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(仮題)番長が幅を利かせる和風異世界に転生したけど前世日本に帰りたい  作者: ぱちぱち


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第2話 俺ァいつでも姐さんに番を譲るつもりですぜ

「姐さん、ご無沙汰しております」

「おっすマサシくん。久しぶりだね」



 旅行鞄を担いで汽車から降りると、友人が出迎えてくれた。勝手に舎弟を名乗る男、マサシくんだ。


 東都の郊外に位置する関東11区。前世の記憶だと一応都内扱いの多摩区域に私の自宅は存在する。関東には30区ほどの学領があり、その中でもかなり田舎と言える地域で、今生の私が生まれ育った町でもある。


 学領には基本的に学生がメインの居住区だが、もちろん学生だけで街が維持できるわけがない。インフラ担当の公務員、それに購買商店を運営する大人しか居ないのだが、うちの場合はお父さんが警察官だから一家で学領に住んでいるのだ。学領のトップは番長だけど、その番長の下で学領の行政や司法を担っているのはお父さんみたいな公務員の方々なんだよね。


 まぁトップの意向が強いのは間違いないから、銅田魔くんみたいな腕っぷししかないタイプの番長がトップの学領は必要な予算がつけられなくて行政が滞ったりする。そういう予算配分は番長の特権だからね。銅田魔くん施政下の東海3区は10年連続で行政への予算が減額されてたみたいで道路の補修も大変だったみたいだね。


 その点私が居る関東11区の地区番長は良い。年齢は18と若いが腕っぷしも強くて頭もキレる。この頭ってのは銅田魔くんみたいにバトル脳って意味じゃない。必要な部分に必要な予算を分配し、学領をどう発展させていくかを考えることが出来るって意味合いの頭の良さだ。


 本来、学領統治制度で番長に期待されてる役割はこれなんよね。番長にまで成り上がった学徒兵は士官候補生になり将来的には高級士官になる事を望まれている。高級士官になれば数百、数千、あるいは数万の人間を差配する事になるし、どこぞの基地司令なんかになったらその地域の名士で、政治家みたいな動き方をしなければいけなかったりする。このバランス感覚を番長時代に培えたものが軍でも上に行けるんだろうし、番長に地域を統治させるという制度はこの感覚を培ってほしいから作られたものだろう。あんまり上手くいってるようには見えないけど。


 そう考えると、うちの地区番長はそのまま卒業して軍学校に進学しても卒なく熟せそうだね。彼が先代を叩きのめして卒業させてくれたおかげで関東でもかなり下の方だったうちの地区も随分と風通しが良くなったし、地区番長の格が高くなればその分その番長の治める地区の評価も上がる。評価が上がれば人が増えるし購買商店の品ぞろえも良くなる。お陰で去年には駅前の購買商店にテレビジョンが入荷したしね。それを見たせいで前世の記憶を取り戻して三日三晩もだえ苦しむことになったけどまぁ、それは私個人の事情だから仕方ないにしても、だ。


 前世の記憶というこの世界の人間とはまた違う判断基準を持つ私から見ても非常に上手くやってるように見えるうちの地区番長だが、ただ一つだけ私にとっては残念な部分がある。やたらと自己評価が低く、私に地区番長を譲りたがる点だ。


 ねぇ、マサシくん。いやさ、関東11区番長、佐々木マサシくん。



「番長とは最強の称号ですんで。俺ァいつでも姐さんに番を譲るつもりですぜ」

「いらない、いらない。責任とかそういうのいらないから」

「はぁ……まぁ、無理を言う気はございやせんが」



 私の返答にマサシくんは気落ちしたように目を伏せる。3歳年上の彼は私が中等学校に入った時、初めて対漢タイマン勝負で戦った相手であり、その頃はまだ前世の記憶を取り戻していなかった私は真っ向勝負で彼に勝った。その件が尾を引いて、未だにこの地区で一番強いのは私だと誰はばかることなく主張するようになっちゃったのだ。


