July Story2
本拠地に集まったメンバーたちの、夏の日の、つかの間の日常。
「蒼太、遅いねー」
葵が、時計を見上げて、声を上げた。
「用事って、何なんだろ?」
「それは、来てから聞けばいいんじゃないの?ほら、こっち、手伝って」
優樹菜は呼びかけながら、フラットファイルを机に置いた。今から、葵と光が昨日殺し屋を捕まえた時に起こったことをまとめるのだ。
「やだー」
葵が、ぶんぶんと、首を振った。
「───は?」
優樹菜はそんな妹を、鋭い目付きで見つめた。
「だってー、暑いんだもーん。動きたくなーい。何もしたくなーい」
「何だらしないこと言ってんのよ……。祝日だけど集まろうって言い出したの、あんたでしょ」
「それはー、みんなに会いたかったからだよ。優樹菜に会いたいなんて思ってないもんねー」
「そんなのあたりまえでしょ。一緒に住んでるんだから」
葵は何も言い返す言葉が見つからなくなったようで、ムッとふくれ面を優樹菜に向けた。
「私、やりますよ」
始まりかけた姉妹の喧嘩を止めたのは、光の声だった。
「ああ、いいの、光ちゃん。この子、甘やかすとろくなことになんないから」
「ちょっと!それどういう意味!?」
葵が勢いよく、優樹菜に向かって身を乗り出す。
優樹菜は溜息を吐いた。妹は最近、自分の言うことに対し、「それどういう意味?」と言い返すことを覚えたのだ。
「そのまんま。───ほら、早くして。終わってからなら、ダラけたって文句言わないから」
優樹菜の言葉に、葵は言い返してこなかった。
葵の説明が足りないところは光が補い、それを聞いた優樹菜が文章にして起こしていく。
そうして、作業を進めてから数分後、席を外していた翼が、部屋に帰ってきた。
「社長、外ですかね」
翼に尋ねられ、優樹菜は、「えっ」と声を上げた。
「社長室に、いなかったの?」
「はい。用事があって行ってみたんですけど、ドアの鍵が閉まってて」
「鍵閉めてるってことは……、帰ってくるまでしばらくかかると思ったのかな」
優樹菜が言うと、
「急ぎの用事なら、あたしが探してきてあげようか!?社長がいそうなところ、瞬間移動で行ってくるよ!」
葵が、ガバッと勢いよく立ち上がった。
さっきまでのやる気のなさは、一体何だっんだ───優樹菜が、呆れの目を向けようとした時、翼が、「ああ、いや」と苦笑を浮かべた。
「これ、渡したかっただけだから、大丈夫だよ」
翼は手に持っていたノートを掲げて見せた。取調班が行った取り調べの内容を記帳したものだ。取り調べ終了の都度、新一が確認することになっている。確かに、それなら、新一が帰ってきてからでも十分に間に合う。
翼の答えに、「そっかぁ……」と床に座り直した葵が、「ねえ、優樹菜ー」と、光の速さで話題を変えた。
「勇人、いつまで学校休むの?」
優樹菜は毎日のようにされる質問に対し、「だから……」と、うんざりしているのを前面に声に出した。
「そんな正確に分かるものじゃないのよ。大体、後一週間間以内の予定だって」
「じゃあ、もう傷はふさがってるの?」
「私も、実際に見たわけじゃないから分からないけど、そうなんじゃない?」
葵は「そっか」と返事をし、
「早く、来れるといいね」
と、言った。
優樹菜は、「そうだね」と頷きながら、葵の言葉通りになることを期待している自分に、気が付いた。
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