第4話:剣聖の記憶 ― 四剣の巨影
剣神、構え合う
リュークが剣を抜いた瞬間、空気が変わった。
その刃は静かに、だが確実に空間を裂く気配を纏っていた。
対するゴリアテは、身長4メートルの巨体をゆっくりと起こす。
四本の腕がそれぞれの剣を握る――
・右上:特大剣グラディウス・ブレイク
・右下:曲剣ヴァルム・スラッシュ
・左上:刀カゲロウ
・左下:刺剣エスパーダ・ピアス
その構えは、まるで剣の神話そのものだった。
「来い、リューク・リアント。四剣流、全てを受けてみよ!」
リュークは剣を肩に担ぎ、笑った。
「受ける気はない。斬るだけだ」
ゴリアテが動いた。
四本の剣が同時に異なる軌道で襲いかかる。
特大剣が地面をえぐり、曲剣が空を裂き、刀が風を切り、刺剣が空間を突く。
リュークは一歩踏み込み、剣を閃かせる。
「《鬼神流・四式・連閃》!」
剣が四重の軌道を描き、すべての攻撃を受け流す。
火花が舞い、空間が軋む。
ゴリアテが笑う。
「受けただけで終わると思うなよ!」
四剣が再び襲いかかる。
だが、リュークは跳躍し、空中で剣を回転させる。
「《鬼神流・五式・空斬》!」
空間が裂け、ゴリアテの肩に一太刀が入る。
血が舞う。
だが、ゴリアテは怯まない。
特大剣を振り上げ、地面に叩きつける。
――ズゴォォォン!!
衝撃波が走り、リュークが吹き飛ばされる。
だが、空中で体勢を立て直し、着地。
二人の剣聖が、再び構え合う。
一瞬の静寂。
風が止まり、剣の音だけが残る。
リュークが呟く。
「……この剣筋……以前、どこかで」
ゴリアテも目を細める。
「うむ……同じことを考えていた。この“間合い”と“流れ”――かつて、我が師が使っていた技だ」
リュークが剣を下げる。
「……まさか、ザルヴァの弟子か?」
ゴリアテが頷く。
「《剣鬼・ザルヴァ》――我が師だ」
リュークの瞳が揺れる。
「俺も……何十年も前に、ひょんな事からザルヴァに剣の指南を受けた事があってな。なるほどな……」
ゴリアテが剣を構え直す。
「ならば、ここで終わらせよう。師を知る者同士――剣で語れ」
リュークが笑う。
「語る気はない。“叫ぶ”だけだ」
ゴリアテの四本の腕が、四種の剣を同時に振るう。
特大剣が地を裂き、曲剣が風を切り、刀が空を舞い、刺剣が間合いを突く。
リュークはそのすべてを受け流しながら、言葉を投げた。
「ザルヴァは……死んだのか?」
ゴリアテが一太刀を放ちながら答える。
「師はまだ健在だわ!」
リュークの瞳が揺れる。
「そうか……それは、うれしい知らせだな!」
剣が再び交差する。
リュークが笑いながら言う。
「おれの方が先輩じゃないか?」
ゴリアテが眉を上げる。
「師の指導は、20年前だ……」
リュークは剣を回しながら、軽く跳躍する。
「俺は60年以上前!先輩と呼べよ、ゴリアテ!」
ゴリアテが笑った。
「くくくく……では、胸を借りるぞ、先輩」
二人は笑いながら、再び斬り合う。
だが、その剣には冗談ではない“本気”が宿っていた。
剣士同士の会話は、斬撃の中で交わされる。
それは言葉ではなく、技で語るもの。
リュークの《鬼神流》が空間を裂き、ゴリアテの《魔剣流》が世界を揺らす。
互いに一歩も引かず、だが互いに笑っていた。
それは、剣神同士にしか許されない“遊び”であり――
敬意の証だった。