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"ASSASSIN"第12章!
1月に起きた、"ASSASSIN"のメンバーを狙った一連の犯行は、終わりを告げた───はずだった…。
"ASSASSIN"を狙う、真の黒幕の正体とは…!?
是非、お楽しみいただけると幸いです!
人というのは、何かと理由を求める生き物であると、私は思っている。
「何故、このお店を選ばれたんですか?」
「どうして、このお仕事に就こうと思ったんですか?」
「どんな目的があって、ここまで歩いて来られたんですか?」
特に、テレビ番組なんかを見ていると、画面の中の、出演者───アナウンサー、タレント……などの方々は、インタビューを引き受けた人間に対して、"理由"を尋ねていることが多い。
番組を構成するためのインタビューなのだから、それを訊くのは、当たり前といえば当たり前なのだが、意識して見てみると、「自分の行動に対する理由を、カメラに向かって、平然と語れる人はすごいなぁ」と思ってしまう。
少なくとも、娘から、「どうして、お母さんと結婚しようと思ったの?」と訊かれて、平然と答えることができなかった私にとっては。
1時間前、小学2年生───現在8歳の娘から、唐突に、妻との馴れ初めを話題にされるなんて……と動揺した私は今、ソファの上で、夕方のテレビ番組を見つめている。
"理由かぁ……"
1時間前、茉奈に発した、自分の声が蘇る。
"忘れちゃったなぁ"
娘に対して、妻と、"家族"になる前の話をすること。
気恥ずかしさに溢れて、冗談のような口調と苦笑で、その場を誤魔化そうとした私の声。
そして、それを聞いた茉奈が見せた、ムッとした表情。
"つまんない"
舌足らずな口調と、僅かに低い声で、その言葉は発せられた。
私と違い、茉奈は、大して私の返答を引きずるようなことはしなかったようで、あの10分後には、いつものように私にお話をせがんで来たし(いつものような声で語れた自信はない)、今は、妻と買い物に出かけている。
私がその買い物について行かなかったのは、3人で出かけることが気まずかった……わけではない。
ただ、茉奈が妻と、新しい洋服を買いにいくことを楽しみにしていたからだ。そう、断じて気まずかったわけではない。
"つまんない"
茉奈の声が、蘇る。
茉奈はきっと純粋な気持ちで、私が素直に、妻との思い出を語る姿を見たいと、そう思っていたのだろう。
それを私は、茉奈が言う通りの、"つまんない"意地で、誤魔化してしまった。
私が、妻を好きになった理由───彼女と"家族"になりたいと思った理由。
それを、じっくりと探さないと見つけられないこと───ただ、無垢で純粋な言葉で、表せられないこと。
───"つまんない"
私は、息を吐き出して、テレビの電源を切った。
いつだったか、妻に対して、「大人になると、難しいことばかり考えて嫌になるね」と言ったことを思い出す。
私がこうして、自分の思いや行動の"理由"を簡単に表せなくなったのは、大人になった、代償───なのだろうか。
私は、ふと、右の手元に、目を向けた。
私が座っていない方の、ソファの片側。
そこに、私が部屋から持ち出した本が一冊、置いてある。
薄く儚い、桃色の表紙。
この色は、白梅梅というらしい。
今の月───2月の色の、一つ。
私は、本を手に取る。
人は、理由を求める生き物である。
───ただ、すべてが、そうではない。
自分にとって、大切なものを、大切だと言うことに。
大切なものを、守ろうとすることに。
───理由なんて、いらないんだ。
それは、この本が教えてくれたこと。
この本に登場する人物たちは───あの6人は、何かを叶えることに、"理由"なんて、なくてもいいと思っている。
その温かさを、もう一度、感じたくて、私は、白梅色の表紙を、そっと捲った。
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