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7話 食事会

 取り敢えず僕を含めた政則達5人組をスキルが勇者であることから勇者組と呼ばれる事になった。まあ、無難だとは思うが、なんだか少し恥ずかしい。

 そんなことは置いといて、僕達は昼食となった。


 料理が並べられた広間に案内され、長テーブルにさっきの会議のように座っていく。みんなが座った後に王様がやって来て座り、祈りを捧げた。


「命を食すことに感謝を。命を無駄にせず、自分の糧とし体となり生きられることを下さったジョフィー様に感謝を」


 自分たちがよく食べる前に言う頂きますに近いことを言っている祈りだと思った。だけどその言葉には、いただきますとは違った深みがあるように感じる。

 僕は、そしてクラスの何名から農家の子供だから都会よりも、食事について大事にしてるなんて考えていた、しかしそれよりも食の有り難みを込めているのだと感じた。


 頂きますと言っていいのか分からなかったので、感謝をと言って食べることにする。チラリと後ろに控えるナターリを見てみたが、特に何も言われなかった。

 それが正解なのか、関わりたくないからなのか分からないが、みんな僕の感謝と言ったのに追従するような形で告げて食べ始めた。


 料理は肉を焼いた物に塩やハーブで味付けがされている。そしてパンは雑穀の入った黒パンと言えば表現するしかない。日本の物よりも乾燥しているのか、それとも作り方が違うのかパサついている。

 パンを食べるのに苦戦していると王様はステーキと一緒に食べたりや、ステーキに残った肉汁やソースを付けて食べていたため、それを真似て食べた。

 食べ進める中で肉の旨みと一緒に油っぽさが口の中に広がっていくが、雑穀パンに入っている実が潰れて、レモンのような爽やかさが消してくれる。


 王様は食べ終わると皆が食べ終わるまで待った。その視線には品定めをしていることが分かるものだった。

 そしてみんなが食べ終わった頃、王様は口を開いた。


「そろそろ食べ終わった頃だろう。話をしようじゃないか」


 獰猛な笑みを浮かべてそう切りだした。


「俺の名前はアントン・ディーゼルだ、謁見の間では堅苦しくしなくちゃならなかったが、これが俺の素だ。お互い腹を割って話をしようじゃないか」


 みんなは王様の覇気に呑まれていた。これが国を民を導く存在。それらのことを僕たちは強く痛感させられていた。


「でだ、お前らの纏め役は誰だ?お前か、それともお前か?」


 政則と秀樹をそれぞれ指さして問いかける。だが纏め役なんて者は一人しか居ないが、異世界に来てまで彼がその役を務めなくてもいい。だって僕たちを縛っていた学校なんてもうここには無いのだから。


「俺が」


 政則が手を挙げる。元の世界では正義感はあまりなかったがそれがここで生まれたのか、それとも唯の委員長としての役目を果たそうとしているのか、僕には分からなかった。


「お前か、じゃあこれからの事について話そうじゃないか」


「はい」


「とりあえず、侍女長から聞いたが迷宮を攻略する事に関して話をしたそうじゃないか。それで、誰が行くんだ?」


「俺と」


「俺と」


「俺と、後は」


「私ね」


 迷宮に行くことにしていた政則に続いて残りの三人が自分だと示していく。

 アントン王はその四人をじっくりと見てから応える。


「ほう、四人か。後一人は欲しいがまあいいだろう。で、残りは何をするんだ?」


 政則は予想していなかった言葉だったのか、あ、と言葉を漏らしてしまう。

 だが一部の生産組や、回復組はこの国の役に立つということを示していく。しかしそれでも残ってしまうのは大半の戦闘組だった。


「残りの奴らはどうなんだ?兵士として雇えば良いのか?」


 兵士として雇う利点を挙げなければ僕たちは残れない。だけどスキルであれこれ出来るようになっているが、それはスキルで植え付けられた知識としてでしかない。それに僕はそう言った知識は自分が死なない理由などが分かるだけで、何かを作る事も、戦うにしても知識がないため意味が無い。


「一人で迷宮を潜ることはいいですか?」


 僕は死んでもいい。だがそこに誰かが居た場合その人も死んでしまうかもしれないから、そこは絶対に一人じゃないといけない。


「一人か、何で一人なんだ?迷宮を探索する予定の四人に加わればいいだろうが」


 僕は少し考えるが、ここで最初にみんなに嘘をついていたのが功を奏した。


「それは和成が狂戦士だからだよな」


 秀樹が僕の補助をしてくれる。


「狂戦士か、それなら仕方がないが、なぜわざわざ死にに?」


 死にに行くことと同じか。

 元の世界で目標もなくゲームをして自堕落に暮らして、そして今異世界にいる。誰かを助けたいって考えを抱いて警察官を目指したけど、漠然としすぎて採用もされなかったかもしれない。


「元の世界で僕ははっきり言って腐ってました。生きたまま自分は何も出来ないまま死んでいく感覚があって、それを改善しようにも出来ない現実に絶望して、死んでいく。そんな僕でもこの世界だったら何か目標を見つけられそうなんです。だけどそんな我が儘で誰かに迷惑を掛けたくないので一人で行きたいんです」


 なかなか纏められない。話が通じたのかさえ怪しい。


「なるほど、つまり我が儘から一人で生きたいと」


「そう・・・ですね」


 我が儘を通すことをこの人は許してくれるか分からない。だけど返答がくるまで時間が掛かると思っていたが、直ぐに答えは返ってきた。


「まあいいだろう。その変わり本当に一人で探索することになるがいいか?」


「はい」


「そこまで覚悟が出来ているんなら良いだろう。じゃあ他にはいるか?」


 僕以外に探索しに行こうとするのは数人だけだった。後の残りは兵士として活躍していくようだった。

 そして、食事会は終わった。

 4話と5話の題名が間違っていたため修正致しました。

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