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76,敬語を外しましょう

ちょいシリアス……かな?

「どうどう、エルヴァン。OK? 静かに……シィーーー」


 まさか、ここまで驚くとは……


「静かにしていられるか!……いや、していられますか!」


 何故、急に敬語……?

 俺が貴族の一員だからか?

 そんなに貴族って、偉いのか?

 前世では、貴族制なんて日本では既に廃止されてたから、偉さってあんまりわかんないんだよね……転生してからは、周りは貴族ばっかりだったし。


「なあ、エルヴァン。貴族って、そんなに偉いのか?」


 確かに、少しの身分差はあるかもしれない。わざわざ平民と貴族は区別されているんだから。でも、そこまで堅くなるかな……? 最低限の礼儀は必要だろうけど。

 それに、エルヴァンは、人間じゃない。獣人だ。人間の法律には縛られないはずだけど……?


「な、なにを仰るのですか? 貴族とは、人々の上に立ち、人々を導き、人々を支配する方々のことです。人間族の平民は勿論、我々獣人族もその絶大な権力の前にはひれ伏さなければなりません」


 獣人族でもか……


 貴族とは、人々の上に立ち、人々を導き、人々を支配する方々のことです


 7年前に転生したとき、俺は誓った。


 貴族としての役目を果たそう。

 恵まれた家庭に転生できたのだから、その分、皆に恩返しをしよう。尊敬できる父親に、慈悲深い母親。いつも世話をしてくれている、メリル、セバス、ロバート。商品開発の相談に乗ってくれる、ラードン子爵家の方々。そして、生活を日々働いて支えてくれる、領民……

 まだまだ沢山の人のお世話になって、今俺はここにいる。

 その人達を、支配する……?

 何を言っているんだ。

 その人達がいなかったら、俺はとうの昔に死んでいる。

 言い換えれば、命の恩人である人達を、支配する……?



 冗談じゃない



 貴族は、人々に生活を支えられ、その代償として、領地を、王国を良くしていくべきだ。より多くの知識を身に着け、人々を正しい方向に導く。決して、貴族の浅はかな考えで、道を外れさせてはいけない。


 誰が最初に『貴族とは何か』を説いたのかは知らない。

 でも、今の世界は、間違っている。

 変えてやろう、この手で。

 この世界を。


「エルヴァン、敬語を外して。今は『Fランク冒険者見習い レオン』と『Fランク冒険者見習い エルヴァン』の時間だ。たとえ、ここがエルメント辺境伯家のシティハウスだとしても」


「え……しかし……」


「エルヴァン……(そうだよね。こんなこと言われても、困るよね。でも……) じゃあ、エルヴァン、これは、貴族としての命令だ。敬語を外せ」


 悲しいな。

 命令をしなきゃ、敬語を外してもらえない。ただの『レオン』と、ただの『エルヴァン』にはなれない。必ず、上下関係がついてしまう。


「……はい、わかりまし……おう、わかったよ。それが『レオン』の望みなら」

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