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森野塚四丁目恋愛事情  作者: mayuki
序章
1/308

森野塚四丁目の仲間たち-1-

小高い丘に建つ新興住宅地。

最寄駅からバスで10分、徒歩なら30分。

中でも、オレの住む地域は階段を上がった上にあり、少し孤立した形になっている。

26戸の家が固まっているこのエリアは、森野塚(もりのづか)四丁目のはしっこに位置する。

ここにはオレと歳の近いヤツらが割と住んでいて、まあ、小学校からの付き合いなんででそれなりに仲良くやっている。

よくつるんで飲みに行くのは、オレの親友の一番上の兄、天野亮一あまのりょういちがオーナーを勤めるカフェバー「ソレイユ」。

駅の裏通りにある、いつも適度に混んでいるバーだ。

青を基調にした店内は、差し色に効果的に黄色が使われていてすっきりしているイメージながらも温かみのある雰囲気が特徴だ。

昼は軽食と美味しいコーヒーと紅茶を出し、夜は手ごろな価格でアルコールとフードが楽しめる店として徐々に名前が売れてきた。

このカフェバーが一年ほど前に出来てから、また近所のヤツらとつるみ始めた気がする。

家の最寄駅からすぐのところにある、というロケーションもいい。

終バスを逃してしまった時などは、なんだかソレイユに寄って帰らなければならないような使命感さえ感じるようになってきた。

一人で行くとカウンターに座ることが多いが、一杯やってると幼なじみが誰かしら顔を出す、というのはよくある話。

せっかくだから、ってことで別のヤツを呼びつけたこともある。

働く身となりなかなか接点の少なくなったオレたちにとって、このカフェバーは貴重なたまり場になっている。


オレは、北嶋章穂きたじまあきほ、26歳。

中堅重電メーカーで機械設計をやってる。

彼女の沢夏実さわなつみとは大学三年からの付き合いで、ケンカもしながら、まあ、仲良くやっている。

つきあって5年も経ったので、そろそろ結婚を意識し始めようかな、というところ。

実際、出会いの場となったバドミントンサークル内でもカップルがいくつか結婚し始めたので、順番的にも次はオレたちかな、と思っている。

今も二人で同じ社会人サークルに所属して一緒にバドミントンをしている。

リョウくんのバーには夏実とも行くし、一人でもけっこう飲みに行く。

リョウくんのバーはとにかく居心地がいいんだ。


オレたちもいいお歳になってきたからか、そして、オレに大学から続く彼女がいる安心感からか、最近オレはヤツらの恋バナをよく聞かされる。

それにオレは恋愛ゴトには疎い方だけど、それでもちょこちょこ話を聞かされるからか、ヤツらの恋模様に気がついたりする。

・・・そう、オレらもいいお歳になってきた、ってことなんだ。


「よう、リョウくん! お邪魔します。」

「おう、アキ、お疲れ! ・・・なあ、あっち、円来てるぞ、からまれたくなかったら今日はカウンター座れば? 少々荒れていらっしゃるから、お姉さまは。」

夏実と別れて一杯だけ飲んで帰ろうとソレイユに入ったら青っぽい照明に照らされてリョウくんが笑った。

昼は黄色の目立つ店内だけれど、夜はライトを落として壁のあちこちにブルーのライトを点けるからか、青が目立つ店内になる。

雰囲気ががらりと変わるこの店の店内を、オレはけっこう気に入っている。

チラリといつもの窓際の席を見たら、二歳上の木元円きもとまどかが電話片手に赤ワインを飲んでいる姿がみえた。

・・・マーちゃんは飲むとけっこうからむんだよな・・・。

「・・・うん、こっちのカウンターにする。」

円から一番遠いカウンター席を指した正直なオレのセリフにリョウくんが吹きだすと、奥からリョウくんの彼女の横山陽菜よこやまひなが出てきた。

太陽の「陽」に菜っ葉の「菜」で「ひな」。

太陽を意味するこの「ソレイユ」の店名の由来となった人だ。

「アキくん! いつもの?」

「うん、いつもの。」

陽菜さんが暗がりにもわかる白い歯を見せて笑って大げさにうなずくと、リョウくんの耳元で何かを囁いた。

リョウくんはくすっと笑うと陽菜さんの腰のあたりに軽く手を添えて何かを囁き返す。

二人はとても仲がいい。

陽菜さんはリョウくんに何を言われたのか、少し怒った顔でリョウくんの手をたたくと、上を向いてケラケラとおかしそうに笑った。

「いつもの」マッカランのロックを待ちながら、ぐるりと店内を見回す。

場所の割にうるさい客も滅多に来ない、ほんとうにくつろげる店だ。

夏実にリョウくんの店に寄ったことをメールしておいて、さて、今日もリョウくんと陽菜さんの仲いい姿みながらまったりと時間を過ごすことにするか。

オレはカウンターに肘をついて見つめるともなくじゃれあっているリョウくんと陽菜さんを見つめた。

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