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第弍話 魔王城に魔王降臨

舐めてた。

2作品同時進行を舐めてた。

それはさておき、とりあえず伍話までは多分魔界を拠点に話を進めて行きます。

「よっと」

 ここが魔王城かのぉ。中々、大きいのぉ。小さい頃はお城に住みたいと言っていたがまさかこの歳になって叶うとはのぉ。

「それよりその辺を散歩でもするかのぉ」

 鈴木は魔王城の敷地内をのんびりと散歩していた。五分程歩いた所には、開けた場所があり、そこには色取りな薔薇が咲き誇っていた。

「これは薔薇園じゃな」

 異世界にも薔薇があるのじゃな。うむ、中々良い薔薇じゃ。

「だれ?そこにいるの?」

 鈴木が関心しながら薔薇園を眺めていると、近くの草むらから人の耳の代わりに猫の耳をした、それ以外は普通の、小さな子供が出てきた。いや、よく見ると猫の尻尾もある。

「儂は新しい魔王じゃよ」

 鈴木はそう言いながら目の前の子供の頭を撫でた。

「魔王様なの?」

 子供は不思議そうに鈴木を見て言った。

「様は要らんよ。儂の事はそうじゃのぉ、近所のおじいちゃんとでも思ってくれい」

 小さい子供に様付けされるのは、あまりいい気分でも無いからのぉ。

「……変」

「ん?何がじゃ?」

 異世界では様付けで呼ばせるのが常識なのかのぉ?

「だいたい、魔王は偉そうにしてた」

「ほっほっほ、儂は変わり者じゃからのぉ。そう難しくは考えんでもいい」

「……解った」

「ところでお主の名前は何と言うんじゃい?」

「僕はバアル。序列1位の魔王代理。魔王が居るときは、暇だからここ(薔薇園)の管理をしてる」

「小さいのに偉いのぉ」

 鈴木は見事な薔薇園の管理に驚嘆し、バアルの頭を撫でた。

「……えへへ」

 するとバアルが少し笑った。そしてふと尻尾を見ると左右に揺れていた。

「それじゃあ、すまんがバアルさんや。この辺を案内してくれんかのぉ」

「ん。解った」

 バアルはそう言うと鈴木の手を握り魔王城周辺を案内し始めた。

「ここが城下町。魔界で一番、賑やかな場所」

「ほっほっほ、確かに賑やかじゃのぉ」

 昔はこんな光景はしょっちゅう見とったが最近はさっぱりじゃったから懐かしいのぉ。

「おや、バアル様ではありませんか。いかがです、暴黒熊(ブラックベアー)の串焼きなどは」

 バアルが鈴木を案内していると屋台の角が生えた鬼のような見た目をしている男性がバアルに気づき、串焼きを進めてきた。

「それじゃあ二本」

「はい、焼きたてですよ」

 店主はそう言い、先程まで焼いていた串焼きを二人に手渡す。

「むぐむぐむぐ」

「これは美味しいのぉ」

 バアルと鈴木は今焼けたばかりの串焼きを食べる。店構えは何処かの屋台のようだが、中々美味だ。二人とも串焼きを堪能している。少なくとも鈴木は屋台で、これほど美味な串焼きには出会った事は無い。

「ところで、バアル様、そちらの方は?」

 鬼(本物)店主は自分達の実質的な王の側にいる、見た事が無い人物が誰か気になりバアルに訊ねた。

「ん?おじいちゃん」

「おじいちゃん?」

「ん、魔王」」

「ほぉ、魔王様でしたか」

「おや、意外と驚かんのじゃな」

 鈴木の疑問に鬼店主は軽く笑いながら答えた。

「はっはっは。1000年前なら驚いたでしょうが、今はバアル様が居ますから。余り横暴な魔王はバアル様に折檻(せっかん)されてしまいますよ。それに、歴代の魔王様には、この様な屋台が好きな方もいらっしゃったので、余り驚きません」

「ほっほっほ、儂もバアルに消されんように、気を付けるかのぉ。まぁ、魔王と言っても今までバアルが魔王をやってたのじゃろ?それならば、このままバアルさんにやってもらうわい」

 鈴木はそう言いながら串焼きを食べ終えた。

「ん?良いの?」

「勿論バアルさんが嫌なら代わりの者にやらすがのぉ」

「うーん。魔王よりあそこ(薔薇園)にいた方が楽しいからいい。それに、魔王にも仕事があるから、めんどう」

「ほっほっほ、それもそうじゃな」

 鈴木はそう言うとバアルの頭を撫でる。

「ん、これ好き」

 バアルはそう言いながら自分の頭を撫でている鈴木の手の上に自分の両手を置いた。

「ん?そうかい?それなら暫くやっていようかのぉ」

 鈴木はバアルの行動に微笑みながら撫でるのを続けた。

 その光景を見た周囲は大変、微笑ましい眼差しをしている。

「しかし、ここまでバアル様に懐かれる魔王様珍はしいですな」

 すると鬼店主は目の前の光景に微笑みながら言った。

「そうかのぉ?」

「えぇ、バアル様は少し人見知りなところがありますから」

「成程のぉ。ところでお主の名前は何と言うんじゃ?」

「おや、これまた珍しい。歴代の魔王様で一庶民の名前を訊いた魔王は殆ど居ませんでしたよ。私の名前はゴヴァルです。見ての通りしがない鬼神です」

「ゴヴァルか。いい名前じゃのぉ」

「光栄です」

「ん、しがない、違う。昔、鬼教官で有名だったし、けっこう上の階級だった」

「昔の話ですよ」

「ほっほっほ。それにしても鬼神とは珍しいのぉ」

 鬼神キジンとは大鬼(オーガ)の上位種族。ユピテル曰く、大鬼(オーガ)から鬼神(キジン)が産まれてくる事は稀にあるのだが、その強すぎる力を制御し切れず、そのまま自滅する事が多いらしい。

