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第5話:羅鬼天動地 ― 剣聖、戦場を断つ




リュークの足元が、風を裂いた。


踏み込みと同時に、五連撃が放たれる。


その剣筋は、まるで雷鳴――いや、雷そのものだった。




ゴリアテは四本の剣を交互に操る。


特大剣グラディウスで受け、曲剣ヴァルムで流し、刺剣スピカで突き、刀カゲロウで斬る。




その剣舞は、まるで四人の剣士が同時に戦っているかのよう。


「速い……! いや、これはもう“見えない”領域だな」




ゴリアテの目が、リュークの剣を追えなくなる。


だが、彼は剣鬼。




見えなくとも、感じる。


空気の震え、魔力の流れ、殺気の軌道――それらを読み、剣を合わせる。




リュークの羅鬼丸が、ゴリアテの《グラディウス》を砕く。


「一本目、折れたか……!」




ゴリアテは即座に《ヴァルム》を逆手に持ち替え、リュークの腹部を狙う。




だが、リュークはそれを読んでいた。


「――甘い」




羅鬼丸が、曲剣を弾き飛ばす。


空中で回転しながら、地面に突き刺さる。




「二本目、終了」


ゴリアテは舌打ちしながら《スピカ》を抜く。




細身の刺剣――速度と貫通力に特化した一撃。


「ならば、これで心臓を貫く!」




リュークは微笑む。


「俺の心臓は、もう何度も死んでるんだよ」




《スピカ》が放たれる瞬間、リュークは剣を逆手に持ち替え、


“剣を鞘に戻すような動き”で、刺剣の軌道を逸らす。




――ガキィィィン!




《スピカ》が真っ二つに折れる。


「三本目、終了」




ゴリアテは最後の一本、《カゲロウ》を抜いた。


その刀は、彼の魂そのもの。




師から受け継ぎ、血で磨き、戦場で育てた“本命”。




「さて、いよいよだな、先輩。さすがは師匠の弟子だ」




リュークが笑う。


「いや、こっちは若返ってるからな。チートってやつだ」




二人は同時に声を上げた。


「――いざ尋常に、勝負!」




剣が交差する。


空間が震え、風が止まり、音が消える。




一合。


二合。


三合。




剣と剣がぶつかるたび、地面が裂け、空が軋む。




リュークの剣速は、もはや“時間の外”にある。




ゴリアテは、刀カゲロウに全魔力を込め、


“未来予測”の魔眼を発動する。




「見える……! 次の一手が……!」




だが――


リュークは“予測の外”から斬った。




「――終わりだ」


羅鬼丸が《カゲロウ》を根元から折る。




ゴリアテは膝をつき、項垂れる。




そして、静かに首を差し出した。




「私も、剣士のはしくれ。この日が来ることは、とうの昔に覚悟していた。お前が相手でよかった。――さらばだ、好敵手よ」




リュークが剣を構えながら、静かに言った。




「ああ、そうだな。だがな――すぐに会えるんだよ、これが」




「……え?」




――スパァン!




リュークの剣が閃き、ゴリアテの首が落ちる。




アイの声が響く。


『ゴリアテ、収納します』




光が収束し、ゴリアテの身体がマジックBOXへと吸い込まれていく。






リュークは剣を天高く掲げた。






その刃は、戦場の空気を切り裂き、すべての敵意を飲み込む。






「――羅鬼天動地」






剣が地面に突き刺さる。




次の瞬間――


地面が割れ、黄金の光が爆裂する。




空間が震え、魔力が奔流となって敵陣を飲み込む。




チカノート東部部隊――全滅。






アイが冷静に告げる。


『東部部隊、全員消滅。収納完了しました』




リュークは剣を収め、空を見上げた。


「……さて、俺は十分楽しんだ。次は――」






風が吹いた。


戦場の血の匂いを、遠くへ運んでいった。

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