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”ASSASSIN”—異能組織暗殺者取締部—  作者: 深園青葉
第10章
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December Story51

さくらが俊二に送った最後の言葉───。

「メール……?」


 蒼太は、俊二の手の中にある、赤い携帯電話を見つめた。


「さくらから届いたメッセージ───さくらが書き残してくれた言葉が、書いてある」


 俊二は、画面を開き、ボタンを操作した後、


「見てごらん」


 蒼太に、携帯電話を、差し出した。


「君に見てほしいことが、書いてある」


 蒼太は、それを、受け取った。


 ※


 "滝原さんへ"


 それが、メールのタイトルだった。


 母が滝原俊二に送った、最後の言葉───蒼太は、胸が震えるのを感じた。


 "滝原さん"


 その、長い文章の始まりは、そんな、呼び掛けだった。



 "突然、こんな改まった文章を送って、驚かせてしまうかもしれません。私自身、滝原さんに、このような文章を送ることを、ほんの数日前まで、想像していませんでした"



 "これから、私が書く内容は、滝原さんにとって、受け入れ難いものになるかもしれません。でも、私は、滝原さんに、伝えなきゃいけない。滝原さん、滝原さんはいつだって、私の言葉に、耳を傾けてくれましたよね。どんな時も、私のことを、信じてくれましたよね"



 "滝原さんがいつも、私のことを信じてくれていたのと同じように、私も、滝原さんのことを信じています。私の思いは、滝原さんに伝わると、確信しています"



 "この間、電話で、息子が、"殺し屋"の存在を認識したということを話したと思います"



 "その時、滝原さんは、"御神にそのことが知られなければ大丈夫だ"と、私を励ましてくれたしたよね。それまで、息子の身を案じて動揺していた私は、滝原さんのその言葉を聞いて、落ち着くことができました。"滝原さんの言う通りだ"、"きっと、大丈夫だ"、と"



 "ですが、御神は……あの殺し屋は、私たちの思考や行動を、全て見通していました"



 "滝原さんと、あの電話を交わした翌日、私のもとに、御神から、手紙が届いたんです"



 "手紙の中には、私の息子が、同居する男の正体が殺し屋であることを知ったという事実が、御神のもとに届いているという内容が、書かれていました"



 "御神は、"いつかはこんな日が来るだろうと密かに予感していた"という言葉の後に、"お前には、責任をとってもらわなきゃいけない"という言葉が、続けて、書いていました"



 "私は、それを読んだ時に、思いました。私が何かをして、それで許されるのなら、私は、何だってする。私の行いが、息子を救うことになるのなら……"



 "お前が指示に従えば、子供に手出しはしない"



 ”御神の手紙に、あった言葉です。御神は、私が、その指示に従わないという選択は、決してしないだろうと、確信しているようでした”



 ”御神の指示というのは、手紙が届いた日の翌日に、御神が指定した場所に、私が一人で向かうというものです”



 ”向かったその場所で、御神が私に何をするつもりなのかは、わかりません”




 "ただ、わかることは、あの御神が、私をただで帰すわけがないということです”



 ”御神の、当初の目的は、私の人生から、自由を奪うことで、滝原さんへの復讐を図る、というものでした"



 "その思いは、御神の中で、今も変わっていないはずです。御神は、私を苦しめることが、滝原さんを苦しめることに繋がると、思い続けているのだろうと思います"



 ”もしかしたら、御神は、その場で私を捕らえて、もう二度と、子供たちに会わせないつもりかもしれない。それか……子供たちに何もしないというのは嘘で、私の見えない場所で、あの子たちに、危害を加えるかもしれない”



 ”私は、子どもたちを守るために、生きています"



 "もし、私が死ぬことで、あの子たちが救われるのなら、私は躊躇わず、死を選びます"



 "だけど、それと同じくらいに、こう思うことがあります。死んでしまったら、もう、この子たちを守ることが、できなくなってしまう……そう思うことは、死を想像するよりも、ずっと怖くて、ずっと、辛いです"



 "私は、御神のもとに行きます”



 ”会いに行って、奴を、殺します”



 ”その方法は、既に用意してあります”



 ”御神が死んで、全てが解決するとは、思っていません”



 ”むしろ、彼を殺すことは、子どもたちを守るための、最後の手段だと、思っています。私の監視役の、あの男や、御神の部下たちは、当主を殺した私のことを、決して、許しはしないでしょう”



 ”御神を殺した後、私が、生きて帰れる可能性は、ほとんど無いといって、等しいと思います”



 ”でも、御神がいなくなれば、御神の組織が崩壊すれば、私の大切な子どもたちは、自由に、なれるはずんなんです”



 ”殺し屋に支配された、隠し事だらけのあの家に……私がいなくなった後も、あの子たちが暮らし続けるなんて、そんなこと、あっていいわけがない”



 ”だから……私がいなくなった後の道しるべを、子どもたちに、残していきます”



 "上の息子に、「私が家を出て、それから、3日経っても帰ってこなかったら、こういう方法を辿って、お父さんのところに行きなさい」と、伝えるつもりです。その方法は、決して、簡単なことではありません。でも、あの子たちなら……きっと、やり遂げるだろうと、無事に、亮助のもとに向かえるだろうと、私は、信じています”


 

 "滝原さん。これは、このメールの、一文目に書くべき、言葉だったかもしれません”



 ”もしかしたら、これが、私から、滝原さんに送る、最後の言葉になってしまうかもしれません"



 "滝原さん、今まで、本当に、ありがとうございました"



 "私は、滝原に出会えて、本当によかった。滝原さんと過ごした日々は、私にとって、幸せなものでした"



 "最後に三つだけ、お願いがあります'



 ”実の両親と、上手な付き合い方が、できなかった私にとって、滝原さんは、本当の父親のような人でした”



 ”自分勝手な、わがままかもしれないけれど、聞いてください”



 "一つ目。もし、私が、帰ってこなくても、御神に復讐を計画することは、しないでください"



 "滝原さんは、絶対に、何があっても、誰かを、傷つけない"



 "私は、そんな滝原さんのことを、尊敬しています。私は、滝原さんのことを、信じています"



 ”二つ目。これは、お願いしなくても、滝原さんは、してくれると思うけれど、私がいなくなった後、私のことを思ってくれている人が、前に進めなくなっていたら、その人のことを、支えてあげてください”



 ”三つ目。私が死んだことを知ったその時、できたら、笑ってください”




 ”滝原さんには、私がいなくなった後、笑っていてほしい。滝原さんが、笑顔で、見上げた空の、その先で、私は、滝原さんに、笑顔を返したいです”



 ”改めて、今まで、本当に、本当に、ありがとうございました”



 ”どうか、いつまでも、元気でいてください”



 ”さくらより”



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