕自身が書いた小説の実物もいくつか含まれている。


本屋みたいに、僕は本をジャンルごとに分類し、さらに巻数順に並べるのが好きだ。


「今日は本屋で面白そうな恋愛小説を見かけたな。今度、買ってみようかな。」


僕の視線は、本棚の「恋愛小説」のコーナーに移った。


「なんだこれ?」


2冊の本の間に一枚の紙切れが挟まっていた。注意して見ないと気づかないような場所だった。


僕はその紙を引き抜いて、中の文字を読んでみた。


「なんだって!!」


なんと、中学生の頃に書いたラブレターが無造作に挟まっていたなんて!?


「今の声、何? お兄さんが出したの?」

部屋のドアが突然開いて、紗樹が勢いよく入ってきた。


「お兄さん、何してるの?」


「な、何でもないよ……」

僕は慌ててその紙切れをポケットに押し込み、この小さな秘密がばれないようにした。


「何でもないなら、もう出るね。それと、私はそろそろ寝るから、何してても構わないけど、うるさくしないでよね。」


「了解、承知しました!」


紗樹を部屋から追い出した後、僕はその紙切れをゴミ箱に捨てた。


「過去のことなんて忘れよう。そもそも、なんで中学時代のラブレターなんかをこんなところに隠してたんだろうな。」


ため息をつき、僕は今日戸塚さんからもらったものに目を向けた。紙袋を開けると、中には一枚の紙と、かなり精巧なデザインの箱が入っていた。


まずは紙を手に取ってみた。そこにはこう書かれていた——


_______________________________________________________

村上くんへ


突然のお願いで本当に申し訳ありません。でも、どうしても村上くんに頼りたくて、直接言うのは恥ずかしいので、この手紙を書かせていただきました。


以前お話ししたことがあると思いますが、私は学校でアトリエを申請したいと考えています。それで、いろいろな先生に相談したり、資料を調べたりした結果、『生徒専用教室』というものを直接申請できることがわかりました。このことが、なぜこんなに広い学校に比べてクラスが少ないのかという疑問の答えにもなりました。実は、多くの教室が生徒に利用申請を認めているんです。そして、もっと驚いたのが、この制度は『特別才能クラス』の生徒だけが利用できる特権なんです!


しかし、この『生徒専用教室』を申請するには、いくつかの手続きが必要です。書類記入やレポートの作成など、いろいろありますが、それらはすべて自分でやるつもりです。村上くんにご迷惑をかけるつもりはありません。ただ、一つだけお願いしたいことがあります。それは、教室の申請には最低2名の申請者が必要で、私の知り合いの中で『特別才能クラス』に在籍しているのは村上くんしかいないんです。ですので、村上くんのお名前を申請書に記入させていただけませんでしょうか。


隣の箱に入っているのは、ほんの気持ちです。こういうお願いをするのに何も渡さないなんて失礼ですから!


どうかお力を貸していただけると嬉しいです。


戸塚より

_______________________________________________________


「こんなお願いをするだけなら、わざわざプレゼントを渡すなんて大げさだよな。」

僕はつぶやいた。


箱を開けると、中にはGummyチョコレートグミがぎっしり詰まっていた。


さっきの言葉を撤回するけど、こういうプレゼントも悪くないな。


*****


翌日、僕は少し遅めに学校へ着いた。どうやら、すでに何人かのクラスメイトは特殊教室で授業を受けているようだ。


教室を見渡してみたが、戸塚さんの姿は見当たらなかった。


せっかく昨日もらったグミのチョコレートのお礼を言って、教室申請のことを相談しようと思っていたところ、突然背後から声をかけられた。


「おやおや~、樹雨くん、来たんだね。」


「誰?」


「誰って、他に誰がいるのさ?たった一日で私のこと忘れちゃったの?」


麻里さんが僕の背後から顔を覗かせてきた。どうやら、しばらく僕をからかうつもりらしい。


「何か探してるの?キョロキョロしてたみたいだけど。」

麻里さんは僕の周りを行ったり来たりして、機嫌が良さそうだ。


「うーん……いや、ただ見慣れた顔がいないか確認してただけ。」

本当のことを言うつもりはなかった。


「まあ、いいけどね。私、これから授業に行くところだから、ついでに挨拶しておこうと思って。」

麻里さんは教室の扉の方に向かいながら手を振った。「じゃあね、樹雨くん。」


「うん、またね。」


そうだ、部活の設立や教室の申請だけじゃなく、学校の授業にもちゃんと向き合わないといけないんだよな。


ちょうどその時、古久保先生が入口で僕に手招きをしていた。先生の隣には、どうやら同じ「文学」専攻のクラスメイトが立っているようだ。


「さあ、行こうか、村上さん。」

その中の一人で、かなり気品のある雰囲気の男の子が僕に向かって言った。「僕は『地球最強の高校生作家』になるため、君を打ち負かすつもりだからね。」


「は?」

一瞬、驚きすぎて何も言えなかった。


「ほら、有馬くん、冗談はその辺にしておきなさい。」

古久保先生がその男の子の肩を軽く叩きながら言った。「村上くん、彼はちょっと負けず嫌いなだけだから、気にしないでね。さて、授業に向かいましょう。」


そうして、僕たちは先生の後について、今日の授業を受ける教室へと向かった。

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