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(仮題)番長が幅を利かせる和風異世界に転生したけど前世日本に帰りたい  作者: ぱちぱち


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9/9

第9話 俺は、腹を切らねばならんかな

 九州1区に迫る新興宗教の恐怖! 特派員はその闇に迫る!


 なんて自分の内心でテロップを出しながら博多の街を練り歩き、件の新興宗教についての情報を集めていく。概要はます成さんに聞いたけどこういう事は自分の目で確かめるのが大事なのだ。全く関係のない視点から見えるものもあったりするからね。


 で、街をぶらついただけで大まかに分かった事を並べていくと、だ。


 件の新興宗教は自分たちの事を皇国大神道上皇派と名乗り、本来の皇国大神道の中でも上皇様だけを特に崇拝し敬うという教えを広めている。それだけならまぁ過激な分派かで終わるんだが、こいつらの面倒な所は上皇様に関する部分以外の皇国大神道を二段、三段と下に見て排斥しようとする点だろう。奇跡の担い手は上皇様であって他の。例えば今生帝よりも上皇様が第一だと暗に主張してるのだ。もちろん表立って言ってるわけじゃない。表立って言ったら国家反逆罪適用不可避で博多ごと焼野原になるかもしれないからね。まぁ、そういう尖った主張を繰り返して、同調する人物を絡めとっていく。


 教祖、というより指導者と呼ばれている人物が上手いと思うのはここだ。上皇派の首魁、即越智そくおち 二駒にこまは上皇派の意義は上皇様が下賜された学生ボタンという奇跡の産物をより数多の国民が受け取れるようにしなければいけないと全国民学生ボタンの概念を語り、学生ボタンの適性が無かった人や若い学生にシンパを増やしていった。ちょっと尖った主張の方が若い感性には受け入れやすいのだろう。


 実際に学生ボタン持ちとそうではない国民ではその後の人生設計が大きく変わってくる。学生ボタン持ちはたとえ第一段階までしかボタンを育てられずに卒業したとしても常人の数倍の体力を持ち、兵隊として5年の任期を終えた後はどこに行っても引っ張りだこの人材になるのだ。普通の人とは基礎体力が違うし、寿命だって長くなる分若い期間が長くて物覚えも良い。


 国民全部が学生ボタン持ちになれば間違いなく大和皇国の国力を数倍に引き上げる事が出来るだろう。上皇派に参加する学生はそれを理解できるインテリが多く、州番の妹さんはそれだったという訳だ。


 さて、ここまでが表の話し。街をぶらついて分かった程度の事で、ます成さんからもこのくらいの所までは話を聞くことが出来た。ここから先を知るにはしっかりとした調査が必要になる。ます成さんと話をして幾らかの装備を都合してもらった私は、博多の夜闇に紛れて本格的な調査を開始した。


 そして三日後。



「むぐーっ! むー! むむー!!」

「兄上! これは、これはいかなことでございますか!」



 全身をぱんぱんに膨らませ、亀甲縛りにされた即越智そくおち 二駒にこまくんと、両手両足を縛り上げられた州番の妹さんを並べた後、私は報告のために用意した写真と複数の書類を畳の上に並べた。



「まず、こちらの即越智くんですが中華共産連邦のスパイですね。お爺さんが大陸系と繋がってるみたいで。そこから学生ボタンに適性があった即越智くんにアジテーターの教育を施して大和皇国の中で内乱を起こすのが目的だったみたいです」

「は、あ、おう。はぁ!?」

「それは真か?」

「はい。こちらに上皇派の資金の流れを記載してあります。上皇派は基本的に信者からのお布施を元に運営されていますが記録されているお布施の金額と金庫の中身が一致しません。使い込まれているのではなく、明らかに多すぎる。また定期的に即越智くん名義の銀行口座に一個人のものとは思えない多額の入出金を確認しています。出金先は中華との貿易を担う国際企業のため恐らくは中華側の息がかかった会社を通じて彼に資金を送っているのかと」

