けんか
海月はバカだった。
気づけば、海月さんと知り合って10年。
海月さんはもうすぐデビューする。
つまり、前世の私がもうすぐ海月さんを知る。
恋は盲目で、海月さんは手塚の本性を知らない。というか見えていない。だが私は分かっている。手塚は、すきあらば海月さんを否定する。高校に上がったばかりのときなんて
「うっわ可愛い子いっぱいいるなあ。海月、お前マジで頑張れよ。もっと可愛くならないと浮気しちゃうゾ?」
なんて言ってた。
安心しろ前世の私。必ず別れさせて、海月さんを生かしてみせる。あなたが悲しみに暮れて自ら命を絶つこともない。
海月さんが死ななければ、前世の私が命を絶たなければ、今の私は居ないはず。だから、海月さんを救えば、私が転生して、海月さんと知り合った事実も消えるのだろうか。しかし私が海月さんと知り合わなければ、海月さんは死ぬ。海月さんが死んだから私は転生して………
そんなのどうでもいい。
海月さんが生きていてくれたらそれでいい。
「海月、話があるの。」
「どうしたのよ?深刻な顔して」
「手塚くんと……別れてくれないかな」
「へ?なんでよ?」
「手塚くんは、いつもあなたのことを否定してくるじゃない。あなたの悲しそうな顔見たくないのよ……」
「それは、私にまだまだ至らないところがあるから……」
「ないよ」
「え?ないって…」
「あなたは完璧な女の子だよ。世界で一番かわいくて優しい女の子だよ。あなたを大事にしてくれて、あなたに見合う人は必ずいるから……」
「そんなこと言わないでよ……私は冬弥じゃなきゃだめなのよ」
「このままあいつと一緒にいたら、あなたが傷つくよ」
「大丈夫だよ。私がもっと頑張れば……」
「……死ぬよ」
「へ?」
「このままあいつと付き合い続けたら、あなた、死ぬよ。」
「なんで……」
「信じてくれるとは思えないけど、私、転生者なの。私は前世、あなたの大ファンだったけど、あなたが恋人の精神攻撃で自殺したニュースで後を追ったの。想いは天に通じたようで、運良くあなたの友達として転生できたから、この世界線ではあなたを生かしたいと思ったの。だから……」
「あなたもそうなんだ」
「私もって?」
「私は、転生者じゃなくて2週目だけどね。」
「それって……」
「私ね、死んだあとまた同じ人生を繰り返したの。」
「だったら!」
「前世は、私の努力が足らず、彼に見合う女になれなかった。だから今世は」
「本気で言ってるの!?」
「本気よ。だって好きなんだもん」
神の話が早くて助かった。海月さんが2周目なら論理に矛盾は生じない。
この海月さんとあの海月さんは、私と前世の私は、違う人間だから。
「あなたがどれだけ努力したって彼はあなたを大事にしてくれないよ。だって、あなたはこんなに……」
「安心して。もう色々んだから。必ず彼に見合う女になるから。それまで見守っててね」
やだよそんなの
海月さんの曲が世間にリリースされた。
相変わらず綺麗な声だ。
これじゃあまた同じことの繰り返しだ。
とりあえず今は受験に集中しよう。
次がクライマックス




