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沖の舟 -安東愛季伝-  作者: かんから
家督相続 天文ニニ年(1553) 愛季15歳
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1-3 船が朽ちる原因

 近太夫こんだゆうは言う。

「へい。ずっと海に漂う船は、朽ちるのがたいそう早うて困っとります。それが川の水に船底をからせるとあら不思議、朽ちるのがだいぶ遅くなります。若はなぜだと思いますか。」


 愛季ちかすえは腕を組み、うんと悩む。……海の方が波が荒いので、船がボロボロになってしまうのでは。


「それも一つの答え。しかし他にもあります。」


 答えはあれを見ればわかるということで、愛季は近太夫らと共に大船を降りた。船着き場を歩き、ちょうど小さな舟を砂浜へ上げようとしているところへ来た。ゴロと呼ばれる丸太を組んだものを下にして、漁師らは舟に縄をひっかけ、掛け声を合わせながら精一杯に陸へ引っ張る。一作業すんだ彼らに愛季は問うた。すると漁師らは答えた。


「へい。これから火をあぶして、舟を乾かすのです。」


 日も高く、さらに火の熱さも加われば、すぐに乾燥できるだろう。漁師らは舟を横に倒し、周りを廃木やクズで囲った。……愛季には、船底のあるものが目につく。無数しがみつくカラスガイなどにまぎれ、白く長い物が船体にかじりついている。漁師の一人が息を吹きかけると、中に入らんと慌てているようにも見えた。


 近太夫は廃木で囲む中に入りこみ、その虫の尻尾をつかんで丁寧に引きずり出した。それを外側にいる愛季へ見せる。よく観察すると透明で小さな貝殻より、その長く白い体が伸びていた。


「これをフナクイムシと申します。こいつが船を喰って、悪さをするのです。」


 ”ムシ”とは言うが、一応は貝である。これを追い出したり殺すために、船を火であぶすのだという。


「しかし陸にあげるのは、このように小さな舟だからできること。大きな船となると多くの人足が必要になります。」


 ならば、どうするか。次郎兵衛じろべえも知らないらしく、愛季と一緒になって悩んだ。その姿を近太夫は面白そうに見つめる。……答えが出そうでなかったので、近太夫に尋ねた。


「実はこのフナクイムシ、川の水に弱いのです。」


 海は塩気が多く、フナクイムシが活発になる。一方で川の水には塩気がなく、フナクイムシは生きていけない。そこで船ごと川へ入ることにより、ムシを追い出すのだ。大きな河口をもつ港に大船がやってくる一つの理由だ。停泊する前にわざと川へ入り、船が朽ちるのを防ぐのだという。


 二人は合点がってんした。次郎兵衛は近太夫の知識の深さを褒める。近太夫は”いやいや”と応じ、”これくらいの話は、海の男であれば誰でも知っている。”ということをいい、謙遜する。加えて昔の話をする。


「だからこそ、昔の十三湊とさみなとは最高だったろうと思います。河口が湖で波なく、フナクイムシも生きずらいでしょうから。」

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