8話 打ち合わせ
食事会の後、もう一度話し合うこととなった。
「魔法使い組は魔法の指南することが決まって良かった。それに、戦闘組も兵士として雇ってくれることだし、生産組も工房に見習いとして行くことも決まったが、迷宮組はまだ決まり切っていない。だからまた集まって貰った」
王様は魔法組の持つスキルがこの世界には無い物だと言い、その知識を指南してくれる、戦闘組には兵士として雇うといっても治安維持などをやって貰いたいと言って、生産組には異世界の風を吹き込んでくれと言った。
だがしかし、迷宮組はより細かい話をするためもう一度集まって欲しいと言われた。
「集まってくれたな。じゃあ迷宮について話し合うとするか」
王様の横には食事会の時には居なかった人が居た。
「迷宮について知って貰う為、サーダに来て貰った。こいつは迷宮を攻略する上でのお前らの先輩だ。参考になる事が多いだろうから質問などするんだな」
「サーダ・エイダスと言う。どんどん質問してくれて構わない」
大きな声で笑うが、そこに威圧感などは無い。話す際には緊張もしない。だが彼もまた王様とは違うカリスマを持っていた。心を惹き付けられる何か、それは強さというのか、言葉で言い表すことが出来ない何か。
「あの、俺たちが知っている迷宮か確認したいんですが」
「ああそうか、そうだな世界が違えば勝手も変わるか。では迷宮について話す」
迷宮について語られていく。
迷宮と人類との歴史。
迷宮の罠。
迷宮の魔物、怪異、妖怪、異形。
迷宮の主、王、玉。
迷宮の進化、深化。
迷宮の危険さについて語られる。
つまり、迷宮は自然に生まれるか、魔術師がその知識を隠すために魔物を住まわせたもの、ドラゴンのような王に守護して貰う為付き従うことで出来たもの、等々出来た経緯を説明される。それらのことは僕たちの持っている知識とは相違ないため素直にそのことを伝える。
「では潜った経験は?」
誰も潜ったことはない。知識だけの世界。頭でっかちだと自分たちで思ってしまう。
「無いのか、まあそうかもしれないな」
少し思案して彼はまた口を開いた。
「迷宮は危険だからな。見たところ貴族のような身分に近い。だから迷宮に潜れなかった違うか?」
僕たちの世界について話す。それは魔法や迷宮が無いことや、戦ったことすらない人も居ることを。
エイダスさんは少し頭を抱える仕草をしたあと、少し席を空けると言って部屋から出て行った。
壁が何かに叩き付けられたのか、ドンと響くような音が聞こえてくる。扉に耳を当て聞き始めると何か言っている。
「どうして平和な世界の人間を喚んだ!こんな残酷な世界で、何も知らない若者を喚んで何が出来る!なんで神は子供を喚んだんだ」
そして泣き始めた。怒りと悲しみが籠もったような声で泣いている。
少しして泣き止んだのか、歩く音が聞こえてくるので席に戻ることにした。
僕が席に戻ったことで察したのかみんなも座り始める。
「済まない。では話に戻ろうか」
彼の目は少し潤んでいたが、表情は先程までとは違い覚悟を決めていた。
「では明日から訓練を付ける。迷宮に潜ると決めた君たちにしか付けない。そして最悪一人でも生きられるようにしていく」
彼は一息ついてから続けて言う。
「訓練は厳しいものとなる。それでも・・・いや迷宮に戻ると決めた覚悟はそこまで甘くはないか。明日から共に頑張ろう」
次の日から訓練は始まった。