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6話 会議

 秀樹は侍女にみんなが集まれるような部屋を用意して貰って、部屋を回って一人ずつ呼んでいった。

 みんなが集められた部屋は教室よりも大きく、長方形型の長いテーブルが一つと沢山の椅子があったが、侍女達が余分な椅子は何処かへと仕舞いに行っていた。


「こちらへ」


 古い映画で見るようなレストランの対応といった形で椅子を進められた後、僕は座った。

 一人、また一人とやって来ては、その順番で椅子に座っていく。

 それぞれ隣の人や近くの友達と話していたが、最後の一人が椅子に座った所で秀樹が言葉を発したことで、騒がしさはなりを潜める。


「えっと、まずこれから先について話そうかと思ってます」


 秀樹は少し緊張した面持ちで話を進めていく。学校での発表の際にも彼は固くなるが、僕の方は彼よりも酷い。だからこそ、彼には申し訳ないが進行してもらっている。


 そういえばこの場で彼はこの世界の言葉で話を進めている、しかし誰も気にした様子は見せてはいない。やはりスキルの中に違和感を無くすような力が含まれているのかもしれない。まあ、それか知識を植え付けられたから、それで違和感が無いだけかもしれないが。

 違和感に気付いたからなのか、他の人よりも気になってしまった。


「ラノベとかそういうのを見ていた人には分かると思うけど、召喚されたなら戦わないと消される可能性があることを念頭に置いて欲しい」


 そのことを聞いてそうだよなと納得する者や、その可能性があることに顔を青ざめている人が居る。


 よくあるテンプレだと、無能だと分かって追放、死にそうになって覚醒なんてご都合主義が流行っていたなと、ふと思い出す。彼はそのことを言っているのだろう。


「だけどその前に戦える人と戦えない人、つまり戦闘組と生産組に分かれる必要があると思う」


 そうだよな、その方が効率的だ。わざわざ戦えない人を戦わせるなんて危険が多いため、もしもの事故が発生したらそれは死ぬことかもしれない。そういった面では効率的だと思った。

 だけど、生産組もレベルを上げないとまともな物が作れない可能性があるかもしれない。一部のゲームだと、生産だけではやっていけないなんてあったし、ここで分けておいて後からレベリングをするのもいいかもしれない。

 まあ、でもこの世界はスキル制の世界みたいだからレベリングは意味無いかもしれない。


「みんな知っての通りステータスでスキルを確認出来る、そこで自分がどちらに当てはまるかを手を挙げて教えて欲しい。じゃあ五分後に」


 秀樹は時計を確認しながら待つ。

 僕は戦闘組に入るとして、上手くやって行けるだろうか。不死性だけで戦ったいけるなら、人海戦術でとうに迷宮なんて攻略されているだろうし、僕の立場は微妙だな。


 そういえば、回復職とかはどうなんだろう。龍の試練なんかは僧侶が冒険に付いて来てはいたが、それを医者ように置き換えるとしたら、生産組としても扱える。


「ちょっと待って」


 僕は慌てて声を出して思案時間を一時中断させる。心臓が締め付けられ鼓動が早くなるが、嫌いな先生も決められた文章を言わなければ無い訳でもない。そう自分に言い聞かせたあと、落ち着いてみんなに向けて言う。


「回復系のスキルを持っている場合の扱いはどうする?」


 もしかしたら、無意味な質問だったかもしれない。わざわざ話す必要もなかったかもしれない。

 僕よりも頭のいい秀樹なら、回復職についても考えていたのかもしれない。

 そんなかもしれないを考えて少し、憂鬱になっていく。


「そうだな、すっかり忘れてた。えっと、じゃあ回復組を新しく作る形で、あと二分後に」


 どうやら僕が考えていたかもしれないの心配は杞憂に終わったみたいだ。少しホッとしながら、あと2分で自分の嘘を固める。


 そういえば回復系のスキルはダンジョンの攻略の上で必要だろう。もし怪我をした時に即時復帰が出来るかもしれないし、死ににくくなる。


「時間になりました。戦闘組は手を挙げて」


 クラスの半分より少し多いくらいが手を挙げる。


「次に生産組」


 数人を残して手が上がる。


「最後に回復組」


 最後の数人が手を挙げる。

 これでこのクラスの構成が分かった。回復組が少なかったが予想よりも多かった。いや、これが普通なのか?

 さて、秀樹はこの結果からどうするんだ?


「じゃあ次に戦闘組の中にいる魔法使いは手を挙げて」


 魔法使いが手を上げると戦闘組の中に居るうちの三分の一が魔法使いだと分かった。


「それぞれ分かれて話し合おうか」


 そうして分かれて話し合うこととなった。だが、みんな同じクラスな上、知り合い同士であったためオタクだと軽蔑することもないため気さくに話し合う。

 自分のスキルは何々だ。

 こんな感じのスキルだからこの武器が使える。

 そんな風に出来ることを話す。まあ、知識だけなので、実際に動く際には少し違うかもしれないが、気にせず楽しげに話していた。


「じゃあちょっと話を止めて、次に迷宮を攻略する事について話をしたいと思う」


 秀樹は迷宮での危険性を挙げた上で参加したいかどうかを募った。

 迷宮で魔物と戦うこと、罠で危険な目に遇うこと、体の一部を失うか、最悪死ぬこと。そのどれもがその可能性があるということを伝えた上で秀樹はみんなに問うた。


「迷宮を攻略する者を募る」


 クラスのみんなは少し暗い顔をしながら顔を見合わせる。誰が手を挙げるか、自分は危険な目に遇いたくないなど、クラスの空気の粘度が高まり、息苦しさを感じる。


「じゃあ、僕が」


 委員長の政則が正義感のためか立候補する。それか、責任感が強いから挙手したのかもしれない。


「政則・・・」


 誰かが政則の名前を呼んだ。その声はみんなが声を潜めたためによく聞こえた。


「俺も行く」


「私も」


「俺も」


 誰にも死んで欲しくないと、心の中で強く思った。これはただのエゴなのかもしれない。いや、ただのエゴだ。誰かが死ぬくらいなら自分が死んでしまおうなんて、馬鹿げた自己犠牲だ。

 そんなことを思った。


「僕も」


 1拍空いた後、僕も手を上げる。秀樹は少し驚いた顔をしたが、僕の顔を見たあと、僕の覚悟を受け取ったのか何も言わなかった。


 クラスメイト二六人中の政則を含め五人。

 勇者を務める政則。

 回復を務める鈴音。

 召喚師で補助を行う秀樹。

 盾役を務める鉄哉。

 そして、狂戦士の僕。

 この五人でダンジョンを攻略する事となった。

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