捕食者《ヴォルグ》
読んでいただきありがとうございます。
第7話では、
主人公ヴォルグにとって初めてとなる
**明確な「ライバル」**が登場します。
同じ名持ち、同じトーナメントを目指す存在。
考え方も戦い方も違うからこそ、
何度もぶつかる因縁になる予定です。
ここから物語は、
「個の生存」から「競争」へと移っていきます。
それでは、第7話をお楽しみください。
名を得てから、世界の反応は露骨に変わった。
森を進むだけで、
弱い個体は逃げ、
中途半端な個体は距離を測り、
強い個体だけが――こちらを見定めてくる。
(狙われる、ってこういうことか)
空気が張りつめる。
そのときだった。
「……なるほど」
低い声。
正面の木の幹に、何かが立っていた。
人型。
だが、完全な人ではない。
細身の体躯。
黒い外殻のような装甲。
背中には、刃のように湾曲した骨。
一目でわかる。
――強い。
脳内に、警告が走る。
個体名:レクス
種族:刃殻種(中位個体)
「名を得たばかりの捕食体か」
レクスは、俺を見下ろしながら嗤った。
「匂いでわかる。
最近、やけに“喰った”な?」
(こいつ……)
威圧が、効かない。
いや、正確には――相殺されている。
「用件は?」
短く、問い返す。
レクスは肩をすくめた。
「簡単だ。
俺は――」
骨刃が、ギィ、と鳴る。
「名持ちを狩ってる」
殺気が、形になる。
「トーナメント前に、
邪魔な芽は潰す主義でな」
――来る。
俺は体を低く構え、核を沈める。
形状操作、即応。
次の瞬間。
消えた。
(速い!)
横から衝撃。
体が削られる。
「っ……!」
防御力がなければ、
今ので致命傷だった。
「反応は悪くない」
レクスの声が、背後から聞こえる。
「だが――」
骨刃が、突き出される。
俺は即座に体を分裂させ、刃を受け流す。
地面に突き刺さった瞬間を逃さず、絡みつく。
「――捕まえた」
一瞬、互いの動きが止まる。
視線が、ぶつかった。
「……いい目だ」
レクスが、笑う。
「俺と同じだ」
魔力が、爆ぜる。
俺の拘束が、強引に引き剥がされた。
「今は、ここまでにしてやる」
距離を取りながら、レクスは告げる。
「ヴォルグ。
その名、覚えたぞ」
「次は――
トーナメントで会おう」
刃殻種の体が、木々の間に溶けて消えた。
残された森に、静寂が戻る。
「……チッ」
勝てなかった。
だが、負けてもいない。
(同じ名持ち……同じ捕食者系統)
直感が告げている。
――あいつは、必ずまた現れる。
「いいライバルだ」
そう思ってしまった自分に、少し笑った。
王になる道に、
敵がいない方がおかしい。
ヴォルグは、再び前を向く。
次に刃を交えるときは――
喰う側であるために。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
ライバル枠として
レクスを登場させました。
・主人公と同系統だが完成度が高い
・スピード特化
・先行者ポジション
という立ち位置のキャラクターです。
この二体は、
トーナメント本戦でも何度か交錯する予定です。
次回からは
いよいよトーナメント予選が本格的に動き出します。
感想・評価・ブックマークをいただけると、
とても励みになります。
それでは、また次話でお会いしましょう。




