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そして、翌日。帰りはバラバラだけど学校に行くのは三人一緒。っということはなく、僕はひとり学校に向かう。僕が早起きな一方で、俊と天馬は朝に弱いタイプだ。特に俊はかなり厳しい時間帯に登校している。
日差しはすでにきつくなっているけど、朝の風はまだひんやりとしていて気持ちいい。昼になるとこれが熱風にかわる。こうなるともう気持ちよくとも何ともない。ただ単に、「無いよりはましだよね」ってところだ。
学校につくと階段を上がって自分のクラスに行く。僕たち二年七組の教室は三階の書道教室のもう一つ上。この校舎で最上階の四階にある。去年は別の校舎の二階の教室だったから何とも思わなかったけど、四階というのはキツイ。特に、夏は暑い。階段を上るだけで汗が出てくる。でも、これを一日に何度も繰り返さなくちゃいけない先生方はもっと大変だと思う。お疲れ様です。
「おはよう夕士」
「オッスー」
教室に入ると、みんながあいさつしてくれる。僕もあいさつをして自分の席に着いた。一時間目の開始まであと三十分ほどある。机の中に入れていたうちわを取り出して仰ぐ。よし、もう少し涼んだら勉強はじめよう。
束の間、バンドについて考える。あの後、俊がドラム。天馬がベース。そしてなぜか僕がギター兼ボーカルに決まってしまった。なぜ僕がボーカルを務めないといけないのか、二人に聞いてみたけど、さも当然であるかのように「一番歌がうまいからに決まってるじゃん」っと返されてしまった。天馬よりも高い声が出るわけでもなく、俊よりかっこいい声をしてるわけでもないのに。
そんなことよりも、もう一人のギターを探さなくちゃいけないんだった。ギターが僕だけじゃ荷が重いし、ハモリも作りたいのだそうだ。そのギター。つまり、四人目を探さなきゃいけないんだけど。どうすればいんだろ。
「おっす夕士」
「ん。おうはよう巧」
今僕にあいさつしたのは一之瀬巧今僕の前の席になってる奴で、バドミントン部入ってる。中学も違って、今年初めて同じクラスになった。それにしてはかなり仲のいい友達だと思う。とりあえず、
「巧。ギターできる人知らない? 」
「は? 」
軽い気持ちで聞いてみたら、ケンカ売ってんの? って目で見られた。あれ、僕なにか変なこと言ったのかな……。
「夕士、知らないのか? 」
「なにを」
「おれ、ギター得意だってこと」
「え……」
それは申し訳なかった。でもいそんなこと聞く機会あったっけ。
「四月に自己紹介的なのあっただろ? 俺、あそこでギター得意だって言った気がするんだけど」
「ああ……すまん。それたぶん寝てた……」
「おいおい」
巧は呆れ顔でこちらを見てくるが、仕方がないだろう。眠かったんだから。
「それよりさあ、天馬と俊と僕でバンド組むってなったんだけど、巧も一緒にやらない? 」
「おまえ、ほんといきなりだな。まあ、バンドはやってみたかったし、まだ何も決まってないから、前向きに考えとく」
「よろしく頼むよ」
結局その後、授業が始まるまで巧と話す羽目になって、朝の勉強は全然できなかった。けど、これで心配事が一つ減るなら、嬉し話しだ。話しの後半には、少し遅めに来た天馬と、珍しくぎりぎりではなく少し余裕をもって教室に入った俊も話の輪に入り、巧もかなり乗り気なようだった。