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”ASSASSIN”—異能組織暗殺者取締部—  作者: 深園青葉
第2章
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Ⅿay Story2

特殊な依頼の調査、開始。

 「˝ASSASSIN˝に入る事になってもうすぐ1ヶ月か」と、蒼太はオフィスに入りながら思った。


 メンバーになってから3週間。その間に、色々なことがあったが、蒼太は少しずつ、活動に慣れ始めていた。


 学校帰りの今日も、葵と2人で本拠地に向かって来たところだ。その間、昨日、取り調べを終えた殺し屋の供述調書を一緒に作ろうと、今日は班での動きのない葵が蒼太に提案した。


「翼が来てから始めようね」


 葵がソファに座りながら言った。


「ああでも、もうすぐ来ると思うなー。あっ、ほら!足音、翼のだ」


 蒼太は、そう言われて初めて廊下から足音がするのに気付いた。いつもながら、葵の耳の良さには驚かされる。


「あれ?誰かと一緒なのかな?2つ聞こえる気がする」


 葵の疑問の答は、すぐに分かった。


 部屋に入って来たのは、翼と、セーラー服姿の少女だった。


 蒼太は、少女の見た目を見て、自分が会ったことのない、˝ASSASSIN˝の関係者かと思ってしまった。


 しかし、葵の反応で、どうやら違うことを察した。


「お客さん?」


 葵が首を傾げる。


「うん、紹介するね」


 翼は頷き、


「僕の同学年の、上村光さん」


 と、少女を紹介した。少女は2人に向かって会釈をした。


「とりあえず、座って」


 翼は、光に2人の向かいの席を勧めた。


「今日、依頼を受けたんだけど、ちょっと特殊で」


 翼は説明しながら、テーブルの方にやって来た。


「僕と人違いで、狙われているみたいなんだ、上村さん」


「えぇ!?どういうこと?」


 葵が驚きの声を上げる。


 蒼太も目を見開く。


 その後、蒼太と葵は、翼から、上村光に起きた災難について説明された。


「どうやら、僕を狙う事を依頼された側は、僕の事について詳しく知らされて無くって、中学の制服と、名前、後、能力者であることから推測して、上村さん=萩原翼っていう認識でいるんだと思う」


 翼が言った。


「えー!何それ、理不尽!」


 葵が声を上げる。


「まだ、殺し屋なのかは分からないけど、刃物を持ってたらしくて、何せ˝ASSASSIN˝の事を知ってるってことは、どこかの組織の人間である可能性が高いと思うんだよね」


「なるほどね。そしたら、その男を探して捕まえることができれば、解決かー」


 翼の言葉に、葵が腕を組む。


「それと、上村さんの警護だね。その日程は、後々決めるとして、まずは、上村さん」


 翼が、光を向いた。


「昨日、起きたこと───もう少し、詳しく教えてもらってもいいかな?」


 その問いかけに、上村光は「うん」と頷いた。


「まず、付けられてるって感じるようになったのは、何日くらい前から?」


 いつもの、穏やかな声で翼が尋ねる。


「3日前から……だと思う」


 光は僅かに視線を上に向けた。


「その前から……えっと、1週間前から、不審メールは送られて来てたんだけど」


「そのメールって今、まだ残ってる?」


 翼の目付きが微かに変わったのを蒼太は見た。


「うん。気味が悪かったけど、消さない方が後々良いのかなって思って……」


 光はそう言いながら、スマートフォンを取り出す。


「あっ、あった。これ、最初の日のなんだけど」


 光がテーブルに置いた画面の中には短いメールの分が映し出されていた。


 ˝待つか、待たずか、お前次第だ。待っていれば後悔することになるだろが˝


「これだけだと、何の事か分からなくて、相手のアドレスは表示されて無かったから、趣味の悪いイタズラで、適当にメールアドレスを打ち込んで送ったのが、たまたま私のアドレスに当てはまったのかなって思ってたんだけど、次の日に送られてきた2通目が……」


