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”ASSASSIN”—異能組織暗殺者取締部—  作者: 深園青葉
第7章
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Nowadays

"ASSASSIN"第7章!

公園で絵を描いている最中、蒼太は、謎の老人に声を掛けられ───?

是非、お楽しみいただけると幸いです♪

 10月の第3月曜日。


 この日は、土曜日に行われた学芸会の振替休日であった茉奈と休みが合った。


 平日に2人きりという中々とないこの日、私は茉奈を連れて隣町に遊びに行くことにした。


 バスに揺られること1時間。駅で降りて、ゆっくりと歩きながら、広い公園へとやって来た。


 公園は満開になった紅葉でいっぱいで、地面に出来上がった赤とオレンジと黄色の絨毯の上を茉奈は嬉しそうに駆け回った。


 私はその様子を木のベンチに座りながら見つめ、時折、茉奈が持ってきてくれた紅葉やどんぐりを手に持って眺めた。


 ゆっくりとした時間が過ぎて行った。


 お昼時になって、私は、茉奈を呼んだ。


 道中のコンビニで買ったおにぎりと唐揚げがこの日の昼ご飯だった。


 大きく口を開けて、ニコニコとした顔でおにぎりを頬張る茉奈を見つめていると、やはり、こういう場所で食べる特別じゃないものは特別だと、私は思った。


「お腹いっぱい」


 お茶のペットボトルを口から放して、茉奈は言った。


「ちょっと休もうか」と言ったにも関わらず、数分後、茉奈はベンチを立ってちょこまかと動き始めた。  


「元気だなぁ」


 私の呟く声がゆったりと響いた。


「あげる」と言って、小さな手いっぱいに拾った散策物をベンチに置く遊びを再開した茉奈に、私は「ありがとう」と答えた。


 茉奈は自分が見つけた"素敵なもの"を、自分のものにするのではなく、私にプレゼントしてくれているのだろう。そう思うと、どんな小さなものでも、嬉しかった。


「茉奈」


 時刻が1時を回ったところで私は茉奈を呼んだ。


「もうそろそろ帰ろう」


 茉奈はそれを嫌がる様子を見せずに「うん!」と元気に頷いて私の元にやって来た。


 茉奈がくれた落ち葉や木の実は、花の絵柄が付いたケースにしまった。去年の誕生日に、彼がくれたものだ。



 駅に戻って、目についた百貨店に立ち寄った。


 茉奈が「本屋さんに行きたい」と言ったので、まずは3階に向かった。


 地元の本屋よりも広い店内には見渡す限りの本が並んでいた。茉奈はその光景に目を輝かせ、1時間たっぷりかけて2人で本棚を回った。


「1冊買ってあげようか?」と尋ねると、茉奈は首を横に振った。まだこの間買ってもらった本を読み終えられていないのだと言う。


 茉奈は本が好きだった。家で過ごしている時は大抵、本を開いている。


 それに加え、茉奈は私に“お話”をせがむことを欠かさない。


「帰ったらお話のつづきね!」


 本屋を出た瞬間に、そう言われた。


 私は「わかりました」と苦笑した。


 その後は中を一通り回って、最後に、一階にある洋菓子屋へと向かった。


 ケーキ家族3人分───一人一つずつ、合わせて3個───が入った箱を茉奈はにこにこと嬉しそうに抱えた。


 帰りのバスの車内でも「茉奈が持つ」と手放さずにいたが、出発から20分が経ってところで、愛奈はうつらうつらと首を動かし始めた。


 そうして数分後、茉奈は私の肩に寄りかかって眠ってしまった。たくさん遊んで疲れたのだろう。


 小さな膝から、ケーキの入れ物が落ちないように、私はそっと茉奈の手の間を滑らせた。


 すやすやと寝息を立てている茉奈は、それに気が付いていないようだった。


 見つめると、赤ちゃんだった頃と同じ寝顔がそこにある。


 私は満ち足りた気持ちを感じた。やはり、茉奈と過ごす時間程、かけがえがなく、大切なものはないと、この瞬間に思った。



 家に帰ってから、私は茉奈がくれた紅葉で押し葉を作ることにした。


 作業をしていると、茉奈が手元を覗きにやって来た。


「何作ってるの?」


「押し葉。こうやって、新聞紙と新聞紙の間に葉っぱを挟んで」


 私は説明しながら、ジップロック袋に新聞紙を入れ込んだ。


「これを、本に挟む」


 机の上の辞書の間に挟まれたジップロックを見た茉奈は「へぇ」と目を丸くした。


「後は、葉っぱが乾燥するのを待つだけ。大体、3、4日くらいかかるかな」


「その葉っぱって、どうするの?」


「本のしおりにしようかな。できたら、茉奈にあげるよ」


「え!?ほんとっ?」


 茉奈の目が一気に輝いた。


 私は「うん」と笑顔を向けた。


「やったーっ!楽しみにしてるね!」


 手を叩いてはしゃぐ茉奈の後ろから、「愛奈ー?お風呂の時間だよー」と声が聴こえてきた。


「はーい!」


 茉奈は振り返って元気よく返事をした。


 そうして、ドアの前でくるりと振り返り、


「お風呂あがったら、お話の続きね!」


 我が家のおてんば娘は、そう言い残して、駆け足で部屋を出て行った。

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