April Story19
「いってきます」を言って、蒼太は、家を出る。
月曜日が始まり、学校に登校する日々がまた、始まる。
いつも通りの朝───とは今日は違っていた。
約束していた通り、石の長い階段の下に、蒼太は立った。
少し早すぎたかもしれないと思った直後、頭上から「おはよう!」と、明るい声がした。
「あ……、おはよう」
蒼太は、葵に挨拶を返した。
「行こ」
葵の笑顔に2人は歩き出す。
「金曜日に出た宿題さー、家でやってみたんだけど、分かんなくて、途中で諦めちゃった」
「あっ……、あの、算数の……?」
「そうそう。蒼太くん、分かった?」
「うん。……学校着いたら、教える?」
「え!いいの!?教えて欲しい!」
他愛の無い会話だが、蒼太にとっては、葵が返してくれる反応の一つ一つが新鮮で、嬉しく、楽しかった。
「今日、依頼解決の日だー」
「あっ……、そうなんだ」
「あっ!そっか。蒼太くん、まだ、グループ入って無かったもんね。みんなで、仕事のスケジュール共有するグループチャット作ってるんだけど。そういえば、あたし、まだ、蒼太くんの連絡先、知らなかった」
「帰り……っていうか、本拠地、行ってから、交換する……?」
「うん、しよう!」
「……そういえば、昨日、兄ちゃんのお父さんに会ったんだよね」
「ああ───亮助おじさん?」
葵が首を傾ける。蒼太は「そう……」と頷いた。
「……それで、兄ちゃんのこと、色々知れた」
「───そっか、よかった」
葵が微笑む。
その言葉に、蒼太は、「……うん」と、頷いた。
学校沿いの桜並木を通りかかった時、葵が「ねえねえ」と蒼太の方を向いた。
目が合い、蒼太が「何だろう?」と思うと、
「蒼太くんのことさ、“蒼太”って呼んでもいい?」
葵が丸く、大きい目で、蒼太を見つめた。
蒼太はその目に、見覚えがあった。
その時と同じように、蒼太は「じゃ、じゃあ……」と、控えめに切り返す。
「ぼくも……、“葵”って呼んでもいい……?」
葵の顔が、一気に眩しく輝いた。
「もちろん!」
そうして「やったー!」と飛び跳ねるように、葵は手を叩いた。
その様子を見ていると、ほとんど意識することなく、蒼太も笑っていた。
そんな2人を見下ろす空の色は、この瞬間の蒼太の心のように、青く、青く澄みきっていた。
(第1章 完)
これからも、”ASSASSIN”の物語は続いて行きます!
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