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沖の舟 -安東愛季伝-  作者: かんから
家督相続 天文ニニ年(1553) 愛季15歳
8/37

1-7 銭攻め

 10日後、檜山ひやま城へ知らせが舞い込んだ。西の豪族、比内の浅利あさり氏が不審な行動をしていると。もしやこちらに攻め込む気か。田植えの時期が終わるとともに、兵は集まりやすくなる。戦争をするのによい頃合いだ。


 ……勘ぐれば、安東あんどう舜季きよすえが倒れたということが知れたため。それとも偶然の動きか。評定ひょうじょうには父の代わりに愛季が上座についた。



 手腕が試されている。家臣らの目線は愛季ちかすえに集まる。



 浅利氏とは父の時代より争っている。安東は先の戦に敗れ、鷹巣たかのすの地を奪われた。鷹巣は比内と檜山のちょうど中間にあり、狭しい土地に田畑が広がっている。その南には阿仁鉱山があるので、遠回りして産出物を運ばねばならなくなった。さらに鷹巣よりまっすぐ檜山へ攻め込むこともできる。


 家老の百石は前へ進み出る。

「若はどのようにお考えですか。」



「……いきり立つ必要はない。」

落ち着いた口調で愛季は語り始めた。


「浅利にどうして攻め込める余力があろう。昨年のあの辺り一帯は不作だったと聞くが。」


 そういうと、次郎兵衛じろべえへ次の句をうながす。

「はい。浅利領は比内と鷹巣を合わせ5000石ほど。昨年の収穫高はおそらく2000石。米にして5000俵しかとれておりませぬ。浅利はたいそう家士をそろえておりますゆえ、日々で費やす経費もたいそうなもの。周囲の豪族との小競り合いも絶えませぬ。……我ら安東と事を構えるには、7000俵は最低でも取れていなければ。もう少し余裕が必要でしょう。


 百石は少しあきれたような顔をした。そして次郎兵衛に言う。

「清水殿よ……。確かに浅利の浪費癖は耳に入る。だがあいつらは銭がなくても商人から借りて、絶対に勝ち戦にすることによっておぎなってきたやつらだ。金勘定もいいが、起きるときは起きるのだ。」


 浅利の戦い方は、敵領内から金目の物を奪いつくすことを旨とする。



 ここで、愛季はある提案をした。


「では、商人らを味方にしよう。」


 兵らは兵糧がない戦に最初から出ない。その兵糧を買う銭を商人から借りるならば、その商人らが貸さなければいい。家臣らは口々に言う。”そんなことができるのか”と。


「できる。蔵は交易で潤った銭であふれんばかりだ。これまで貯めてばかりで、一向に使ってこなかった。今こそ使うべき時なのだ。」



 百石は最初こそ唖然としたが、愛季のいうことを理解した。先代とは違う真新しい使い方。誰も思いつかない。商人に金を与えて、浅利氏との付き合いをやめてもらう。囲い込んでしまう事によって、果ては浅利氏を窮地に追い込むことも可能だ。

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