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沖の舟 -安東愛季伝-  作者: かんから
家督相続 天文ニニ年(1553) 愛季15歳
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1-4 急報

 船着き場で愛季ちかすえ次郎兵衛じろべえと近太夫の三人が語らっている。日差しも暖かい五月の昼下がり。そんな時に馬に乗った男が、三人めがけ迫ってきた。ドウッドウッと合図し、馬の鼻紐を引く。馬はうなり、その場に止まった。男は下りるなり一目散にこちらへ駆け寄る。次郎兵衛はその男を見知っている。


「鎌田殿ではござらんか。そんなに慌てて、どうなさったのだ。」


 蒼白なその顔は、事態の大きさを物語っていた。

「若、そして清水しみず次郎兵衛殿。どうぞこちらへ……。」


 近くにある林の茂みへと隠れる。……鎌田はできる限り落ち着いた口調で言い始めた。



  ”大殿が倒れました。”



 愛季の父、安東あんどう舜季きよすえ。もう少しで四十路よそじを迎えようとする壮年の男。これまで調子が悪いところなく、すこぶる健康だったと思うが。愛季は顔を曇らせる。急いで檜山の城へ帰らねば。次郎兵衛へ振り向き、彼も愛季へと頷いて見せた。次郎兵衛はまず苦言を発した。


「……わかった。すぐに城へ戻る。だが、お主に言うことがある。」


 次郎兵衛は鎌田の肩を軽くたたく。

「あんな顔で来られては、事を悟られるだろう。重大事ほど、いつもと同じ顔を保て。」


 わけを語ることなく、次郎兵衛は近太夫に別れを告げに行った。近太夫は心配そうに次郎兵衛を見るが、彼は笑みを浮かべて話し出した。

「近太夫殿、こやつが慌てていた訳がわかりましたぞ。なんでも飼い猫を城へ連れて行ったら、大殿の手をそれはまた大きくガブリついたそうです。」


 近太夫は思わず笑ってしまった。

「だからですか。とりなしを求めて、若に助けを求めていらしたので。」


「ああ。困ったものです。」



 そのまま近太夫とは別れを告げ、早馬でその場を去る。

 近太夫も賢い男。勘づいたかどうかまではわからないが、彼も檜山安東に属する人間。むやみに広げるような真似はしないだろうと信じたい。



 米代川の右側を駆け、ひたすら東へと進む。走っているとそのうち目の前に小さな川が分岐する。その小川をつたっていけば、檜山の城へたどり着く。ヒバで山は覆われ、その静まった森の中に御殿ごてんがある。一度は周りを堀で囲ったとは聞くが、時が随分と立ったせいでその斜面に笹や小さなアスナロも生える。檜山の一帯ではヒバの子供をアスナロと呼ぶが、そのように木々が所狭しと生い茂っているせいで、敵にはこちら側の兵が見えない。攻められても隠れたまま攻撃できる、天然の要塞だ。


 愛季は西門で馬を降り、詰める兵に預けた。そのまま小走りで御殿へ向かう。

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