愛の形
私は今日、元彼の葬式に出ている。
不幸な事故だったそうだ。自転車に乗っている最中、急に飛び出して来た子猫を避けて、道路に倒れてしまったらしい。
私は元彼の綺麗になった顔を見て実感する。
ああ、本当に死んでしまったのだ、と。
しかし、いくら彼の顔を見ても、膝から崩れ落ちている親族を見ても、私から涙が出る事は無かった。
私は彼を愛していなかったのか?
いや、そんなはずはない。
私は彼を愛していた筈だ。
私から告白し、了承された時は感極まって泣きもした。
日常を謳歌し、プレゼントも送りあった。
そして、振られた時は、一晩中泣いた…。
泣いて、泣いて、泣いて……
それでも足りずに泣き続けた。
昔はこんなに泣いていたのに、今は死んだ彼を見ても泣く事はない。
そして、泣き噦る彼の現在の彼女を見て理解する。
振られたあの日、私の中で彼は「大切な人」ではなく、「他人」に成り下がった。
そして、私の中で彼は死んでしまった。
だから私は泣いたのだ。
何度も、何度も。
いや、「死んでしまった」のではない。
私が「殺してしまった」のだ。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
あなたを愛していたのに泣けなくてごめんなさい。
あなたを愛していたのに「殺してしまって」ごめんなさい。
あなたを愛していたのに「他人」にしてしまってごめんなさい。
泣くだけが、愛の形じゃない事は分かっている。
それでも私は泣くことが正しいと思っている。
私は彼の前で涙も流さず、ただひたすらに謝ることしか出来なかった。
思いついたので書きました。猟犬です。
このような作品は今後、書く予定はありませんが、短編自体はちょくちょく上げていくつもりなので、見かけたら、覗いてくれれば幸いです。




