3話目 輪廻
駅のホーム。机とイス。美しい女神を前に、
「もう一度、もう一度だけチャンスをください。お願いします!」
俺は慈悲を求めて、五体投地していた。
「大丈夫ですよ。貴方にはまた別の人生が用意されています」
「本当ですか?!」
ああ女神さま、あなたさまはどうしてそんなにも麗しいのでしょう。
顔をあげると机の下、女神さまのおみ足が目の前に。すべすべの肌に整えられた爪。お望みであればペロペロいたしますぅ。
「えと、次はエイリアンがはびこる惑星に残された亜人族で……」
「ちょっと待ってください!」
このコスプレ女、なにを言い出すんだ! エイリアン?! エイリアンってかわいい……わけないよな。
「できれば同じ世界でやり直したいのですが?」
そして魔王にリベンジして、今度こそあのわがままボディを手中にするのだ。
「それは難しいですね。規約がありますので」
「そこをなんとか。神様でしょ?!」
「ん~。まあ、できなくはありませんが」
おお、さすが女神。やればできるじゃないか。
女神は机の引き出しをがさごそ。
「前回とまったく同じ条件とはいきませんよ?」
「あ~、構いませんけど具体的になにがどうなるのでしょうか?」
立ち上がって女神が取り出した書類を覗き込む。
「具体的にはまず、貴族の生まれではなく平民の生まれになります」
くっ、苦しい条件だ。現代っ子としては貴族の家庭でもちょっと不便に感じていたくらいだし。まあ、でも成り上がればいいだけ。俺の才覚をもってすれば余裕だろう。なにせ人生三周目だ。
「ほかには?」
「あとは魔力が少し落ちます」
うっ、嘘でしょ。最大の長所だぞ。
「どれくらい落ちるんですか?」
「成長しきっても元の百分の一くらいになります」
「ひゃ、ひゃくぶんのいちィ?!」
全然少しじゃねえ! ほとんど一般人だよ。
(夢が……遠のく……)
ああ魔王ちゃん。こんなんじゃ転生しても返り討ちにされるだけ。人を集め、策を練れば、あるいは勝てるかもしれないけど、そんなんじゃ認めてくれないよな。
ここはひとつ、決断しなければならない、かもしれない。
(さらば愛しの魔王ちゃん。俺は新しい人を探しにいくよ)
負けたんだ。未練がましくすがるより、ここはすっぱり諦めて前を向こうじゃないか。
「ちなみになんですけど、最初に話した亜人族の方はどんな感じですか?」
「そっちはすごいですよ。族長の息子で、通常亜人族は腕が六本しかないのですが、貴方はなんと八本です! 翅にいたっては倍の四枚で、三倍の速度で飛翔することができます!」
ぶーん、と女神は手を広げパタパタさせる。
「ふんっ!」
頬を叩き気合を入れる。
(なに弱気になってんだ、俺!!)
夢ってやつはそんな簡単に諦められるのか?! 諦められないよなあ!?
あれほどの女をものにするためなら、たとえ火の中水の中。恋ってやつは多少の障害があったほうが燃えるんだぜ!
「そうですか。あ、亜人族の話はもう結構です。話を戻しますが、魔法に関する知識や培った技術はどうなるのでしょう?」
「それは持ち越すことができます」
(ほっ)
それなら工夫次第でなんとかなるかもしれない。いや、なんとかするしかない。
「苦しい、あまりに苦しい条件ですが、呑みましょう。世界の平和のために!」
「平和! 素晴らしいです。女神として、貴方のことを応援します」
女神はぽむっと胸を叩いた。
「チート能力はそのままですので、なんとかなるはずです。頑張ってください」
手を振る女神に見送られながら、
(ん? 魔力は激減するのにチート能力はそのままってどういうことだ?)
俺は再び階段を駆け上がる。