空から落ちてきた赤子
俺は小さな子供の頃から周囲に馴染めなかった。いや馴染めるわけがない。早い段階で俺は普通の人間と違う事に気づいていた。とにかくだ。うるさくて仕方ない。遠い範囲の音声まで俺の耳にはクリアに聞こえた。これで良いことなんか無い。「何、あの子。まるで周囲に溶け込もうとしないし薄気味悪い」と聞きたくもねえ悪口を聞いちまう。
俺は親のいない子供達を育てる施設であるひかりの家で育った。施設長は子供たちからマザーと呼ばれていた。マザーは顔に皺が刻まれた中年女性であったが若い頃はきっと可愛い美少女だったんだろうなと思う容姿をしていた。彼女は敬虔なクリスチャンで恵まれぬ子供たちに奉仕することを自らの使命としていた。
「力人君、とあなたが他の子とは違うことはよく知ってるわ」マザーは俺にこう言った。俺の名前は力人。マザーによって名付けられた。売れないホストみたい名前だが。
「あの日のことは忘れない。子供たちと食材やら何やら買出しに出かけた時だった。世間はクリスマスでイルミネーションにそして雪が降りしきっていた。いわゆるホワイトクリスマスというやつね。子供たちが空を指指してそれが異様な色に変わっていることを私に教えた。みんなが興奮気味に流れ星だ!と叫んだ。そしてあなたが天から落ちてきた。普通に考えれば赤ちゃんが空から降ってくるなんてありえない。恐る恐る近づくと赤ん坊のあなたはえぐれた地面の中心で泣きじゃくっていた。あなたが遙か宇宙からやってきたのかそれは私にもわからない」
とはいえだ俺に近づく人間はもはやいなかった。そりゃそうだ。俺より身体の大きい男子が絡んできた時ちょっと小突くだけで数メートルは吹っ飛んじまう。大きな石を拳で菓子みたく粉砕しちまう。こんなバケモンに誰が近づきたいものか。いつの間にか俺の周りには誰も近づかないようになってしまった。小さなガキの頃、野良猫を追いかけてたらトラックに衝突したが大破したのはトラックの方だった。トラックの運転手は大慌てで出て来たが大破したトラックを見て目を丸くしていた。俺は何だか面倒そうなのでトラックの運転手があたふたしているうちにその場を去った。
「力人君、もっとみんなと遊びなよ」と友美は言う。こいつは俺より年長だからって姐御ぶるのが気に入らない。マザーから俺の世話をするように言い伝えられてるらしいが。いや遊ぶってドッジボールでもやるのか?俺の球を受けたら肉体が四散して吹き飛ぶんだぜ。
ある時、俺は深夜の森林の中にいた。自分の力を試したくてな。辺り一帯はスギの木の一群。今から全国の花粉症患者がやりたかった悲願を達成してやる。意識を両眼に集中する。たちまち両眼が電子レンジみたく発熱するのを感じた。俺の両眼から溢れ出た過剰なエネルギーは放出され凄まじい勢いで射出された。それは紅い熱戦であり高出力のビーム熱戦だった。俺はそのまま360度回転し続けた。
「うわあああああああああああああああああ!!!!!!!!」
俺は無我夢中で叫び続けた。スギの木達は俺の発した熱線により次々となぎ倒されていった。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
やっとスギ花粉症患者の宿敵であるスギを討伐することが出来た。と同時に俺の目からは涙がボロボロと零れ落ちた。
「畜生・・・こんなん・・・バケモンじゃねえか・・・」




