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4話 謁見

 玉座に座ってこちらを見ているのはやはり王様だった。

 そういえば簡単に身分の差を表現する場合は相手が上に立つことで偉いと見せられるらしい。だからこそ玉座の部分が他よりも高くなっているのはそういった意味があるのかもしれない。


 王様を無礼に当たるとは知ってはいたが、視線を王様へと向けて記憶する。

 こういった召喚ものの展開だと出てくるのは太ったりした王様が傲慢そうな顔で出迎えるだったりすると聞くのだが、この王様の場合は筋肉質で着ている服は―――――


「これより、殿下との謁見を開始する!」


 考えてる途中で始まってしまった。

王様の隣の文官であろうか、それとも宰相というのか、名称は分からないため宰相と仮称で呼ぶ。その宰相の突然の始まりを告げる声に少し驚いてしまった。



 異世界召喚の際に、神様が遣わした存在である使徒であったり、はたまた英雄だったりなんてあるが、僕達はなんだろう?


「朕の召喚に応じたようであるな」


 召喚して欲しいと思ったのはクラスの少数だろう、もしくはいなかったかもしれない。

 その発言から自分の存在価値が揺るがないと思っているのかもしれない。


「そち達には地下迷宮を探索し攻略せよ」


 迷宮とはダンジョンの事だろうか。ダンジョンには金銀財宝が眠っているなんてゲームの様なことが異世界にあるのか。


「これにて殿下との謁見を終わる!」


 そういえば跪けとかは言われなかった。まあ、みんなして、正座から片足を1歩前に出した姿勢でいいと言われたら、それで大丈夫だったのだろう。

 それにしても、この姿勢ってなんて呼ぶんだったか。


 そんなふうに考えていたが、この後に食事会を開くとのことだ。みんなして着いていくため、僕もそれにならう。


「それでは皆さん付いてきてください」


 その声に従って先頭の人に着いていく。

 だが僕たちの後ろに侍女達が居ることが気になる。

それなりに人数が多いから少し驚いたのもあるが、僕達へのお付だろうかなんて考える。


「それぞれ皆さんには部屋をあてがっています。そして何か困ったことがありましたら後ろの侍女達に御申しつけ下さい。出来る範囲でしたらその願いを叶えますので」


 騎士の人は"では、後は侍女達から説明を受けて下さい"と残してこの場を去っていった。


「私は、侍女長のマリーと申します」


 マリーと名乗った彼女は頭を深々と下げる。青髪の綺麗な人でその表情は感情を出さずに僕たちに接している。


「皆様は異世界からいらっしゃったとのことで、マナーや歴史、宗教などについて学んで頂きたいと考えております」


 クラスからは魔法であったり、剣について学べると思っていたのか残念な声が上がってくる。だが、侍女長はそれを気にした様子はなく、続けて言う。


「そして、貴方方には戦う術を学んで頂きます」


 何故なら、と付け加えて少し声が低くなりながらも説明をする。


「貴方方異世界人は稀少であると同時に爆弾であるからです」


 その言葉を僕らは望んでいなかった。ラノベのような主人公でいたいからだ。

 爆弾という言葉でクラスの雰囲気が重くなっていくのがヒシヒシと感じる。


「人々は英雄を望みました 。この世界を救ってくれる、苦しみから解放されるような英雄を。その結果が貴方方異世界人を召喚してしまった」


 民には望まれ、王には望まれていなかったと暗に言っているのか?


「貴方方には力が宿っている。それなのにその力は不安定であり、何が原因で爆発するか分からない爆弾です。どうかそのことをしっかりと念頭に置いて下さい」


 何故ダンジョンを攻略しなければならないのか。

 何故僕たちの立場がよく分からなかったのか。

 何故異世界に召喚されたのか。

 その何故が繋がったような気がした。


 ああ、僕たちは爆弾だなと納得する。

彼等も扱いづらいからこそ、身分の差を表しすぎないようにや、迷宮の攻略という形で処理したいのかもしれない。


 そんな考えに至ってしまって、憂鬱になる。


 僕は死なないとスキルで、いや文字だけで証明されている。それが本当なのかは今のところ分からない。だけど、みんなの代わりに自分が死んでどうにか救えないかと独りよがりな考えをししてしまう。そんな考えの自分が愚かに思えてくる。


 そんなことを考えても時間は残酷にも進んでいく。


「それでは、部屋へ案内致します」


 僕たちはそれぞれに割り振られた部屋に案内される。だけど、先程の爆弾という言葉のせいでみんなの表情は暗くあまり会話が無いままで部屋に入っていく。


「貴方にお付き致します侍女のナターリです。何かご用がありましたら部屋に供えているベルを鳴らして下さい。それとあなた様のお名前をお伺いしたいのですがよろしいでしょうか」


「よろしくナターリ。僕の名前は啓太だ。よろしく」


「こちらこそよろしくお願いします」


 それでは、とナターリは部屋から出て行く。

機械的、もしくはマニュアル的と言えばいいのか。そんなな対応に仕方がないとは思うが、美人にこうされてしまうと寂しく思う。



 部屋の中はベットとクローゼット、そして化粧台に椅子、窓の近くにはテーブルと化粧台とは別の椅子が置いてある。

日常生活するには十分だなんて思う。


 ベルを鳴らすことにする。

 とりあえずみんなと話し合った方が良いだろう。そう思ってしまったからには自分から行動しなくてはならないだろう。はあ、まったく憂鬱だ。


「秀樹、ええと眼鏡を掛けた髪がこのくらい短めの男の部屋って分かる?僕と同じくらい大きさなんだけど」


 とりあえず秀樹に相談した上で話をしておくか。あいつはまあ真面目だからクラス内での発言力もあるし、異世界系のことも少しは分かっているから話も通じやすいだろう。


「はい、秀樹様ですねこちらの方になります」


 そして僕は秀樹の元に案内されるのだった。

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