「むぐーっ!? むぐむぐっ!」



 ます成さんが返事をしようとして失敗し口をしっちゃかめっちゃかに動かしているのを横目に、州番さんが先を続けろと視線で私を促してくる。



「次に、上皇派の施設内では上皇派のボタン持ち、非ボタン持ち問わず軍事教練が施されていました。これは全ての国民が学生ボタンを持った時、栄えある大和皇国軍人になるためと称してのものですが、銃火器による射撃訓練も含まれた本格的な物です。これらの銃火器の仕入れ先は先の貿易会社ですね。英国産の最新式小銃、大和皇国軍人でも殺傷できる威力のものが数百丁は用意されていました。この一事を持っても国家反逆罪が適用できます」



 ます成さんの顔色が赤くなったり青くなったり白くなったりと忙しい。あと州番の妹さんも顔色が変わったね。言葉だけだとアレなんでちゃんと写真を撮ってきたから疑われる事はないと思うが、まぁこんな事報告されたら顔色が虹色に光り輝いても仕方ないか。



「ちとおかしいな。こいつは兎も角、上皇派のシンパは全て大和皇国の民であるという自負があるばい。それが大和皇国に弓引くとは考えられんぞ」

「そうですね。多分、どれだけ上手く口を回しても上皇派の信徒が大和皇国に弓引くことはないでしょうね」



 その点も含めて、彼は上手くやっていたと思う。上皇派がやっていた事は法律であるとか色々問題があるが、須らく大和皇国のためにというお題目に沿った行動だったからね。上皇派の面々が彼の言葉を信じて熱心に上皇派の教えを広め、軍事教練に汗を流すのも頷けるものである。彼らには確かに正義があったのだから。


 だからこそ即越智くんの真の目的。大和皇国に騒乱を起こすという一点は、上手くいった可能性が高い。なぜならお題目はどうであれ外国製の銃火器を使って軍事教練を受けている数百、数千人規模の兵力がいる時点で大和皇国としてはアウトだ。


 これがバレた段階で即座に大和皇国軍がすっ飛んでくるのは間違いないし、皇国軍の激しい攻撃が九州1区を襲っただろう。そこまでくれば即越智くんは高らかに宣言しただろうね。「これは上皇様の復権を憂う今生帝の策略である! 武器を取れ! 上皇様をお救いし大和皇国に真の秩序を!」とかなんとかさ。


 別に内容はどうでもいいんだ。ただ、信じていた相手に裏切られた、攻撃されたと思った人は信じたいものを信じるようになる。軍事教練を受けた数千単位の兵力は、たとえ勝てないにしろ激しい抵抗を見せるだろう。九州1区は間違いなく深いダメージを受けることになる。数多の有力者たちの子息たちが戦火に消えることになる。学生ボタンを持った有力者の子息というのはその有力者の後継者である場合が高い。言わば、将来の大和皇国を背負うエリートたちだ。それらが一つの学領事消える事になれば、そのダメージは人数以上の。それこそ九州1区どころか九州全部に飛び火してもおかしくないダメージになるだろうね。


 上手いね。実に上手い手だ。ちょっと金を出すだけで大和皇国の一地方を麻痺させることが出来るかもしれない。しかも損耗するのは相手の軍と国民だ。敵対する国家からすると拍手喝采だろうね。そしてそのタイミングで中華の軍が海を渡ってきてもなんも不思議じゃない。対応する九州の軍司令部も麻痺してる可能性が高いし。



「というのが、恐らく想定される最悪のシナリオですね。これは一番悪い事が全部起こった想定なので、恐らくここまで大火事になるのはよっぽど悪運がかみ合わなければ起きないでしょうが」

「起きる可能性はある、か」

「はい」



 私の言葉に、州番さんが重苦しい表情を浮かべながら、分かったと小さく頷いた。


 まぁ、結構大げさな話だけど多分これ、全部上手くいくとは思えないんだよね。州番さんだって気付いてたんだから、九州軍司令部だって怪しい動きをする連中に気付いててもおかしくない。というよりも素人の私でも街をぶらついてある程度の情報を手に入れてたんだ。専門の調査員が居るだろう九州軍司令部がそれらに気付いてないとは思えない。気付けばほとんど番格が居ない素人ばっかの宗教団体なんてザル警備、簡単に突破して私と同じくらいのことはやってのけててもおかしくはないんだ。


 まぁ、流石に教祖さまと州番の妹さんを抱えてくるまではやらなかったかもしれないけど。いや、でもさ。これにも理由があってだね。私も最初はちょっと調査だけして帰って報告するつもりだったんだけど、ちょうど私が潜入したタイミングで即越智くんが妹さんに手を出そうとしてたんだよね。暴力の方じゃなくて性的な意味で。訓練明けで付かれてた妹さんは気付いてなかったかもしれないけど渡された水分補給用の飲み物に混ぜ物がされていて、それを飲んだ妹さんは意識を失ってたからね。


 このまま放置してたらウ=ス異本案件は確実な状況。仕方なく私は妹さんを自分の執務室に連れ込んだ即越智くんに12連打くらいぶち込んで黙らせた後、両手で二人を抱えて州番さんの学校まで連れてきたのだ。


 そこまで口にすると、妹さんの顔色が青から一気に白に代わっていくのが見えた。怖がらせちゃったかな。でも、これはちゃんと知らなければいけないことだ。男は狼なのよ、とは昔の歌で言っていたが、彼女の身体には彼女が思っている以上の価値がある。即越智くんとしては第一プランの内乱が上手くいきそうになかったら彼女を使って黒田家に入り込む、とかも考えてそうだったからね。そういう手合いも居るという事を肌で感じてもらうのは、重要な事だろう。



「そうか」



 静かになった妹さんと、うーうー唸り続ける即越智くんと、覚悟を決めたような表情を浮かべたます成さんに視線を向けた後。州番さんはそう前置きを置いて、私に問いかけてきた。



「俺は、腹を切らねばならんかな」



 覚悟を決めた男の声だった。州番とは責任を取る存在だ。誰よりも強く、誰よりも気高くあらねばならず、そして事起こればその責を一身に背負う事になる。だからこそ、九州の全てを差配する事も時に許されるほどの権力を持つ。


 権力とは責任の裏返しだ。であれば九州をひっくり返しかねない事態の責任を取るのは、州番でなければならない。彼の言葉にます成さんは悲痛な表情を浮かべ、妹さんは小さく悲鳴を上げた。


 いやまぁ、その通りかもしれないんだが。



「必要ないでしょう。この程度で」

「ほう! これほどの大事でか?」

「だってこれ、即越智くんを抑えれば全部なかったことに出来る話なんで。だって全部過程の話しですし、上皇派の施設には外国製の武器なんて『なかった』んですから」

「……そうか、そうなるか」

「はい。まぁ、その分即越智くんには泥を被ってもらいますけどね。新聞社に手を回してもらえれば」

「そうか。そうか……わかった。九州の新聞各社に手を回す。合わせてうちの生徒も手入れに動員する」



 私の言葉に合点がいったのか。州番さんと私は互いに良い笑顔を浮かべてケラケラと笑い合う。むぐむぐ煩かった即越智くんも私たちの朗らかな雰囲気に絆されたのか顔色を青くして大人しくなった。明日の朝刊にはデカデカと『深夜のご乱交! 上皇派指導者の夜の指導!』という文字と共に第一面どアップの写真で有名人になってもらう予定だから、今は大人しく体を休めて欲しい。顔がハレてると写真写りが悪くなるからね。


 まぁ、未遂とはいえたくさんの命を己の都合で左右しようとしてたんだ。自分の人生が他人の都合で左右されても文句は言えないよね?




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