予選第二試合
読んでいただきありがとうございます。
第11話は、
トーナメントの厳しさが一段階上がる回です。
単純な力比べではなく、
相性・搦め手・消耗といった要素が
露骨に牙を剥き始めます。
捕食型であるヴォルグにとって、
決して楽な戦いではありません。
それでは、第11話をお楽しみください。
闘技場の空気が、前回とは明らかに違っていた。
歓声はある。
だが、浮ついたものじゃない。
――選別が始まった。
第一試合を突破した個体だけが、
この場に残っている。
「……視線が重い」
俺――ヴォルグは、観客席を一瞥する。
嘲笑は減った。
代わりにあるのは、観察と警戒。
(“粘体だから雑魚”は、もう通用しないか)
上空に、表示が浮かぶ。
第二予選
ヴォルグ vs 影縫い(シャドウ・バインド)
相手が、現れた。
黒い外套のような体。
輪郭が曖昧で、光を吸い込むように歪んでいる。
(……いやなタイプだ)
直感が告げていた。
これは、相性が悪い。
鐘が鳴る。
次の瞬間。
相手が――消えた。
「っ!?」
闘技場の影が、一斉に蠢く。
床。
壁。
俺自身の影。
「……影そのものか!」
理解した瞬間、
足元の影が跳ね上がり、俺の体を縫い止めた。
《スキル:影縛り》
「チィッ……!」
動きが、鈍る。
四腕戦鬼のような力押しとは真逆。
拘束・拘束・拘束。
(捕食しにくい……!)
影縫いが、距離を保ったまま迫ってくる。
《スキル:影刃》
闇が刃となり、俺の体を切り裂く。
HPが、削られる。
《やばいぞ粘体!》
《相性最悪だ!》
観客の声が、現実になりつつあった。
(……正面はダメだ)
俺は、思考を切り替える。
影は、光があってこそ存在する。
「なら――」
俺は、体を極限まで薄く広げた。
床一面に、広がる。
「な……?」
影縫いが、一瞬だけ動きを止めた。
次の瞬間。
俺は、闘技場の壁際へ一気に移動する。
巨大な壁が、影を遮る。
影縛りが、弱まった。
「――捕まえた」
影の濃度が落ちた一瞬。
俺は、核を前面に押し出し、
影縫いの本体へ突っ込む。
《捕食判定――成功条件、低確率》
「足りない……!」
影が、抵抗する。
体が、削られる。
(それでも……)
俺は、逃げない。
捕食型が、この舞台で生き残る方法は一つ。
「喰い切る……!」
核を押し込み、
魔力を全力で流し込む。
《捕食成功》
《特殊能力を吸収》
影縫いの体が、霧のように崩れた。
闘技場が、静まる。
勝者:ヴォルグ
膝から崩れそうになるのを、必死でこらえる。
(……ギリギリだ)
観客席が、どよめく。
《また喰った……》
《捕食型、危険すぎる》
《消耗してるぞ》
その通りだ。
余裕は、もうない。
だが――
闘技場の上段。
刃殻種・レクスが、
静かにこちらを見ていた。
視線が、交錯する。
(……次は、もっと上だ)
トーナメントは、甘くない。
だが、確実に。
最弱から始まった捕食者は、
ここに居場所を作り始めている。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
今回は
・相性の悪い相手
・長期戦による消耗
・勝てば勝つほど厳しくなる現実
を意識して描きました。
ヴォルグは勝利しましたが、
代償として確実に削られています。
一方で、
周囲の評価は
「侮れない存在」から
**「危険な個体」**へと変わり始めました。
次回は
予選の終盤、
さらに苛烈な戦いが待っています。
感想・評価・ブックマークなどいただけると、
とても励みになります。
それでは、次話でまたお会いしましょう。




