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3話 パレード

 みんなは馬車の窓から笑顔で手を振っている。

 民衆はそれを見て大声を上げて僕らを輝いた目で見ている。その姿を見て、ああ、彼等の希望としてこの場に居るのだと嫌に成る程感じられる。


 テレビで見たようなオリンピック選手への歓待のようだと思いながら、馬車は進んでいく。

 パレードの最中、ラッパのような楽器であったり、ドラムのような楽器であったり、地球の頃に見たことがある物から見たことのない楽器で演奏されている。

 太鼓は神様に届ける為に奏でると古典の授業の時に聞いたことがあった。そのためこれらの演奏は神様に届けるための演奏なのかもしれない。なんて、作り笑顔をしながら考えていた。


 しかし、この翻訳機能はどうなっているのだろうか。いやそれとも知識が植え付けられたのか。どっちなのか分からないが異世界の言語が日本語のように理解できる。だからこそ、僕たちが希望として見られているのが言葉でも分かる。


 ああ、憂鬱だ。多分民衆は僕たちのことを神の遣いだどうかと思って居るのだろう。何故なら救世主だなんて言葉が聞こえてくる。もしかしたら、そういったお触れが彼等には伝えられているのかもしれない。

 僕からしたらその事は重荷になるため、憂鬱になる。


 二つ目の城壁の門を通りすぎる。


 城の全容が見えてきた。また、民衆の服装なども先程よりも質の良い物を身につけていることも分かる。

そういえば中世は排泄物で匂いがきついなんてことを聞いたことがあるがそこまで気にするほどでは無いようだ。

 昔の日本のように糞を肥料にしているのか、それとも川に流しているのか。それとも、魔法て焼いてしまっているのか。


 しかし、長いな。

 手を振るのも疲れてきた。みんなも疲れてきたのか、少し肩を回していたり手を振るのを少し止めていた。

 

 手を振るのに辟易していた頃、やっと城へと到着した。

 城の門はカラクリ橋と呼べばいいのか、レインボーブリッジのような変形する橋で、重い音を鳴らしながら開き始める。

 その姿を見て、王様と対談するのかと改めて理解した。




 王城は山をくり抜いて出来ているのか、ぱっと見は天然要塞と言い表した方がいいかもしれない。

 材質は石灰岩のような柔らかいのを削ったのではなく、少し白みがかった石。日本で見るような大理石のように磨かれてはいるが、頑丈そうだということしか分からない。

 内部の方は遠目で見ても分かるような模様が彫られている。動物をモチーフにしたと思われるレリーフが彫られている。


「しばし待たれよ!これより謁見の場を設ける!」


 召喚された場所に居た騎士らしき人が僕たちに向けてそう言った。


 どうやら少し待たなくてはならないみたいだ。

 話すことが非常に憂鬱だが、クラスの方で少し話しておいた方がいいかもしれない。今後の方針なんかも決めた方が後々役に立つからだと思ったからだ。


「ちょっとみんなで話し合った方が良いんじゃないかな?」


 非常に憂鬱だが、僕がみんなで話す切っ掛けを作る事にする。

 そしてみんなは口を開き始め、口々に話し始める。その声は徐々に大きくなっていったため、怒られるかもしれないからなんて、付け加えて少し声を抑えてもらった。


 みんなが先ず話をしていることは、自分達に与えられたスキルについてだった。どんなスキルが与えられた、どんな効果があるかや、誰のスキルが一番のチートなのかなんて話にまで発展している。


 僕は自分のスキルを話そうか悩んでいた。

 不老不死なんて馬鹿げたスキルを話しても信じてくれないだろうし、適当に嘘をつくか。いやでも、看破とか、鑑定なんてもので見られてしまったらどうしようかと、心の中で悩む。

 幸い、あまり口数の多くなかった僕は黙ったままでもそこまで怪しまれなかったため、考える時間はあった。


 そんなふうに思考に耽っていると、あの騎士が戻ってきた。そして謁見の準備が出来たことを僕たちに宣言するのだった。


 ああ、異世界に来るんじゃなかった。来てもよかったが、せめて、普通のスキルが欲しかった。誰だよこんなスキルを与えたのは。誰だよ異世界召喚をしようとした馬鹿は。


 罵詈雑言が心の中で誰とも分からない相手へと向けてマシンガンのように発射していく。

 

 はあ、憂鬱だ。

 空気となって巻き込まれないようにモブと化してすごそうか。それとも、クラスメイトを纏めて誤魔化す・・・うーん、僕には無理だな。モブになっていよう。モブで誤魔化して、でもモブ過ぎない程度のモブでいよう。

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