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担任はホストに違いないと誰もが(男子)思いました。

ガラっ


 チャイム終了と共にドアを開け入って来たその人は、これまたイケメンだった。

クラスの女子たちがきゃあきゃあと声をあげ、一斉に手鏡を取り出し身だしなみチェックを行う。

教壇に立つイケメンは、キラキラしい笑顔で自己紹介を始める。


「初めまして。今日からこのクラスを担当する雨宮あめみや ゆうだ。25歳独身、担当は英語。恋人募集中だが可愛い女生徒の諸君、俺の事で揉めないように!1年間よろしく頼む。」


冗談なのか本気なのかよく分からない台詞をウインクと共に吐いたイケメン担任は、女子たちの心をがっちり掴んだようだ。女子たちの質問攻めに笑顔で対応している。きっちり1人1人に甘い言葉を添えながらその実プライベートな質問はのらりくらりとかわしている。



テンションがうなぎ昇りの女子達とは対照的に、男子生徒たちは呆気にとられた様子でそのやりとりを聞いている。

だれかが、「すげえ・・・質問には一切答えてないけど、相手を満足させるコミュニケーションスキル。先生ホストでもやってたんじゃ・・・」



どこからともなくゴクリと息を呑む音が聞こえ、一騎も担任の様子を半分呆れ半分感心しながら眺めていた。しかし眺めるのにもすぐに飽きてしまい、寝不足も相まってウトウトしてきてしまった。



黄色い女子の声を子守唄に、一騎が船をこぎ始めてから数分後。



「それじゃあ、俺の事はまた後で質問を受けることにして。君たちの自己紹介をしてもらおうか。氏名と出身校、好きな物や好きなタイプなんでもいいぞ。自分を精一杯アピールしてくれ。」



そういうと、雨宮は教壇の上の椅子へと腰を下ろした。



順番はもちろん出席番号順だったが、女子が優先だった。

女子たちは意気込んで自分達をアピールした。それはもう肉食獣が獲物を狙っているかのような雰囲気で猛アピールだ。それは担任の教師にだけではなく、教室中のイケメン男子達に向けて。


そんな女子達の自己紹介はとにかく長かった。

やっと女子全員の自己紹介が終わった時には、もう終了チャイムが鳴る15分前だった。

当然男子の自己紹介などする時間は残っていない。自分たちの過ちに気付いた女子たちは、一様にしまったと後悔を露わにしている。もとより長々と自己紹介をするつもりのない男子達には好都合だったが。



「あー、出雲 滴です。よろしく。」

出席番号順により滴が自己紹介を済ませる。といっても、紹介も何も名乗っただけだが。

それも、夢の世界を漂っている一騎には全く聞こえていなかった。



「次は?あー鳳?」

出席簿を眺めながら一騎の名前を呼ぶ担任教師。

返事が無い事に眉を寄せ、席を立つ。

滴が慌てて一騎の肩を揺するが、一騎は全く起きる気配を見せない。


雨宮は出席簿を片手に一騎の側へと来ると、居眠りをする一騎の頭へと出席簿を下ろした。


鈍い衝撃にハッと意識を取り戻し、自分の側に立つ男へと視線を向けるとホストと見紛う担任教師はにっこりと怒りながら一騎を見下ろしていた。


「おまえ、初めてのホームルームで居眠りするとはいい度胸だな。とりあえずホームルームが終わったら生徒指導室を案内してやろう。鳳 一騎。」


全く嬉しくない申し出に、顔をしかめながら素直に「すみません。」と謝っておく。

さっそく担任に目をつけられてしまったことに大後悔したものの、これから真面目に取り組む事で挽回しようと前向きに考える事にした。



そうして、一騎は自己紹介する事もなくホームルームを終えた。

ちなみに、男子生徒たちは名乗るだけの簡潔な自己紹介であった。



女子たちは暫く落ち込んだ様子だったが、すぐに復活しイケメン男子からの情報収集へと動き出した。

もちろん、竜哉も滴も女子達に囲まれることになった。一騎は担任に言われた事を無視する事も出来ないため、仕方なく職員室まで脚を運ぶことにした。



まったく最初から大失敗だと、大きな溜息が廊下に響いた。


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