30,ローインズ領内を進もう!
「レオン〜、礼儀作法の復習よ。今回はガーデンパーティー編!」
アリアーヌ母さんは、時々礼儀作法を教えてくれたんだよね。
めっちゃ厳しかったよ。泣けてくるぐらい。
「レオン〜礼の角度が違うわよ!」
←5度ぐらいだよね!?
「レオン〜国王陛下への正式な挨拶をスラスラと言えるようにしましょうね。息継ぎもしちゃ駄目よ! ほら、お手本を見せてあげるから。『国王陛下、ご機嫌よろしゅう。 エルメント辺境伯家が正妻、アリアーヌ・フォン・エルメントと申します。国王陛下、お会いできて光栄で御座います。』(カーテシーをしたまま) レオン〜こんな感じよ。レオンは男の子だから、カーテシーはしなくて良いけど、手を胸にあてて、頭を深く下げるのよ。相手がどんなにおバカさんでもね。」
←あんなに長い挨拶、息継ぎ無しで言えるか!? 最後の言葉は……聞かなかったことにする。
「さて、第1問! 国王陛下への挨拶を言ってみて!」
今まさにその事を考えていたよ。息を最初に沢山吸収しておかないと。
「スゥー…国王陛下、ご機嫌よろしゅう。 エルメント辺境伯家が長男、レオン・フォン・エルメントと申します。国王陛下、お会いできて光栄で御座います。」
い、息が!
「最初の息を吸うのが長いけど、まあ良いでしょう。第2問! 作り笑顔を作って!」
これは得意なんだよね! 前世でめっちゃ作ってたし。
ニコッ!
ニコニコ!
ニコニコニコ!
ニコニコニコニコ!
ニコニコ…
「レオン、分かった。分かったわ。もう良いわ。上手よ。子供は素直が一番なのに…貴族の務めなの。ごめんね。」
前世は庶民でも、今世は貴族だ。
貴族の務めなら、作り笑顔でも、何でもするよ。税金を貰っている立場なのだから。
「お母様、大丈夫ですよ。私は…」
「当主様、奥様、レオン様、日が暮れてきましたので、ローインズ邸に泊めて頂きましょう。」
御者の声だ。
「では、私がお伝えしてきましょう。」
誰だろう?
「レオンとは初対面だな。紹介しよう。コイツはエルメント騎士団団長、イスハール・コロイムだ。」
エルメント騎士団団長……
エルメント騎士団って、エルメント家直属の騎士団だったよね? その団長さんだから……父さんの腹心か。
すごく優しそうな顔をしている……落ち着いた緑色の髪に、太陽の様な暖かそうなオレンジ色の瞳。父さんと同じぐらいの年齢かな?
「当主様……コイツとは酷いじゃありませんか。」
「お前には『コイツ』で十分だ。」
「『十分だ』って…」
「ほら、ローインズ邸に行ってきてくれるんだろ? 早く行ってこい!」
「扱い酷くない!?」
「ほらほら。」
「うわぁーーーー」
叫びながら馬で走って行った。
一見、イスハールさんの扱いが可哀想に思えるけど、俺は気付いたよ。
それが、アルフレッド父さんとイスハール団長の信頼と絆の元に成り立っているということに。
次の投稿は9月23日です。