 光は画面を操作し、2通目を表示した。


 ˝単なる悪戯とでも思っているのか?まあ、良い。いずれ思い知ることになるだろう˝


「これを読んだら、イタズラじゃないのかな?って、思えてきて、でも、誰かに相談するには、もう少し様子を見た方が良いのかなって。そうしたらね、2日間、何も来なかったの。やっぱり、イタズラかって思ってたら……帰り道に後ろに気配を感じて。でも、振り返っても誰もいないから、気のせいなのかなって思って、家に着いたら、こんなメールが来てて」


 光は3通目のメールを出した。


 ˝気付いたか?我々から逃げることはできないと思え˝


 それを読んだ蒼太は、見知らぬ誰かの、嘲笑う声が聞こえてくるような気がした。


「やっぱり、付けられてるのは勘違いじゃなくて、本当なのかな?って。次の日の帰り道は、後ろから誰かが追いかけて来てるってくらい、気配が大きくなって、私、友達と電話する振りして携帯を見ながら歩いてたんだけど、メールが送られて来て……」


 ˝ 無駄な足掻きはやめろ。お前の考えていることは全てお見通しだ。まあ、良い。近く、答えがわかるだろう。精々、後悔して嘆け˝


「……これを読んで、本当に怖くなって来て、親に相談しようと思って、走って家に帰ったんだけど……、うちの親、仕事で帰って来てなくて。……それで、そのまま朝が来て───昨日、部活はあったんだけど、いつもより早く帰ったの。そうしたら、付けられないんじゃ無いかなって。1時間早く切り上げさせて貰って、6時くらいに学校を出たんだけど……」


「───襲われた?」


 翼が口を開いた。


 光が、ほんの僅かに頷く。


「……でも、前の3日と違って、全く、気配は感じなかったの。気付いたら……、みたいな……」


「で……、襲ってきた側は、僕の名前を言った。その後───上村さんが逃げた後、メールは来た?」


 翼の問いに、光は首を横に振った。


「ううん、来てない」


「そっか、わかった。……じゃあ、とりあえず、今、上村さんが話してくれた情報の整理をすることにはなるんだけど───」


 その直後、部屋のドアが開いた。


「あっ、優樹菜。良いところに」


 葵が声を上げた。


「お疲れ様、みんな。良いところって、どういう……」


 優樹菜は、そう言いながら目線を動かし、光に気付くと「あっ───こんにちは」と、言った。


 光が挨拶を返すと、


「僕の同学年の上村光さんです。今回、依頼人として来てくれてて」


 翼が優樹菜に光を紹介した。


「それと、揃ったから、メンバーの紹介するね。中野優樹菜さん、逢瀬高校の1年。そして、妹の葵ちゃん、清水蒼太くん、二人は緑ヶ丘小の5年生」


 蒼太は、自分の時もそうだったように、後一人の名前が出ない事が、寂しく感じたが、この場に居ないのだから仕方が無い。説明したところで、光は依頼人なのだから、あまり意味は成さないだろう。


 翼は、その後、簡単に優樹菜に事情を説明した。


「それで、上村さん。聞いた限り、たぶん、それほど複雑な感じはしないから、なるべく早く、でも確実に解決させるね」


「わかった。……ありがとう」


 光は、翼の真っ直ぐな言葉に、安心したように頷いた。


「今日は、ひとまず良いかな。───家まで送るね」


 立ち上がった翼に「あっ」と声を上げたのは葵だった。


「あたしの能力使えば……あ、でもダメだ。行ったことあるところにしか使えないから」


「それに、狙ってる側にとって、上村さんが歩いて家に帰って来ない事を不思議がられて詮索されたら、厄介だよね。僕が一緒に歩いてれば、向こうも警戒して、何もしてこないかもしれない」


 翼のその言葉に、4人は納得し、翼と光の2人が、蒼太、優樹菜、葵の3人よりも先に帰ることになった。

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