表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
”ASSASSIN”—異能組織暗殺者取締部—  作者: 深園青葉
第2章
36/341

May Story12

殺害された犯罪者。

そして、自首した殺し屋───。

 水野道正が殺し屋によって殺害されたということが分かったのは、佐藤学の自首によった。


 死体の第一発見者として、翼と光は警察による事情聴取を受け、それが終了し、帰ろうというところで佐藤が警察署へとやって来たのだった。


「俺は殺し屋だ。今日、男を殺した。それを最後の仕事にしようと思って来た」


 そう、佐藤は言ったそうだ。


 その場にいた、翼と光の証言により、佐藤は逮捕されることとなった。


「あたしたちが来た時には何も無かったよ」


 葵が言った。それに蒼太が同意する。


「あおちゃんたちは、何時ごろ、来たの?」


 翼が尋ねる。


「んーとね、3時くらい」


「だったら、僕と上村さんがあそこを通ったのが、大体3時半過ぎだから、その間に水野は殺された、もしくは死体が置かれたってことになるね」


「私が通った時は、血痕に気付かなかったんだけど、水野は出血してたの?」


 優樹菜の問いに翼が頷く。


「心臓を刺された跡がありました。それと、顔に血で×マークが描かれてました」


「それで血が地面に付いて無いとしたら、他の場所で殺されたってこと?……まあ、わざわざあの場所に連れてきて殺す方が納得の行かない話ではあるよね」


 優樹菜が言った。


 本拠地に来た翼に「水野の死体を発見し、佐藤が自首してきた」と聞いた時に比べると、オフィスの中はは落ち着いてきていた。


「佐藤の犯行については、警察が調べることになったの?」


 優樹菜が翼に尋ねる。


「はい。佐藤が全て、自分の口で話すって言ったんです。話したことを調べてくれって」


「その言葉が嘘じゃないとしたら、捜査は順調に進みそうだけど、事情聴取は?やることになった?」


「こっちで捕まえられたわけでは無いですけど、お願いしました。今回の依頼の標的でしたし、色々、訊かないといけないので」


 蒼太はその会話を聞きながら、佐藤の自首について考える。


(水野を殺したのを、最後の仕事にする……?目的を果たせたから、とか?でも、潔くそんな判断、殺し屋がするのかな……?)


 人を殺して金を稼ぐ───道を外れた者が何かを成し遂げ、自らの人生を終わらせようとする……それ

が目的だったとしたら、と蒼太は首を傾ける。


(捕まったら、死刑になるの確実なのに、自首……?そうした理由は何……?)


 ここまで殺し屋に対して興味が湧いたのは初めてだった。それは佐藤が、蒼太が今まで出会った殺し屋たちと、何処か違う存在のような気がするからだ。


「蒼太」


 葵の声に蒼太は目線を上げた。


「これ、食べる?」


 そう言って差し出されたのは小包に入ったスナック菓子だった。


(これって……)


 昨日、琉輝から貰ったものと同じもの───今、蒼太の部屋の机の上に袋ごとあるものを葵から受け取った。


「みんなで捜査だーって張り切ってたけど、あたし、今回、ほとんど何もできてないやー」


 葵が袋から菓子を取り出す。


「佐藤を捕まえるっていう、あおちゃんにやって貰うはずだった仕事が無くなったからね」


 翼が答える。


「でもいいやー、もうすぐ解決しそうだし」


 葵は楽観的に言い、パリパリと音を鳴らして菓子を食べ始めた。

 

 それに倣い蒼太も袋を開ける。


 その直後、ドアが開いた。


「あっ、社長。どうしたの?」


 葵が部屋に入って来た新一に対し、尋ねる。


「今、亮助さんの方から、連絡があってね」


「おじさんから?何の?」


 新一の答に葵が首を傾げる。


 ˝おじさん˝と葵に呼ばれる亮助は、北山の警察署の中で˝ASSASSIN˝の担当を受け持っており、新一と度々、情報を交換し合っているのだ。


「君たちが、受け持っている依頼の標的が自首して来たって言うのは知ってるかい?」


「知ってるというか、その場に間接的にいました」


 翼が言った。その後、翼が警察署に行った事情が説明され、それを聞いた新一は、「そうか……」と、無念を露にさせた。


「その、標的であった佐藤学は、私の元同僚だった人なんだ」


「えっ!?社長の元同僚ってことは、OPUの人だったってこと?」

 

 葵が目を丸くする。


(OPUって……?)


 蒼太は初めて聞く言葉に疑問を覚えたが、それを訊ける空気では無いことを察した。


「ああ。私と同期入社で、仲も良かったんだが、ある日、誰にも理由を告げずに退職してしまった。それが、もう15年前の話だが、まさか殺し屋になっているとは……思ってもみなかった」


 新一の友人を悔やむ言葉に、4人は言葉を失くし、部屋に沈黙が訪れた。


「……君たちのところに自首の知らせがまだ入ってないんじゃないかと思って言いに来たんだが……、私の知り合いというのはただの余談だと思ってくれないか。佐藤が罪を犯した、罰せられる人間であることに変わりは無いからね」


 新一が4人を落ち着かせるように、穏やかな口調で言った。


「あの、社長?」


 翼が口を開く。


「その、佐藤について、聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」


 立ち上がった翼に対し、新一は、


「ああ、もちろん」


 と頷き、2人は廊下に出て行った。


 蒼太はその後、「OPUとは何か」を尋ねた。


「組織を創る組織……ざっくり言うと、めちゃくちゃややこしいんだけど、世間の役に立つ異能組織を創設することを仕事にしているところ。社長はOPUの人で、その権利を使って、˝ASSASSIN˝を創ったの」

 優樹菜の説明に蒼太は「へえ……」と驚きと納得を含んで頷いた。


 今まで、˝ASSASSIN˝は誰が、どういうきっかけで創ったのか、気になっていたことへの回答が一部、埋まった。


 すっかり、葵から貰った菓子を食べるタイミングを逃した蒼太を、戻って来た翼が手招きで呼んだ。


 蒼太が近くに行くと、翼が調べていたことについて聞かされることになった。


 それは、蒼太の気持ちを揺さぶる、取り調べ中に佐藤の前で初めて聞くことにならなくて良かったと思う話だった。

よろしければ、評価・ブックマーク登録、感想などよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