表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/14

「で、突然だけどさぁ。なんかいい意見ある人いる? 」


 ――――いや裕人、それは唐突すぎるんじゃないのかな。


 と思って心の中で突っ込みを入れたのだが、意外にもいくらか手が挙がっている。しかもその中の一つは僕の右隣の天馬。

 たぶん、天馬が一番最初に当たるんだろう。で、あ次が篠田さんかな。天馬が手を挙げた時に一番最初に指名されるのは、一年の時から続く恒例行事になっている。それは、こいつが明るくて、面白くて、だめだしされてもへこまない前向きな性格をしてるからだ。ついでに、篠田さんも女子の割にハキハキしてて、いい人だ。


「それじゃあ、手は挙げてないけど夕士。なんかない? 」

「え? 」


 あれ、なんで俺の名前が呼ばれてんだろ……。


「夕士、当てられてるよ? 」


 いや、当てられてるのは知ってるけど……


「なんで僕なのさ裕人」

「いや、いつも天馬ばっかだと面白くないだろ。たまには側近の夕士にも当ててみたくもなるじゃないか」


 クラスが笑いに包まれる。側近っていうのはよくわかんないけど、あまり目立たない僕がよく目立つ俊や天馬といつも一緒にいることを揶揄して裕人が即興で考えたんだと思う。


「いや、側近は違うから。ただの幼馴染で仲いいだけだから」

「ごめんごめん。悪かったよ。それで、案は無い? 」


 そんないきなり聞かれても、全く考えてなかったんだから浮かぶわけないじゃないか。と思った僕の脳裏に、小学生の時に見たある有名劇団のミュージカルが浮かんだ。


「それじゃあ、ミュージカルがいいな。『美女と野獣』とか、『ロミオとジュリエット』とか、女装込みでやったら面白いと思うんだけど。ちなみにヒロインは女装はで俊にやらせます」


 再び教室で笑いが起こる。まあ、咄嗟の思いつきにしては悪くないんじゃないかな。と僕も思う。


「本命の天馬。何か言いたいことは? 」

「そうだな、女装っていうので先越されちゃったんだけど、俺は『白雪姫』がいいと思う」


 今度は笑いじゃなくて、感嘆の声が漏れる。


「『白雪姫』ね。おっけー、じゃあ、次。篠田さん」

「そうね......わたしは」


 予想通り、裕人は篠田さんに振った。こんな風にして、大体十五分間くらいみんなの意見を聞いて、それが出尽くしたころ、裕人は多数決を取ろうと言い出した。


「みんないい意見だったからね。多数決が一番手っ取り早いじゃないか」

「裕人、今日の間に考えといてっていってたよね」

「俺もそう思ってたんだけど、みんな結構考えてくれたからこのまま行っちゃおっかなと。みんな、それでも問題ないよね」


 クラスのみんなも大半が賛成のようだ。まあ、僕もクラスの大意に背く気はない。


「それじゃあ、多数決をとります」


 裕人が案を言って、みんなが手を挙げる。それを何回か繰り返していく。僕のミュージカルの案は結局『ロミオとジュリエット』に決まったんだけど、意外と受けがいいらしく、天馬の『白雪姫』と同じ票数でトップだった。


「夕士の『ロミオとジュリエット』と天馬の『白雪姫』で決勝戦をします。俺が入ると引き分けになるかもしれないから、俺以外の三十九人で多数決します、あ、せっかくだからみんな伏せる?そっちの方が面白いよね」


 みんな、この意見に賛成して顔を下に向ける。さすがは文化委員。面白いことを考える。僕もみんなと同じように机の上に顔を伏せた。


「それっじゃあ、『ロミオとジュリエット』! 」


 威勢のいい裕人の声が教室に響いて、決勝戦が始まったのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