レクスの初戦
読んでいただきありがとうございます。
今回は本編とは少し視点を変えて、
ライバル・レクスの初戦を描いています。
主人公ヴォルグとは違う
・戦い方
・価値観
・強さの方向性
を意識して書きました。
同じトーナメントに立つ者として、
二体の差や共通点を感じてもらえたら嬉しいです。
それでは、本編をお楽しみください。
歓声が、ひときわ大きくなった。
次の試合に呼ばれた名に、
観客が反応している。
《次の試合》
レクス vs 灼牙獣
闘技場に現れたのは、
全身を炎のような赤い毛で覆われた獣型モンスターだった。
口からは熱気。
地面を踏みしめるたび、火花が散る。
《当たりだな》
《灼牙獣は中位でも上澄みだ》
《あの刃殻種、死ぬぞ》
だが。
レクスは、動じない。
無言のまま、闘技場に降り立つ。
細身の体に反して、魔力は鋭く研ぎ澄まされている。
鐘が鳴った。
次の瞬間。
レクスが消えた。
「――グァッ!?」
灼牙獣の悲鳴が、遅れて響く。
背後。
レクスはすでに、
相手の首元に立っていた。
骨刃が、閃く。
一閃。
炎毛が、宙を舞う。
「な……」
灼牙獣が振り向こうとした、その瞬間。
二閃、三閃。
刃は、急所だけを正確に切り裂く。
脚。
喉。
魔核。
動きが、完全に止まった。
《は……?》
《速すぎる》
《今、何が起きた?》
レクスは、静かに距離を取る。
次の瞬間。
灼牙獣の体が、崩れ落ちた。
《勝者:レクス》
《戦闘時間:七秒》
闘技場が、ざわつく。
《七秒!?》
《中位個体だぞ!?》
《殺し切りだ……》
レクスは、観客に一切興味を示さない。
ただ、
観客席の一角を――見た。
そこにいるのは、
捕食体。
「……生き残ったな」
小さく、呟く。
「だが、俺は“喰う”つもりはない」
骨刃を鳴らし、踵を返す。
「――潰す」
それだけ言い残して、
レクスは闘技場を後にした。
観客の中で、
誰かが呟く。
《捕食型と殲滅型……》
《王になるのは、どっちだ?》
答えは、まだ出ない。
だが一つだけ、確かなことがある。
この二体が、同じ王座を目指している
――それだけで、
トーナメントはすでに“面白くなりすぎていた”。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
レクスの初戦は、
**「捕食しない強さ」**を見せる回でした。
・速さ
・確実性
・一切の無駄のなさ
ヴォルグとは正反対の戦闘スタイルですが、
どちらも「王を目指すに足る力」を持っています。
今後、
捕食型 vs 殲滅型
という思想の違いが、
戦いの中でより鮮明になっていく予定です。
次回は再びヴォルグ視点に戻り、
トーナメントの戦いが続いていきます。
感想・評価・ブックマークなどいただけると、
とても励みになります。
それでは、次話でまたお会いしましょう。




