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友人その2の第一印象はおバカなわんこでした。

 教室に入り着席するが、最初は出席番号順に席が割り当てられているようだ。

俺はおおとり、竜哉は御堂みどう大分離れてしまった。

別に寂しいと思う程親しいわけではないが、竜哉は少し落胆したように見えた。

自意識過剰だろうか。



特にする事もないため、携帯電話をとりだした。

高校入学を機に両親に買い与えられたものだ。

別に必要性も感じていなかったが、寮に入るに当たり連絡手段として持つように言われた。

金持ちが多く通うため、学校側も特に制限していない。むしろ推奨しているみたいだ。

防犯対策に。


(誘拐とかされたら大変だしな)


他人事のように心の中で思いながら、待ち受けを見て一瞬あっけにとられる。


(なんだよコレww)


携帯は渡されてからずっと充電していたので、一騎は今初めてソレをみたのだが待ち受け画面は姉二人のかわいいプリクラ画像だった。


にっこり笑い楽しそうな2人を見て自然と頬がゆるむ。


だがしかし!


いくらシスコンの一騎でも、2人の姉を携帯の待ち受け画像にしておくのは少し恥ずかしかった。

携帯の画面を操作し、無難なわんこの画像をダウンロードし待ち受けにする。

2人の写真は保護設定し、時々眺める事にしようと心の中で謝罪する。


(愛羅、麗羅ごめん。2人の事で周囲にいじられるのはかなり疲れるから面倒くさいんだ。)


謝罪しているのかいないのかという理由だが、仕方ない。本当の事だからだ。


携帯の操作を確認していると、前にいる人物が振り返る。気配が動いた事に視線を上げると、前の人物が目を見開く。


何をそんなに驚く事があったのだろうかと首を傾げる。


「うわぁ・・なんか平凡・・というか。お前みたいなやつもこの学園に通えるんだ。」


くすくす・・・くすくす・・・



一瞬何を言われたのか理解できなかった。

周囲が静まり返り、その後小さな笑い声が響く。


失礼極まりない台詞を吐いたその男は、どの角度から見てもイケメンだった。

たしかに俺を平凡と言って許される程のイケメンだった。

が、人間としてそれはどうなのか。世間一般の常識としてだめだろう。

特に将来上に立つであろう立場の者が、何も考えずに発言することなど許されないだろう。



「確かに俺は凡人だけど、初対面のあんたに笑われる謂れはないよ。どこのお坊ちゃんだか知らないけどたとえ立場が下の者であっても、礼儀と礼節をわきまえて接せられないのならこの先不安だね。しっかりこの3年間で学ぶといいと思うよ。」


「なっ!!」


反論された事に顔を赤く染め、くやしそうに眉をひそめる。

相手に全く興味を失くした俺は、再度携帯に目を落とした。


「おい!!」


まだ何かを言っているが、自分に言っているのかは名前を呼ばれたわけではないのでわからない。

無視を決め込む。



「おいってば!!」


前の席のイケメンは何をそんなにむきになっているのか、

今度は俺の携帯を取り上げるという暴挙にでた。


「・・・(イラっ)・・・何だよ。」


「・・・・だからっ!!・・その・・・悪かったよ。気分を害するような事を言って。ごめん。」



相手が見るからに肩を落とし、しょんぼりとした様子だったのでなんだかワンコが怒られて尻尾を垂れている様が見えたような気がして少し笑ってしまった。


その瞬間、また同じように目を見開き驚いたかと思うとうっすらと頬を染めじっと俺を見つめてきた。


(・・・・・なぜ?)



「・・笑うと、かわいいんだな。」


へにゃりと笑ったそいつは、照れたような様子で自己紹介をしてきた。


「俺、出雲いずも しずくよろしくな。失礼なこと言ってホント悪かった、許してくれ。

ちょっと話したかっただけなんだ。」


話を聴いていると、どうやら俺と竜哉が教室に入って来た時から話すきっかけを探っていたらしい。

ただ親しげに話す俺達に(知り合ったばかりだが、そう見えたらしい)声が掛けられず、席が別れた今がチャンスだと思いきって声をかけたという。


とりあえず、まずはコミュニケーションの取り方を一から学んだほうがよさそうだ。


「鳳 一騎、よろしく。出雲が嫌な奴じゃないみたいでよかったよ。見下した態度を取り続けるようなら速攻ぶっとばしたね、俺は。」


本音を漏らすと出雲は慌てた様子で「ちょっ!!滴って呼べよな。俺も一騎って呼ぶし!」

と予想と違うポイントで焦っている。


(あ~天然なんだな。ちょっとおバカなんだ。)


そんな天然わんこな滴に生ぬるい視線を送り、「はいはい、わかったよ滴。とりあえず携帯返せ。」

と笑いかけた。


すると、滴はへにゃりと笑い素直に携帯を渡した。

ほわほわとピンクな雰囲気を醸し出す滴とは対照的に、窓際の後ろの方の席からは何かどす黒い気配を感じた。何かと思い後ろを振り返ると、じっと俺を見詰める竜哉と眼が合った。ぞくりと軽い悪寒が走ったが、にっこりとほほ笑む竜哉にこちらも表情を崩す。なんとなく竜哉の機嫌が悪いような気がしたが、気のせいだろうと思い直した。



これから初めてのホームルームだ。


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