5
午前中の授業が終わり、昼休みになった。僕がお弁当を取り出すち、待っていたかのように俊と天馬がやって来て僕の左右に座る。とうぜん、目の前には巧みの顔がある。
「男四人でひとつの席囲むって暑苦しくない? 」
結構切実に。それに、お弁当を広げるスペース的もかなり窮屈だ。
「まあ、食えるならいいだろ」
「そうそう。クーラー涼しいし」
「荷物は俺の机においとけばいいし」
そういう問題じゃないでしょ。何人の机自分たちのものみたいにつかってるのさ。別にいいけど。
ま、どうせ避ける気もないのだろうから、僕はあきらめて弁当を食べ始めた。
「あれ夕士、また自分でつくったのか」
「毎日がんばるね」
「まーね」
天馬と俊が言うように、いま僕が食べているお弁当はで分で作ったものだ。母は仕事で朝忙しいことが多いから、大抵は自分で作らないといけないのだ。一年生の頃はだいぶ手間取っていたけど、最近はだいぶ慣れてきている。
「すみません」
と、食事中に教室に響き渡る声。もちろん裕人だ。
「今日の七時間目、ホームルームなんだけど、そこで役者決めなどの役割分担を決めようと思います。いまからそれについての紙を配るので目を通しておいて下さい」
そう言うと裕人は自分の席に戻った。
昨日何をするのか決めたばかりなのに、もう役割分担にはいるのか。それはちょっと早すぎないか?
まあ、僕にはそんなことを我がクラスにおいて文化祭の権限を握る文化委員様に進言する気はないし、こういう用意は多少無理してでも早め早めに動いておいていた方がいいというお考えなのだろう。
ほれ。と言って、巧が紙を渡してくる。
「まだ原稿が入ってるわけじゃないんだな」
「いくら鈴木さんでも昨日今日で書き上げるのは無理だろ」
「そうだな。で、役割は、『役者』『裏方』か」
そしてさらに、『裏方』役のひとは、いくつかの班に分かれる。それが、衣装班、背景班、工作班、音響班、そして、大本営......。
「いや、大本営ってなんだよ」
「センスねえなぁ~」
「司令部とかにすればいいのに」
「それもいまいちだけどな」
僕ら四人が騒いでるように、クラスでは小さな笑い声がいくつも上がっている。そして、それを見て満足そうにする裕人。隣には鈴木さんとその友達。やはり二人とも笑っていた。