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 本格的な練習は翌日から始まった。喜ばしいことに、補習期間中は午後に授業が入らない。帰りのショートホームルームが終わり、みんながご飯を食べ終えた一時頃。劇の練習が始まった。


「おーい、机後ろに下げてくれー。とりあえず、動きの確認するからなー」


 裕人が声をあげると、みんな一斉に机を運び始めた。そして、出来上がった空間で劇の練習が始まる。劇に出ないひとも、それぞれの準備を始めた。

 僕は後半の白雪姫役だから、ひとまず座れそうな席に座って出番が来るまで待っておくことにした。


「じゃー、とりあえずかの有名な魔女と鏡のシーンからー」

「おーっす」


 魔女役の天馬が威勢のいい返事をする。ちなみに鏡の声は裕人がするらしい。僕は鏡用の段ボールに顔の部分だけくりぬいて、そこから顔を出すことを提案して、クラスの中でも結構支持されたんだけど、劇に出たくはないと言う裕人の反撃にあってあえなく取り下げられてしまった裕人は裕人で、しなくてはいけないことがたくさんあり、劇に出る暇はないのだろう。


 クラスの中は大道具を作ったり、衣装を考えたり、音響でどの音楽を使うのかを選んだり、それぞれの役目を負った人が、それぞれの役目を果たそうと頑張っている。


 一方、劇の方は動きの確認に意外と時間がかかっていた。鈴木さんは、かなり気合を入れて天馬と魔法の鏡の声優を務める裕人に指示を出している。


 その練習風景を見ながら僕は「いい劇が完成しそうだなぁ」と強く思った。こうして、ひとつ筒確認しながら進めていくのだから、少し時間がかかるかもしれないと思ったけど、それは他のクラスよりも少し早く準備を始めた僕たちにとってさした障害ではない。


 そもそも、この学年で一番初めに劇の練習を始めたのはたぶん僕たちのはずだ。そして、こんなに早くから始めたのは、本気で一番。つまり、「最優秀賞」を取りに行くため。

 高校での文化祭で、人生で初めて自分たちだけで劇を作り、こなす。こんな楽しいことをするんだから、賞なんかにとらわれずに、ただ楽しんで、いい演技をして、いい思い出を作れば、たしかにそれだけでいいのかもしれない。だけど、仮にも順位が付くんだったら、やっぱりトップを目指したいと思う。


「おーい、次は夕士だぞー」

「はーい」


 少し疲れた俊に呼ばれて僕は座ってた席を立つ。元々人の前で話したりするのは得意じゃないから、たくさんだめだしもらうだろうけど、それもよし。けど、最後にだけは、絶対に成功させたいな。

 

 

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