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”ASSASSIN”—異能組織暗殺者取締部—  作者: 深園青葉
第6章
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September Story18

資料室で発見したノートの中に書かれていた内容とは───?

 夜10時。


 蒼太は部屋の電気を消し、机の上の関節照明のスイッチを入れた。


 何だか、自分がしては行けないようなことをしてしまっているような気がして、胸がドキドキした。


 机の上には、資料室から持ち出してしまった、あのノートがある。


 家に着いてから、この存在を思い出し、蒼太は悩みに悩むことになった。


 見てみようか、見ないままにするか───。


 椅子に座った今も、迷いがあった。


(ちょっと開いてみて……見ちゃいけないような内容だったら……閉じればいいか……)


 蒼太はノートを手に取り、深呼吸をして、表紙を捲った。


 1ページ目には、何も書かれていなかった。

 白紙の、大学ノートだった。


 蒼太は次のページを捲る自分の指が、微かに震えているのを見た。


 2ページ目、3ページ目……白紙だ。


(何も……書かれてない……?)


 裏返して、背表紙を見つめた。


 やはり───使い古したような跡がある。


 手に持ち上げて、蒼太は次のページを捲った。


 そして、蒼太は、はっと息を呑んだ。


 そこに、文字が現れた。



『秘密結社 ami』



 余白に、題名のように書かれた、子どもの字があった。


「秘密結社……?」


 蒼太は声に出して、その文字を読んだ。



『ルール』



 蒼太のものよりも綺麗な鉛筆の文字は、下へと続いていた。



『・amiの存在は、できるだけ隠さなくてはいけない』


『・集合場所は、石段のところ』


『・雨の日は、集まらなくていい』



 文字は、そこで途切れていた。


 蒼太はもう一度、上から読み返してみて、首を傾けた。


(何なんだろう……?これ……)


 一体、誰が書いたものなのだろうか───。


 隣のページは、また、白紙だった。


 蒼太はページを捲った。


 そこには、文字があった。


 前のページと、同じ筆跡だ。


 今度は余白に、こう書かれていた。



『殺し屋と暗殺者の違い』    



 蒼太は目を丸くした。


 ───が、直後に、「あっ……」と、気が付いた。


(そうだ……。これ、資料室にあったものなんだから……殺し屋のことが書かれてても、不思議じゃないんだ……)


 むしろ、書いてある方が正しい───蒼太は、そう思い直して、続きを読んだ。



『殺し屋と暗殺者の違い』


『・殺し屋→人から頼まれて人を殺す。その人の立場は関係なく殺す』


『・暗殺者→殺し屋の中に分類される。社会的に地位の高い人を殺す』



(そう……なんだ……)


 初めて知った───蒼太は、このノートを書いた人物から、教えてもらったような気がした。


(じゃあ……ぼくは"ASSASSIN"に入ってから、"暗殺者"には会ったことないんだ……)


 そう思って、蒼太の口から「あれ……?」と声が出た。


("暗殺者取締部"……なのに……?)


 そもそも───ASSASSINの意味は、"暗殺者"ではなかっただろうか。


 "ASSASSIN"は殺し屋を取り締まる組織───蒼太は、これまで何度も聞いた言葉を思い出した。


 "ASSASSIN"は、殺し屋の中でも暗殺者に限定した活動をしている───わけではない。


("殺し屋取締部"だと、語呂が悪いから、"暗殺者"にしたのかな……?)


 蒼太は、次のページを捲った。



『異能組織暗殺者取締部』



 その文字は───突然、現れた。



 息を呑む音が、部屋に響く。



『・暗殺者を取り締まる組織』


『・メンバーは全員、異能力者』


『・武器は持たない』  


『・能力を使って闘う』



 そこから二行空いて、



『通称:"ASSASSIN"』



 と、書かれていた。


「……こ……れ……」


 蒼太は、声を振り絞るように発した。


「……"ASSASSIN"を……、思い付いた人……?」


 その時───ドアの向こうから、ガタリと、物音がした。


 蒼太は自分でも驚くほど、ビクリと肩を揺らして、ドアを見た。


 父が居間を出て、寝室───の部屋の隣───にやって来る気配に気付くまで、多くの時間は要しなかった。


 蒼太は慌てて証明を消し、ノートを机の引き出しの奥にしまい込むと、ベッドの中に潜り込んだ。


 父の足音がすぐ近くに来て消えていくまでの間、蒼太の胸は、ドクドクとうるさいほどに鳴っていた。


 それからしばらく、蒼太の胸の鼓動がおさまることはなかった。


 『通称:"ASSASSIN"』


 その文字が、目の奥に張り付いて、離れなかった。

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