沈黙の決着
読んでいただきありがとうございます。
第22話は、
決勝戦の決着を描いた回です。
派手な演出や逆転はありません。
勝者と敗者が、
ただ静かに確定する――
そんな終わり方になっています。
ここまで積み重ねてきた二体の道が、
この瞬間、はっきりと結果として現れました。
それでは、第22話をお楽しみください。
音が、消えた。
衝突も、爆発も、咆哮もない。
決勝戦場には、ただ二体だけが存在していた。
立っている者。
倒れている者。
それだけで、
結果は十分すぎるほど明確だった。
俺――ヴォルグは、地面に伏していた。
(……動かないな)
正確には、
動かせない。
体はもう、限界を越えている。
再構成は止まり、
核はかろうじて形を保っているだけだった。
視界の先に、
刃殻種・レクスが立っている。
姿勢は崩れていない。
刃は、真っ直ぐ前を向いたまま。
「……終わりだ」
レクスの声は、低く、静かだった。
宣言でも、嘲りでもない。
ただの事実確認。
俺は、否定できなかった。
(……ああ)
ここまで来て、
ようやく理解する。
――届かなかった。
技でも、力でも、
覚悟でもない。
積み上げの差だ。
喰って、喰って、
壊れながら進んだ俺と。
削ぎ落とし、
壊さず進んだレクス。
どちらが正しいかじゃない。
この瞬間、
どちらが“立っているか”。
それだけが、王を決める。
上空で、
魔法陣が静かに回転する。
《――決勝戦、終了》
その声は、
驚くほど淡々としていた。
《勝者――刃殻種・レクス》
歓声は、遅れてやってきた。
だが、
俺の耳にはほとんど届かない。
(……負けたんだな)
悔しさは、なかった。
あるのは、
奇妙な納得感だけだった。
「……強かったよ」
俺は、絞り出すように言った。
レクスは、少しだけ目を伏せる。
「お前もだ」
短い言葉。
だが、そこに嘘はなかった。
彼は、王座へ向かう。
俺は、ここで終わる。
――はずだった。
だが。
地面に伏したまま、
俺は気づいてしまった。
(……まだだ)
核の奥で、
何かが静かに動いている。
それは、
戦闘の昂りでも、
勝利への渇望でもない。
(……負けたから、か)
初めてだ。
完全に、
“負け”を受け入れたのは。
喰えなかった。
届かなかった。
それでも、生きている。
(……なるほど)
この世界は、
敗者にも、
まだ役割を残しているらしい。
「……ヴォルグ?」
レクスが、
わずかに違和感を覚えた声で呼ぶ。
俺は、答えない。
まだ、言葉にする段階じゃない。
ただ一つ、確かなことがある。
この沈黙は、
終わりの沈黙じゃない。
これは――
次へ進む前の、
世界そのものが息を止めている時間だ。
王は、決まった。
だが。
捕食者は、
まだ終わっていない。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
決勝の結果は、
レクスの勝利、ヴォルグの敗北です。
しかしこれは、
物語の終わりではありません。
・喰えなかったという事実
・完全な敗北を受け入れたこと
・それでも生き残ったこと
この三つが重なったことで、
ヴォルグの中では
すでに“次の段階”が動き始めています。
また、
王となったレクスにも、
勝ったがゆえの変化が忍び寄っています。
次回は
敗北の直後に起こる進化と覚醒、
物語がさらに一段上へ進む回になります。
ここまで読み進めてくださった方、
本当にありがとうございます。
次話も、ぜひお付き合いください。




