8.最強とは仲間のピンチには駆けつけるものだ!
ハンスは頬から血を流しながらも剣を構え、少しづつ擦り足でロメオから距離をとる。
(くそっ!こいつ強いじゃねぇか!俺と同じぐらいとか言ってたのに!)
ロメオは澄まし顔で剣を構え直しハンスに話しかける。
『君さぁ、攻めて来ないのは僕の事を舐めているのかい?守ってばかりじゃ勝てないよ?』
『ちっ!そんな事は分かってんだよ!黙って構えとけ!』
ハンスは勢い良く踏み込み相手の間合いに入るがロメオが迎撃しようと剣を構えるとハンスは再度距離をとる。すると客席の方から声が聞こえてくる。
『ロメオー!ハンスの奴ビビってるぞー!ガンガン攻めろー!』
ハンスは言った奴の顔を確認しようと少し視線を動かすとそこには仲間のはずのラッキーが声をあげていた。
『ロメオー!そんな根性無しの玉無し野朗なんてさっさとぶちのめせー』
『君は味方からも嫌われているみたいだね。負ける気は無いが同情するよ。』
ハンスは仲間の野次に涙目になったがロメオの発言に怒りが込み上げる。
『上等だ!ラッキー!今からロメオの事をボコボコにすっからよーく見とけや!』
ハンスはロメオの間合いに再度踏み込み上段から剣を振り降ろす。ロメオはその剣を受けようとしたがハンスは剣を力一杯ロメオの剣に叩き込む。
するとロメオの剣は折れロメオは後ろに飛び退く、ロメオを見ると左肩からは鎧が裂け血が流れていた。
『どうだ!さっさと降参して治療しろ!まともに剣が振れる傷じゃ無いはずだ!』
降参を促すハンスに突然アリス様から『危ない!避けて!』と叫び声が聞こえたと思うと横から衝撃が来てハンスは吹っ飛ばされる。衝撃が来た方向を見るとそこには3人の騎士がニヤニヤしながら立っていた。
『ぐっ!テメェら決闘中だぞ!恥ずかしく無いのか!?』
ハンスは苦しそうに叫ぶ。するとニヤニヤしていた騎士の1人が口を開く
『これは一対一の決闘じゃねぇから良いんだよ馬鹿が!?殺さなきゃ良いってルールにしたのはお前らのほうだろうが!?』
『クソ野郎供が!おいっ!一対一じゃ無いならラッキー助けてくれ!』
ハンスはラッキーに助けを求めるがエイラさんから返答が来る。
『ラッキーさんは、先程トイレに向かわれたのでもう少しお一人で頑張って下さい』
『あの野郎マジか!?このタイミングでトイレって、エイラさんでも良いんでお願いしますー!』
『私はただの美少女メイドですので』
『あひゃひゃ!安心しろお友達が来るまでお前虐めて待ってやるからよ〜』
『あっはっはっ〜お構いなく〜』
ハンスはラッキーをぶん殴ると心に決め、苦笑し剣を構える。その頃ラッキーは
『ぐおぉぉ!生卵か!?生卵なのか!?割っちゃった卵を勿体無いと思った俺が悪いのか〜』
トイレの個室で唸っていた。
『ぐぬぬ、最強の筈なのに何故腹を壊すんだ!毒耐性とかで大丈夫とかじゃ無いのか!?ちくしょ〜』
俺は手を洗いお腹を摩りながら訓練場へ到着するとハンスが3人の騎士に囲まれリンチされていた。すると姫様が駆け寄って来て状況を説明してもらう。
『つまり一対一って言ってなかったからハンスはボコボコにされてるって事?』
『そうなんです!だから早く助けに行って下さい!』
俺は『はいよー』と訓練場に降りハンスの元へ駆け寄り、騎士の1人に手刀を入れる、すると鎧は歪み騎士は白目を剥き泡を吹いて倒れた。
『あれ!?強くやり過ぎた?生きてるよな?それよりハンス君良い顔になったじゃないか!お兄さんはとても嬉しいぞ!』
『でめぇ、後で覚えておけよ・・・』
そう言うとハンスは気を失い俺はハンスを担いでエイラさんに預ける。残り2人の騎士は呆然としていたがハッと我に帰り叫ぶ。
『テメェ!!不意打ちと卑怯だろ!正々堂々とたたかぶべぇぇぇ!』
俺はうるさい騎士の懐に踏み込みビンタする、ビンタされた騎士は顎の骨が砕け意識を失う。
『おーい!カマセーヌ様ー!こいつで終わりで良いのかー?ビビりまくってんだけどー』
カマセーヌは勝ちを確信してからの今の状況が受け入れられず呆然としていた。すると審判のおっさんは残りの騎士を見て頭を抱えながら勝敗を告げた。
『決闘の勝者はアリス様とし決闘を終了とする!負けた奴等は後で性根を叩き直してやるから俺のところへ来い!解散!』
そう言うと観客達は立ち上がり仕事へ戻り俺はアリス様の元に戻る。
『ラッキーさん、凄いです!騎士の人達をあっという間に倒してしまいました!』
『ふっふっふっ、手加減の特訓の成果ですね、殺さず仕留めて来ました』
『まだまだですね、さっきの2人は危険な状態で治療院に運ばれたそうですよ』
俺が調子に乗っているとすかさずエイラさんからダメ出しされる。
『そう言えばハンスは?大した事無さそうだったけど大丈夫なの?』
『今は手当てをしてもらい部屋で寝かせています。』
するとアリス様が俺の前に立ち頭を下げる。
『ラッキーさん、今回は私のせいで申し訳ありませんでした。』
『謝らなくていいよ、護衛の仕事を楽にする為だったしな!』
俺が笑顔で言うとアリス様も笑顔になる。
『それでさ、冒険者登録したいんだけど今から行っても良い?』
『はい!門番さんにお声を掛けて頂ければ出入りは出来ますので』
『了解!じゃあちょっと行って来るから!』
そして俺はアリス様とエイラさんから離れ冒険者ギルドへ向かった。