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21話 帰宅

 ジョヒーと少し話をした後、僕は剣の指南を受けた。

簡単な手解きと、癖を直すくらいではあったが、それでも体の無駄な力が無くなり、風を着る音が変わる程には良くなった。


 だがジョヒーにとってはまだまだ満足しないものらしかったが、一先ず帰るために指南は一時中断として、帰ることになった。


 扉を抜け、石畳の通路を超え、平原に出た。

一面に広がる草原と言った方が正しいかもしれない。

サバンナのような短い草が茂っているのではなく、丈の長い草が膝には達しない辺りまで伸びている。

木は密集せず、点々と生えているのがよく見える。


「こっちの道でよかったんですか」


 足跡通りに帰れば城へと戻ることが出来たということを知って少し愚痴のような形で言ってしまうが仕方ない。

まあ、自分から動けば1週間も待たされることは無かったが、自分は心配性なのだ。

もし間違えていたら帰れなくなるかもなんて考えてしまって動くに動けなかった。


「草原の階層が追加されたが、その様子だと先に来ておったようだの」


「はい、先に来てました。足跡が残っていたので、辿ってみたらここに出ました」


「そのまま扉を探して居れば直ぐに帰れたのにの」


 カタカタと骨がぶつかり合う音が聞こえてくる。

多分この笑い方は茶化していると思う。


「そんなことはいいですから、早く帰りましょ!」


 話を逸らしたくて、そういった。

少しカタカタと鳴らしたあと、直ぐに歩き出した。


「そういえば竜が出たと聞いておったが、歩いている間に竜の話でもするかの」


 竜または龍。

生まれた時から神である存在や、ジョヒーのように人から神になった存在と同格に進化した生き物の総称。

僕はそうまでしか学んでいなかった。


「竜とは迷宮の生物が殺し、喰らう中で生まれる。ルフレスカ・ヘミュン・ゴリュドはそうして生まれた」


「あ、竜と龍の違いってなんですか?」


「竜と龍の違いかの。それは畏怖や信仰を得ることによる違いとしか言えぬ」


「え、でもそれだけなんですか?」


「それだけとは言い表せぬわ。信仰や畏怖は神性を得る為の糧となる。神性を得れば神性を削るまでは傷付けられぬ」


「え、、、、」


 傷付けられぬと今言ったけど、それじゃあ倒すことなんて出来ないということなのか?

いや、削れば傷付けられると言っていたから、削る方法があるのか。


「神性で神性を剥がせばよい。または魔力で傷付けて行けばやがて剥がれる」


「剥がし方ってどうするんです?」


「殴り合いやら、斬り合い、魔法を放ち合うなど、互いにぶつかり合うことで削れる。その際に、両者共に削られる」


「じゃあ相打ちなんてあるんですか?」


「中には居るな」


 相打ちなんてことになるのか。

もしそうなったら信仰の対象が消えてしまうのに、消えたら信徒達はどうしてるのか?


「神が消えたら信徒はどうするんですか?」


「その時は別の神を祈るだけだ。神は信仰を強要しない。しても意味が無いからな」


 中には寿命を伸ばす為に強要するものもいるがの、そういったものは他の神に目をつけられ滅ぼされることが多いとジョヒーは付け加えた。


「そんな簡単に区切りを付けることが出来るんですか?」


「出来ない奴が大半であろうな」


 カタカタカタと骨を鳴らす笑い声が響いてくる。


「だが、いずれ区切りはいずれ付けなくてはならぬ。何時までも神に縋ってばかりいては、親元を離れぬ子と変わらぬでは無いか」


「・・・」


「無責任だとは思われても仕方がないが、人には乗り越える力がある。それは一人では乗り越えられなくとも、協力することで乗り越えることも出来る。だから、儂は見守れるだけ見守りたいが、死んだ時は仕方が無いと思って死ぬ」


「そう、ですか」


 協力すれば乗り越えられる、か。

迷宮を一人で探索しようと思っていたけど、誰かと協力してみるのもいいかもしれない。


「神が死ぬことなんて他の神と戦うか竜や、龍と戦わぬ限りそうそう無い」


「そうですよね」


 なんだか、一瞬彼が死んでしまう、というよりは消えてしまったことを考えてしまった。


「そういえばな、お主は誰かと協力するべきだ。一人だけでは抱えきれず、いずれその重みに潰されるぞ」


「はい」


 重みに潰される。

なんだかその事についてあまり実感がわかない。

でも、一人で探索しようとしていたから、その事について言っているのかもしれない。


「そういえば、お主は"魔王"と言う言葉の意味をしっておるか?」


「ああ、はい。まあそれとなくには」


「そうか」


「なんで、魔王の話が出てくるんですか?この世界にいるんですか?」


 魔王というキーワードに気になってしまい、矢継ぎ早に聞いてしまう。


「この先、出る可能性があるというだけだ。今は気にするでない」


 気にするなと言われても気になってしまう。

それに魔王という言葉も新しく出来た呼び名な気がしてしまう。

未来をまた見たのか。

そう納得する。


「さて、そろそろ出口に着く。お主は先に行っておれ」


「え、一緒じゃないんですか?」


「制約があっての、あまり、迷宮の外には出られないのだ」


「そうなんですか」


 神様は神様で苦労しているのだなと思いながら扉を潜る。迷宮の罠などは深化に伴ってか今は無くなっているため、安全に帰ることが出来た。


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