ダンスフロア
ここ夜の樫実島で俺はひたすら途方に暮れている。お姫様、アマテラス、天野照美は相変わらず閉じこもったまま出てきやしない。射出口の鋼鉄製の扉は未だ閉じたばかりだ。俺は為す術もなく夜空を眺め続けそろそろ帰ろうかと思った矢先、ゴゴゴゴと重苦しい音を立てて射出口が開いていく。突如、開いた大きな射出口を見て俺は呆然とする。射出口は内部からでないと開けられないはずだ。ということは・・・
「114514ってわけか・・・」
俺は意気揚々と射出口を通って内部に侵入していく。いや、侵入というのは妥当な表現ではないかな。こちとらは正式な招待と歓迎を受けてるわけで。そう思いながら射出口の中を飛んで行く。垂直に伸びるトンネルを下へ下へとひたすら下降していく。
下へとそうやって射出口の中を進んでいるとやがて地下に到達する。ここは射出口の出劇地点。いざという時はここからヒーロー、アマテラスは全身をまばゆいオレンジ色に発光させ人間ロケットとして飛び立つというわけだ。
目の前に金属製の扉がある。俺はそこに歩み寄りドアノブに手をかける。幸い、鍵はかかっていないようだ。仮にかかっていようが力ずくでこじ開けられるが。そうやって通路をひた進んでいく。構造的には俺のいる大乃島の施設とあまり変わらないようだ。
左右の壁がシルバーに輝くメタリックな通路を俺はひたすら進んでいく。そして幾多のドアを開けて進んでいく。いずれのドアにもロックはかかっていないようだった。やがて辺り一帯が暗い空間に出る。ここがアマテラスこと天野照美の居住空間なのだろうか?
目を凝らしていると突然、赤や青や紫に輝く光の雨が降り注ぐ。天井にある光源に目をやる。デス・スターみたいな銀色の回転する球体が様々な色の光を反射しながらくるくると回り続けている。陽キャ文化に疎い俺もそれがミラーボールと呼ばれるものだとやっと気付く。この空間にある赤や青や紫の色の照明がこのミラーボールとやらに反射し極彩色のパレードをこの空間にもたらしていたというわけか。
「これは一体・・・」
地下にある一応は軍事的な施設には不似合いな謎のダンスフロアを見て思わず感嘆の声が漏れる。照明に気を取られていたので気が付かなかったが目を凝らすと赤や青や紫の光を受けた人影が隅に立っていることに気が付く。アマテラスこと天野照美である。今は白いワンピースを身に着けておりその白い布地に極彩色の照明の光が反射している。
「何なんだ。ここは?」
「何をってダンスフロアよ。映画に出てきたじゃない」
脳裏に照明と音楽の波の中、颯爽とダンスを踊るジョン・トラボルタの映像が自然と再生される。
「それはわかるが何でこの地下にあるんだ」
「私、昔のディスコ文化に憧れがあるのよね」
アマテラスこと天野照美は宙を眺めながら言う。
「それで地下にディスコを作ってもらったと?」
「それくらい良いじゃない。ヒーローなんだし」
「やれやれこんなことに公金が使われるとはな」
「力人だって無駄遣いばかりしてるじゃない。どうしてゲイビデオが数十万円もするのよ」
「それもそうだな・・・しかし、こうやってわざわざ来てやったのにどうしてシカトするんだ?」
「女子の家にいきなり来るものじゃないわ」
そう言って天野照美はうつむく。確かに不躾だった感は否めない。うつむいていた天野照美はすうっと息を吸い込み言った。
「力人、私と踊らない?」




