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”ASSASSIN”—異能組織暗殺者取締部—  作者: 深園青葉
第4章
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July Story16

それぞれの事件が、隠された真実に向けて、動き出す───。

 蒼太は、里道に聞こえないように気を付けながら、息を吐き出した。


 ただ座っているだけだが、身体は既に疲れ切っていた。


 あれから───里道が押し入ってきてから、どれくらいの時間が経ったのだろう。体感としては長い間、こうしている気がするが、実際はそれほど経っていないのかもしれない。


 せめて、時間を確認したい───。


「あの」


 目を上げた時、新一が身を乗り出すのが見えた。里道にではなく、豌藤に対してだった。


「時計、外していらっしゃるんですか?」


 豌藤は短く、「え……?」と声を上げた。


「いえ、壁掛け時計が見当たらないので、皆さんは普段、どこで時間を確認されているのかなあと。ふと、気になったんです」


 蒼太は「たしかに……」と思いながら、豌藤を見た。


 豌藤の手首には、腕時計が巻かれていない。


 壁掛け時計がないのなら、他にどうやって、時間を確認しているのだろう。


 それに、壁掛け時計を外すことに、何か、意味はあるのだろうか。


 豌藤は「え、ええと……」と目を泳がせた。


「こ、壊れてしまったんです。……針が動かなくなってしまって……、だから、外しました……」


 新一は「ああ、なるほど」と納得したように頷いた。


「結構、長く使われていたんですね」


 新一の微笑みに、豌藤は「そ、そうです……」と、ぎこちなく答えた。


 蒼太は豌藤の反応を、不思議に思った。


(何だろう……?)


 蒼太は小さく、首を傾ける。


(言いたくないこと聞かれた時みたいな……、そんな反応……)


 奥にいる女性銀行員二人は、蒼太たちと同じように、初めて理由を知ったように、「そうだったんだ」と小声で言い合い、顔を見合わせていた。


 蒼太は、里道はどうだろうか───と目を向けた。


 里道は目を、これまでで一番険しくさせていた。


 蒼太は驚いた。


 里道の、その視線は、真っすぐに、豌藤を捉えていたのだ。


 ※


「こっちにも、共犯者がいるのかもしれない」


 翼は、光を振り返った。


「監視カメラは、全部止められてる」


 光は紙の上でペンを動かし、


「銀行の設計図は、流石に調べられないよね」


 視線を上げて、そう言った。


 翼は銀行の監視カメラの映像が映った画面を見つめた。設置されている4つ全てが、真っ暗で、何も見えない。


「だけど、“みはらし”ほど、大きな建物じゃないし、外から、中の様子は調べられるかな……」


 チラリと視線を上げ、英二と話している優樹菜を見る。


 すると、英二が「できました」と顔を上げた。


「それぞれの、部屋の状況です」


 できあがったのは3つの図だった。


 子どもたちが監禁されているイベントルーム、すみれがいる事務所、管理人室───それぞれ、立てこもっているのは一人だ。


「犯人は、それぞれ一人だけど、問題は、イベントルームと、事務所に、人質の人たちがいるっていうところだよね……。犯人を捕まえる時に、大勢の人に顔を見られることになる」


優樹菜の言葉に、光が、「たしかに……」と頷く。


「顔を隠すとか、そういう対策をしたとしても、私とあおちゃんの体格からだと、”子供”だということは、すぐに知られてしまいそうですよね……」


「事件解決後の説明も、難しくなりそうですね」


翼が見つめると、優樹菜は「そうだよね……」と、顎に手を当てた。


「……私、もう一度、お母さんに連絡してみる。何か、いいアドバイスがもらえるかもしれない」


 そう言うと、優樹菜は立ち上がり、廊下に向かって駆けだして行った。


 その、直後、英二が「おっと」と声を上げた。


「どうしました?」


 翼は英二に目を向けた。


「妻から、連絡です」


 そう言った英二は、スマートフォンを手に持っていた。そこから小さな音が漏れていることに、翼は気が付いた。


「電話?」


 翼と光、2人の声が重なる。


 英二は頷き、


「もしもし?」


 と、耳元に、携帯を運ぶ。


「はい、僕です。───ええ、そうです。───んっ?何が、起こったんですか?」


 英二が目を丸くするのを、翼は見た。


「えぇっ!?」


 直後、英二は大声を上げ、その場で飛び上がった。


「そんなことが……?───危機的状況ですね」


 眉間に皺をよせ、眼鏡を指先で押し上げた英二を見て、翼は胸騒ぎを覚えた。


「今、こちらでは潜入の計画を立てていたところです」


 英二はそこで、大きく息を吸った。


「───大丈夫です。”ASSASSIN”のみんなを、信じましょう」

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