Nowadays
ご覧いただき、誠にありがとうございます!
ここから、"ASSASSIN"の物語が始まります。
とても長いシリーズのお話にはなりますが、まずは1話からでも覗いていってくださると嬉しいです♪
私は椅子に腰を沈め、手元の本の表紙をそっと指で撫でた。水色の布は、私の人差し指を心地よく滑らせた。
嬉しいような、切ないような───この感情は大人になった今だからこそ味わえるものなのかもしれない。
本を開いた時、「ねえねえ」という声がした。
顔を上げると、茉奈が机に手をつき、私を見つめていた。
「お話聞かせて?」
その言葉に、私は苦笑する。
茉奈は毎日、学校から帰ってからの、この時間に決まって私にこう言ってくるのだ。私はそんな茉奈に頼まれるがまま、毎日短い物語を聞かせてあげているのだが、そこまでたくさんの˝お話˝を知っているわけではないし、そろそろ新しいネタが欲しいと思っていたところだった。
「お話かぁ……、そうだなあ」
机に本を置く。
そうして、じっと表紙を見つめる。
水色───快晴のような、澄んだ色。
この色を見ると、私はいつも、彼のことを思い出す。
彼から送られてきた本を、再び、手に取る。
この中には、彼に纏わる一連の物語が紡がれている───。
その物語を今の茉奈にしても良いのだろうか?少々、小学生にするには難しい内容な気もする。
ただ、茉奈はとても賢い子だから、全てとまで行かなくとも理解してくれるだろうか。
────そう、少し悩んでいると、その問いに答える、彼の声が聴こえたような気がした。
「……今日は昔話、しようか」
私は、茉奈に微笑んだ。
「昔話?どんな?」
茉奈が首を傾げる。茉奈はいつも˝お話˝が始まる前に、あらすじを訊くことを欠かさない。
「このお話はね、この本に書いてあるんだけど、全部、本当にあった話なんだ」
「えっ!?すごい!」
茉奈は小椅子を持ってきて、机を挟んだ私の真向かいに座った。
表紙を捲って、息を吸う。そうして、茉奈と、自分自身に、こう告げた。
「じゃあ、始めようか。この、昔話を───」
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