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十八




それは突然の襲撃だった。

真夜中に爆音と地響きが轟き飛び起きると、焦げ臭さが漂ってくる。


(火事?!)


慌てて廊下に飛び出ると、タケヤとキリトとケイキも寝間着のまま出て来ていた。

私達は宿所の1番奥に部屋があったので、必然的に4人が顔を合わせる。


「ミズキとタケヤさんは部屋に居ろ!俺達が様子を見てくる!」


キリト達は黒煙が漂う中を走っていく。

不安を煽るように喧騒は一般隊員達の方から聞こえてくる。

と、突然の剣戟が響いて、キリトとハルマの声がした。


「何だよコイツ等!」

「ハルマ!大丈夫か!」


何が起きてるのだろうか?

廊下の様子が気になるが、キリトの言う通り私は暗い部屋でジッと堪えていた時だった。

乱暴に扉が開かれる。


(誰?!)


3人の人影が見えるが、顔までは判別できない。

開け放たれた扉から覗く廊下に炎の微かな明かりが見え、それに反射する抜き身の剣。

外の剣戟音は更に激しさを増し、大人数での斬り合いが行われてるようだった。

ジリジリと迫る人影から逃げる度に部屋の隅に追い込まれて行く。

侵入して来た煙に咽た時だった。1人に足を掴まれる。


(仲間じゃない!)


咄嗟に足をバタつかせて振り解くが、また別の腕が伸びてくる。

3人に追い込まれてとうとう捕まった私の胸を乱暴に掴む手があった。


「居たぞ!コイツだ!」


今は寝間着でさらしは巻いていない。この男達は明らかに"女"を探していたのだ。

私はその手を払って胸を隠すが、別の男によって腹部に強か拳を叩き込まれて、そのまま意識を手放してしまった。


[キリト目線]


「侵入者は数十は居るぞ!ケイキさんは半数を連れて火を消してくれ!残りは賊をたたっ斬れ!!」


最初の1人はハルマと共に斬り伏せたが、煙の勢いで数人に踏み込まれてしまった。

斬った男の剣を見ると、幅の広い刃が大きく反り返っている。

アギのそれと特徴が似ていた。


(狙いはミズキか!)


あちこちで剣を交える音が響く中ミズキの部屋へ向かうと、タケヤさんが1人と斬り結んでいた。

その向こうにミズキを抱えた男とそれを護る男。


「キリト!ミズキを護れ!」


すかさず手隙の1人が立ち向かって来る。その隙にミズキを連れ去る算段のようだが、逃げるその脚を誰かが斬りつけた。

男はミズキを床に落として転げ回っている。

煙の向こうから現れたのはクタニだった。


「クタニ!」

「キリトさん、しっかりしてよ。危ない所だったじゃない」


そしてこともなげに転がる男の首に剣を突き立てると、ミズキを抱え上げる。

丁度、タケヤさんも俺と同時にトドメを刺した。

クタニは布団にミズキを寝かせると、そっと頭を撫でる。

その行為が酷く俺を苛つかせた。


「クタニ、まだ賊は居るぞ!気ぃ抜いてんじゃねぇ!」

「誰に言ってるのさ。キリトさんこそ、気ぃ抜かないでよね」

「ぬかせ!」

「2人共!新手が来たぞ!」


タケヤさんが言うや否や、煙の向こうから数人の足音が聞こえる。

3人でミズキの部屋の扉を塞ぐように立ちはだかる。

相手は4人。

クタニが1人と斬り結び、タケヤさんにも1人が向かって行った。俺は扉から離れないように構え、1人を迎え撃つ。

狭い廊下に7人が入り乱れて場は混乱するかと思われたが、俺達は連携して扉を死守した。

幼い頃からの仲だ。互いの呼吸は手に取るように解る。

何とか賊を打ち倒した後、ハルマとヨキが合流した。


「キリトさん!そっちは大丈夫か!」

「あぁ。…賊はどうした?」

「今、見回ってきたが、あらかた片付けたと思う」

「火事は?」

「大した事ねぇ。この煙は発煙弾だから、今総出で換気させてる」


煙の量で甚大な被害かと思われたが、実際の所は一般隊員の一部屋が吹き飛んだものの大火にはならず、ケイキさんの指示で直ぐに消し止められていた。

侵入者は計15名にも及んだが、班長達によってその全てを討ち取る。

役所辺りは、1人くらい生かして捕らえ、襲撃の理由を問いただすべきだ等とぬかすかも知れなかったが、理由等とうに知れている。

変に詮議でもされてミズキの存在が役所にまでバレると事だったので、今回は運が良かったかもしれない。

しかし、アギが犯人だとして、賠償をアギに求める事になるのだろうが、その際にミズキの存在が国に知られる可能性もある。

今後の事を考えると多少の頭痛がした。


[キリト目線終わり]


私が目を覚ましたのは翌朝だった。

既に陽が登っていた事に、いつもの癖で飛び起きると腹部に鈍痛を感じて蹲る。

横からキリトの声がした。


「痛むか?」


そこで漸く昨夜の出来事を思い出した。


「…あれ?…俺…どうして?」

「アギに攫われかけたが、何とか撃退できた。腹が痛むのか?」

「…大丈夫…。キリトがずっと?」

「襲撃が一回で終わるとは限らねぇからな」

「…ごめんなさい」

「お前が謝る事じゃねぇ。奴等も暫くは襲って来ねぇだろうから、今日はゆっくりしろ」


私は首を振ってキリトに向かい合った。


「怪我人は出た?もしかして誰か…」

「大丈夫だ。誰も死んじゃいねぇ。怪我も大した事ねぇからお前は休んでろ」

「怪我人が居るんだね!俺、大丈夫だから行ってくる!」

「あ、おいミズキ!」


私は部屋を飛び出そうとしたが、肩を掴まれ制止させられる。


「俺は大丈夫だよ!」

「わかった!わかったが…その格好で行くのはマズい…着替えろ」


言われて自身の姿を見下ろすと、寝間着は胸が見えそうな程はだけている。

慌てて隠す私に、キリトは視線を反らしたまま、「ったく」と残して部屋を去って行った。

ずっとこんな格好で話していたことに、恥ずかしさで爆発しそうだったが、羞恥心を振り払い手早く身支度を整えた私は、名もない楽器を持って救護室へと急ぐ。

被害はキリトの言う通り軽いものだった。

3人が火傷で2人が切り傷。1人が爆発に巻き込まれた時の打撲と捻挫だった。

1節歌えば怪我はみるみる内に全開していく。

感謝の言葉を受けながら、私は未だに不思議に思う。

確かに唄は人の心を癒やしたりできるものだが、身体の傷を治すとはどういう原理なのだろうか。

とはいえ、私が異世界に出現した事も合わせて、原理なんて物を考えるのが無駄なのだろう。

特有の魔法か何かだと思えばいいのかもしれない。

この時の私は、導きとしての力をごく簡単に考えていたのだが、それが甘い考えだという事を後に知ることになる。

宿所への襲撃から10日余り、トウの住人からの援助もあり、破壊された箇所は真新しく生まれ変わった。

アギの襲撃から、昼夜を問わす交代で2班が警戒を強くする。

狙われているのが自分なのに、1人でのんびりと寝るのが忍びなくて夜食の用意をする日々が続いたある日。

洗濯をしながらの鼻唄も日常となっていた時に、その報は届けられた。

曰く、アギがエンに進行せし!












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