74.最強とは過酷な山越えでも疲れない事だ!
朝飯を食べ終えた俺達は荷物を片付けて山に入った。
『道が無いんだな、歩き辛くて敵わんな』
『人が入らないんでしょ?獣道すら無いわよ』
『でも魔物の気配はありますね、気を付けて進みましょう』
俺とユーリとクリスが先行し後方には何やら考え込むフレイアとオーロラがついて来る。
『うーむ、この山を知ってる気がするのだが・・・』
『フレイア、すぐに思い出しますから先を急ぎましょ』
山の中腹辺りに着くと俺は異変を感じた。
『お前等止まれ、何かヤバい感じがする』
『ヤバいって魔物でもいるの?』
『魔物かは分からんが悪魔よりヤバい感じがする』
俺の言葉にユーリとクリスの顔色が変わる。
『あっ!おもいだふがっ!?』
『フレイアは黙ってなさい』
フレイアが何かを思い出したらしいがオーロラに口を塞がれる。
『ドラゴン関係って事?お前達の親父とかやめろよな』
『私達の血縁では無いので安心して下さい、面白い方がおりますので先に進みましょう』
オーロラはフレイアを引っ張り先へと進んで行く。
『しょうがないから行くぞ、お前等も覚悟はしとけよ』
『行くんですか?はぁ・・・僕は何でこのパーティーに入っちゃったんだろ・・・』
『今更何言ってんのよ、アイツ等見えなくなる前に行くわよ』
俺がオーロラの後を追いかけようとした時、真横から気配を感じた。振り向こうとした時には脇腹に衝撃が走り吹き飛ばされた。
『ラッキー!?』
ユーリは後ろに飛び構えるとクリスも身体強化を限界まで強め、突然現れた人影を観察する、昔勇者が使っていたと言われる刀を腰に下げた小柄な老人がこちらを一切見ずにラッキーを警戒している様だった。
『私達は警戒する価値も無いのかしらね、すぐにその顔歪めてあげるわ!』
ユーリはそう言うと老人の懐に入ろうと距離を詰める。
それに気付いた老人はユーリを見るや刀に手をやり溜め息を吐く。
『弱者を斬る気は無いのだがな・・・』
ユーリの死が頭をよぎったクリスは老人に筋力低下と速度低下の魔法をかける。老人は刀を抜き放ちユーリの首へと刀を滑らせる、ユーリは体勢を低くしてギリギリで刀を躱すと右拳を固く握り老人の脇腹へと放つが老人は左足でユーリの拳を踏みつけ上段の構えから刀を振り下ろそうとしたがクリスが放った火球によって阻まれ距離を取った。
『はぁはぁ、助かったわクリス』
『ユーリさん、無闇に突っ込まないで下さい!今のは偶然助かっただけです!』
『そこの小僧の言う通りだ小娘、次は確実にお前達を斬るぞ』
老人はつまらなそうに言ってラッキーが飛んで行った方向に向き直りニヤニヤしながら戻って来るのを待っていた。
『魔力を感じたから戻って来ましたがここに居ましたか』
『あっ!やっぱり剣聖の爺だ!久しぶりだな!』
そこへ戻って来たフレイア達が老人に挨拶をし始めた。
『懐かしい気配はお前達のものだったか、怪我をしたくなければ退がっていろ、儂が恐怖する程の強者が現れたのだ邪魔をするならお前達も斬るぞ』
老人の言葉にフレイアが殺気立つがオーロラがフレイアの肩を掴み止める。
『ユーリさん達に興味を持つかと思ってましたがご主人様に興味を持つとは計算外でした』
『ユーリ達とはそこの小娘達か?筋は良いがあの男の前だと霞むな』
すると老人の顔が歓喜に変わり世界樹の棒を杖代わりにしたラッキーが戻って来た。
『いきなり何すんだ爺!ぶっ飛ばされてぇのか!』
ラッキーの言葉を返さず老人はラッキーの左手を斬り飛ばした。ラッキーは斬り飛ばされた左手を治したが完全にキレていた。
『いってぇな、覚悟出来てんだろうな?爺相手でも手加減しねぇぞ』
『それで良い、儂を楽しませろ小僧』
俺は棒で爺の喉元に突きを放つが爺は余裕を持って躱し俺の体を切り刻むと距離をとって居合の構えを取る。
『いてててっ、何度も斬りやがって!』
『バラバラにするつもりで斬ったんだがその程度の傷で済むとはな、しかしお前は素人か?いや違うな強過ぎて実戦と呼べる経験を積んでいないのだな』
爺の言葉にムカついた俺は深呼吸をして棒を構えた、それを見た爺は笑顔になる。
『くくっ!失礼した、お前は強過ぎて本気を出せなかったのか先程の言葉は訂正する、本気で来い小僧』
全神経をラッキーに向け待ち構えていた老人は突然目の前に現れ棒を頭に振り下ろし始めていたラッキーに驚愕するが咄嗟に刀で棒を受け腹を蹴り飛ばす。
『ぐっ!恐ろしく速く重い一撃だな、受けるのは悪手だな』
老人は刀を何度も握り直し感覚を確かめ剣先をラッキーに向け構えを取り呼吸を整える。
『クリス?さっきのアイツの動き見えた?』
『全く見えませんでした、気付いたらラッキーさんが蹴られてましたので』
ユーリとクリスは唾を飲みラッキーと老人の戦いを食い入る様に見ていた。
『ご主人様は本気でやってると思いますかフレイア?』
『人間の生み出した戦闘技術で戦ってる時点で本気では無かろう』
『技術はいらないと言う事ですか?』
『主の強さはそういう次元ではないのだ、本気なら技術を使う前に相手が死んでおる、今の主は自分の力を確かめている感じがする』
剣聖とラッキーの打ち合いを見ながらフレイア達は楽しそうに会話をしていた。




