洞窟の外は弱者に厳しい
読んでいただきありがとうございます。
第5話では、
主人公が洞窟という安全圏を抜け、
外の世界の厳しさと自分の立ち位置を知る回になります。
洞窟での「最強」は、
世界ではまったく通用しません。
ここからは
成長・進化・取捨選択を重ねて、
トーナメント出場を現実的な目標としていく流れになります。
それでは、第5話をお楽しみください。
洞窟の出口は、思っていたよりも眩しかった。
「……明るっ」
外光が、直接視界に流れ込んでくる。
今まで薄暗い岩壁しか見ていなかったせいか、ただそれだけで別世界に来た気分だった。
外に出て、まず感じたのは――広さだ。
洞窟の周囲は、鬱蒼とした森に囲まれている。
木々は高く、地面には魔力を帯びた苔や植物が生い茂っていた。
(……なるほど)
俺は、はっきり理解した。
洞窟は、安全地帯だった。
少なくとも、この外と比べれば。
「気配が……多い」
洞窟内とは桁が違う。
視界に入らなくても、強い存在がそこら中にいるのがわかる。
――今の俺でも、即死級が普通にいる。
そのとき、草むらが揺れた。
現れたのは、狼型モンスター。
牙は長く、体格も洞窟のネズミとは比べ物にならない。
「……戦うか?」
一瞬迷って、やめた。
勝てなくはない。
だが、余裕もない。
(今は、場所が悪い)
俺は体を低く保ち、静かに後退する。
幸い、狼は縄張り意識が強いだけで、深追いはしてこなかった。
距離を取ってから、俺は一息つく。
「……俺、まだ雑魚だな」
洞窟最強。
それは事実だ。
だが、それは――あの洞窟の中だけ。
世界は、そんな称号を簡単に踏み潰してくる。
そのとき、背後から声がした。
「賢明だな」
振り返ると、岩の上に人型モンスターが立っていた。
第4話で会った、あの角のある個体だ。
「外に出たばかりで、無闇に喧嘩を売ると死ぬ」
淡々とした口調。
だが、忠告なのは伝わってくる。
「洞窟支配個体を倒したと聞いた。
進化前にしては、上出来だ」
進化前?
(……あ、まだ次に進化してないのか)
俺は、自分の体を見下ろす。
確かに、エネルギーは溜まっている感覚がある。
「トーナメントに興味はあるか?」
唐突に、そう聞かれた。
「……ある」
即答だった。
「なら、覚えておけ」
人型モンスターは、森の奥を指差す。
「まずは正式な個体名を得ろ。
次に、ランク進化を一段階終わらせろ」
「それが、出場資格の最低条件だ」
最低、という言葉が重い。
「今のままじゃ、予選で消える」
そう言い残して、そいつは森の中へ消えた。
一人残されて、俺は考える。
個体名。
ランク進化。
洞窟で満足していたら、
トーナメント以前に、ここで終わる。
「……目標は見えたな」
まずは、この森で生き残る。
喰える相手を選び、確実に進化する。
そして――
名を得る。
「最弱で始まったんだ」
今さら、遠回りを嫌がる理由はない。
俺は、森の奥へと進み出した。
次の戦場は、
洞窟よりも広く、
洞窟よりも危険で、
そして――王へと繋がっている。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
今回は
・外の世界の危険度
・主人公の現在地
・トーナメントへの最低条件
を整理する回でした。
次回からは
名前を得るための戦いや、
より強力なモンスターとの衝突が始まります。
少しずつ、
「最弱モンスター」という肩書きが
重荷になっていく予定です。
感想・評価・ブックマークなどいただけると、
とても励みになります。
それでは、次話でまたお会いしましょう。




