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森野塚四丁目恋愛事情  作者: mayuki
城戸聡美の場合
29/308

-9-

最終バスに乗るため、四人は居酒屋を出てぞろぞろとバス停に向かう。

章穂と圭輔が、さっきまで一緒にプレイしていた章穂の大学時代の友人である桜井の話を始めたので、必然的に聡美は隆臣と並んだ。

同級生ということもあり聡美と隆臣はとても仲がよく、高校時代もこうやって二人で仲よく帰ったことをふと思い出す。

「なあ、お前とケイくんが揃ってバド始めるってキョウちゃん知ってんの? 仲良し三人の中で抜け駆けなんてしたらキョウちゃん怒るんじゃない? ・・・あ、荷物持とうか?」

隆臣が聡美の少し前を歩いて少し振り返りながらそう言う。

兄の章穂と同じセリフに聡美は苦笑いした。

「あ、大丈夫、自分で持てるから。 ありがとう。 ・・・で、キョウちゃんね? まだ私がバドミントン再開するとは知らないんだ。 アキくんがまた始めたのは知ってるし、ケイちゃんが行きたがっていたのも知ってるけどね。」

恭子は聡美たちとは違う高校に行き、高校時代は趣味で外部のダンス教室に通い部活には入っていなかったので、同じ高校で圭輔や章穂と一緒にバドミントンができる聡美は恭子からわかりやすく妬かれた。

高校時代のみならず、圭輔とはたまたま大学のサークル時代もサークル同士の交流があったので、交流試合の度に恭子から冗談交じりに皮肉を言われたものだった。

そんな経緯があるからか、バドミントンの話になるとなぜかいつも腰が引けて恭子に後ろめたい気持ちになる自分に嫌気がさす。

「そうか。 ま、別にキョウちゃんの許可を取るもんでもないんだから言う必要もないと言えばないんだけど・・・お前とキョウちゃんの仲だろ? 早めに言っといたら? 時間空くとなんか秘密感漂うから、別の意味で気まずいよ。」

隆臣のセリフに聡美は遠慮なくため息をついた。

「秘密感・・・ね。 キョウちゃん、ケイちゃんのこと好きだから・・・なんか二人でバドやるって言ったら怒られちゃいそうで・・・。」

聡美はそこまで言うと言葉を切った。


最近の隆臣の態度を見ていると、なんとなく隆臣が恭子に対して友達以上の好意を抱いていることにうっすらと気づいていたので、少し無神経なセリフだったか、とヒヤリとしたが、隆臣は笑い飛ばした。

「怒られる、って、なんか、ほんとの姉ちゃんみたいだな!」

「そう? ・・・うん、お姉ちゃんみたいなもんだよね、ずっと一緒にいるもん・・・。 ね、オミを見てたら私もお姉ちゃんかお兄ちゃん欲しかった、って思うよ。 いいお兄ちゃんだよね、アキくんって。 私ならオミみたいなのが弟だったら絶対にもう見捨ててる!」

最近立て続けに鍵を忘れたりお金がなかったりして兄に助けてもらった隆臣の姿を見ていたので、そう呟く。

それと同時に、上手く話題が逸れたな、と小さく安堵のため息をもらしながらしみじみ呟いたら隆臣が聡美にヘッドロックをかけた。

体に染みついた甘い匂いがふわりと漂って、隆臣相手にドキッとした自分にひそかに慌てる。

「なんだよ、うるさいぞ、聡美のくせに!」

「い・・・痛い、痛い! ちょっと、アキくん、お宅の弟が暴力行為を!」

歩きながら二人で大暴れすると、圭輔が苦笑いしながらやってきて隆臣を叩いた。

「こら、隆臣! 路上で何やってんだ、離れろ!」

「やだね! こいつ、生意気なんだもん、聡美のくせに!」

「聡美のくせに、って何よ、隆臣のくせに! ケイちゃん、助けて・・・ちょっ・・・アキくん・・・笑ってないで、ちょっと!」

子供のような言い合いに、章穂は呆れてお腹を抱えて笑っていた。

「隆臣と張り合ってちゃあ、お前も十分バカだぞ、サト!」

「バカって何よ、失礼ね!」

もがいた聡美がやっと隆臣から逃れて乱れた髪を直していると、圭輔がふわりと聡美を抱き寄せた。

バランスを崩して圭輔に抱きつくようになると、ふわりとコロンの香りがしてまたドキッとした。

「・・・終バス、逃すぞ。」

「ヤバい、走らないと間に合わない。 オミ、サトの荷物!」

「わ、あと2分だって! 貸せ、聡美!」

「待って、わ、わ、わ!」

時計をみた圭輔が冷静に呟くと途端に章穂と隆臣が慌て出し、一歩出遅れた聡美は荷物を隆臣にはぎ取られたかと思うと圭輔の手が肩から滑り落ちてきて右手をしっかりとつながれた。

そのまま、章穂を先頭に、隆臣、圭輔と続いて走り出す。

え・・・え・・・ケイちゃんと手つないでるの、私?

状況が呑み込めずに呆けていたら、走りながら圭輔が振り向いた。

「ぼやっとすんな! 走れ、聡美!」

圭輔がニヤッといたずらな笑顔を見せて、ぐいっと手を引いてくれる。

・・・ケイちゃんとこんなしっかりと手をつなぐだなんて、小学校以来かも・・・?

突然の出来事に聡美は一気に酔いが回った気がしたが、おとなしく手を引かれながらバス停へと走って行った。

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