 いやね、あの頃の私は若くてさ。前世の記憶が思い出せないっていう常にデジャヴに襲われてるみたいな状況でずっとイライラしてたんだよね。確かマサシくんと喧嘩した時もどっちかというと私が悪かったと思う。でも喧嘩で勝った方が偉いから私はお咎めなしで当時中等学校で偉そうにしてた学生ボタン持ち10人を面が気に食わないって理由で闇討ちした件は無かったことになった。とはいえ警察官であるお父さんには後でしこたま怒られたけどね。


 まぁ、それもこれも済んだ話。それに地区番に上がるには各学校の番長に上がる必要があり、私は自分が通ってる学校の番長って訳ではない。そのため仮にこの場で下剋上勝負で勝ったとしても基本的に関東11地区の各学校の番長から地区番が選出されることになるため、マサシくんの一存で番長が変わるって事は出来ないんだ。


 まぁいきなりそれまで番長やったこともない奴を学領の長にするわけにはいかないからね。



「いえ、塵芥女子の番とはもう話がついております。あいつは俺の女なんで、番を引く時には嫁にするつもりです」

「そこまで覚悟を決めんでもええんやない? モラトリアムもっと楽しもうよ???」



 いや、まぁスケ番は基本的に番長引退するときは進学かお嫁入りの2択だけどさ。うちの学校の番長である宮本さんもマサシくんも18歳なんだからもうちょっと気楽に番長生活送っても良いんでないかな? 人生の墓場っても言われるんだからもっと遊びなよ。


 あ、でもこの世界遊びってのがあんまりないんだよな。ゲームどころかボウリングすら東都にしかないし。娯楽がないから結局イチャイチャするか喧嘩するかしかなくてその分人口増加に繋がってるらしいけどね。大和皇国は小さな島国なのに人口2億人越えてるもん。


 そうなると早くに結婚してもらう方が幸せなのか……? い、いや。それ進めるとなし崩しに番長にさせられそうな予感がする。ううむ、悩みどころだ。宮本さんは嫌いじゃないから幸せになってほしいんだけどねぇ。


 あ、そういえば。



「忘れてたけど今回のお勤めは無事終了したから。報酬は約束通りって事だけど?」

「ええ、こっちに配給券は届いておりやす。お勤めご苦労様でした」

「ありがと。ところで新しい仕事は入ってきてる?」

「いえ、今のところ諍いが起こりそうな場所の噂は入ってきておりやせん」



 地元に帰った影響かすっかりオフモードになっちゃってたせいで忘れていたけど、報告が終わるまでは仕事中だ。マサシくんには私の傭兵業の窓口になってもらっている。というよりは関東11区の番長として他所に戦力を貸し出してるって感じかな。私は関東11区所属の番格として戦力を欲しがってる他所の地域に有償で貸し出されてるわけだ。今回は番長との直接対決……うん、直接対決だね。もあったからそこそこ良い稼ぎになってるんじゃないかな。


 稼ぎと言ってもお金が貰えるとかそういうのじゃない。言ってみれば関東11区が他所の地区に番格を貸し出してるわけだからその対価はお金とかではなくもっと大きなもの。例えば軍の払い下げ品と交換できる配給券なんかを融通してもらう感じになる。取り分としては半々で、この割合は私の方から頼んだものだ。


 というのもマサシくん、最初は私に取り分全部渡そうとしてきたんだよね。自分は名前を貸してるだけだって。まぁ実働はほとんど私がやってるのは間違いないけど、それじゃあ健全な協力関係とは言えなくなってしまう。それにマサシくんは自分だけ良い思いをしようとするタイプの番長でもないし余裕があれば地区に還元してくれるって信頼もある。


 本当はマサシくん9で私が1って感じにしたかったんだけどね。マサシくんそれは絶対にダメだって聞かないから、じゃあせめて半々の割合に落ち着いたのだ。私としては裏番長ボタンを探すために全国各地に飛べる傭兵業が便利なだけで、報酬はそれほど重要じゃないんだけどね。


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