生きている場所
1章
虚無感と
俺の神プレイに酔いしれろ
インターネットゲームの画面を移しながら豪語する一人の男がいた。ネット上での名前は「あのう」と名乗っていた。某配信サイトでゲームの配信をしている。
彼の発する言葉一つ一つに視聴者からのコメントが流れる。人が反応する。それはさながら有名人のようで、アイドルのようで、心地よいものだった。ゲームが始まる前の準備時間に彼は少し尿意を覚え席を立つことを伝え、マイクを切った。
・・・
椅子にもたれ大きく伸びをする。一人暮らしの薄暗い部屋の中、一人の男が椅子から身を起こす。いつしか日は落ち閉められた窓からは冷たい冷気が部屋に忍び込んでいた。季節は移り冬になり、最近いっそう冷え込む日が増えてきていた。そばには食べ散らかしたスナックと夕食に買って来たコンビニ弁当の空箱が転がっている。うつろな目でそれらを眺め、彼はトイレへ向かおうとする。ぶるっと体を震わせ肌寒さを感じた「あのう」は、カーテンを閉めようと窓へ近づきふと外を眺める。明るいネオンが町を照らし、人々が歩いているのが見える。彼は深く深呼吸しカーテンを閉め、そそくさとトイレへと向かった。
薄い窓ガラスに仕切られた世界はあまりにもしっかりと区切られていて、あまりにも無常な柵のようだった。
・・・
ネットは非情である。一時持ち上げられたかと思えば地の底まで叩き落されることもある。匿名性の高いサイトほどその特徴は顕著だ。配信を視聴する人間は配信者の感情を観察し、喜びに嫉妬し怒りに歓喜する。「あのう」もまた視聴者を楽しませようとリアクションを大きくしてみたり、配信を盛り上げようと画策したりする。それが評価されることもあれば、それを逆手に叩かれることもある。あのうはあまりにも純粋すぎて傷つき、涙することもある。その涙に視聴者は歓喜し、コメントという流れは加速する。
これは現実とネットの狭間に揺れ、配信に踊らされる一人の男の物語である。