「まぁ、運が良かっただけです。それよりどうです?もう一本」

「いや、止めておくわい。まだこれからバアルさんに色々と案内をしてもらうからんのぉ」

「はっはっはっ、そうですか。それではまた」

「それじゃあの」

 鈴木がそう言うとバアルは鈴木の手を引っ張り、別の場所を案内する。

「ここが闘技場。アスモデが管理してる」

「闘技場のぉ」

「時々、ここで大会がある」

 バアルが闘技場の説明をしていると闘技場の中から180cmはあるだろう高身長の細身の男性が現れた。

「バアルさんですか。珍しいですね、ここへ来るのは」

 その男性をよく見ると右眼は赤く、左眼は青のオッドアイだった。そして頭には山羊の様な立派な角が2本あった。

「おじいちゃんの案内」

 バアルはそう言うと若干のドヤ顔をした。

 ほっほっほ、可愛らしいのぉ。やはり子供は良いものじゃのぉ。孫ができたみたいじゃ。

 ちなみに余談だが、鈴木は子供と言っているがバアルはその見た目に反し、魔族の中でも古株でウン万年は生きている。ただ、性質は子供なのでとても可愛らしい。

「……その方、魔王様ですよね?」

 流石、魔界の闘技場を管理する魔族。鈴木を見て一発で魔王と見抜いた。

「ほっほっほ、一応のぉ。ところでアスモデさんや」

「何でしょうか?」

 アスモデは特に警戒も何もしていなかった。アスモデは闘技場の管理者である。今まで様々な魔族を見ている。そして、アスモデは目の前の魔王がとても温厚な性格な事は鈴木と鈴木の側にいるバアルを見て分かっていた。

「お主を魔王やらんか?」

「…………は?」

 と言っても、警戒していなかった分、この驚きは凄まじかった。魔界、しかも魔王城の城下町の闘技場の管理者と言えばかなりの地位と力を持っている。単純な実力だけで言えば、魔王直属の72人の部下にも引けを取らない。しかし鈴木が今言った内容は、大企業の社長がいきなり社員に「お前、社長やらね?」と言っているに等しい。最早、(たち)の悪いドッキリレベルである。

「……申し訳ありませんが、私は闘技場の管理が似合っております」

 アスモデはそう言いながら深く頭を下げた。

「ほっほっほ、別に構わんよ。それじゃあ誰か適任はおらんかのぉ」

「そうですね。それならザガンはどうでしょう?」

「ん、名案」

 バアルはアスモデの提案に小さく頷き肯定した。

「ザガン?」

「まぁ、一言で言えば脳筋ですかね。序列61で近衛隊の隊長です。単純な腕力ならば、バアルさん並みの力がありますが、単純思考なので何時(いつ)も負けていますね」

「ん、それにザガンは全力で戦うと敵味方お構い無し」

「ちょっと心配な部分も無きにしも非ずじゃが、二人がそう言うなら魔王の仕事はバアルとやらに任せることにしようかのぉ」

 鈴木がそう言うと同時に魔王城の方から謎の爆発音とともに大きく砂埃が舞った。

「おや、噂をすれば」

「あれがザガン」

 バアルはそう言うと空中に浮かぶ影を指差した。鈴木はバアルが指差した方を見ると大きな二翼がある男がいた。

 余談だが鈴木は別に眼が悪い訳では無いが魔王になったおかげでその視力は異常に上がっている。

「いつもは部下の指導係をしてる」

「ホッホッホ、それじゃあ今はその部下の指導中か」

「ん、そう。だけど……」

 バアルが何かを言おうとした時、ザガンがこちらに気づき猛スピードで飛んで来た。

「おっと、危ないのぉ」

 鈴木はそう言うとあわや衝突と言った所で杖の持ち手を素早くザガンの手首に引っ掛け地面に叩きつけ背中に自分の膝を押し当てた。

「お見事」

「ん、凄い」

 ほっほっほ。魔王になったお陰か、身体がよく動くわい。

「誰だよ!お前!」

 すると、抑えられたザガンが荒い鼻息をしながら鈴木の抑え込みから抜け出そうとする。

「力が強いのぉ」

 鈴木はそう言いながら杖で引っ掛けていた手首をザガンの背中に回し捻った。

「あだだだだだ!!!や、やめろ!つーかお前誰だよ!」

「儂か?儂は唯の魔王じゃよ」

「へぇー魔王…………はぁ!?」

 ザガンは鈴木の軽口に思わず納得しかけたが何とか引き戻した。

「ところでお主」

「なんだよ!ていうか放せよ!」

「魔王(の仕事)やらんか?」

「やる!」

 即答だった。

「ところで、おじいちゃん。ぼくのことは、よびすてでいいよ」

「ん?そうかい?なら、そうするかのぉ」

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